鼻に抜ける香りの豊かさにうっとり。『閒茶』(根津)
民家然とした店で出迎えてくれるのは着物姿の渡邉有理(ゆうり)さん。駐在した香港で魅せられた中国茶の茶房を2017年、開店した。約10種の茶葉は、雲珠(台湾高山烏龍の冬茶)、静心(岩茶)など。「なじみがなくてもわかりやすいように、自分で名付けたんです」。おかげで味のイメージが付きやすい。焙烙(ほうろく)で香りを立たせたお茶を、教えられた通りに淹れれば、味わいふくよか。ドライマンゴーや、蒸し羊羹などをお茶請けに、いつまでも煎を重ねたくなる。
『閒茶』店舗詳細
新発想をプラスしたメニューが人気のカフェ『sweet olive 金木犀茶店』(西荻窪)
2019年に西荻窪にオープンした『sweet olive 金木犀茶店(きんもくせいさてん)』は、中国出身の夫婦が営む中国茶カフェ。店主の李海純(リ・カイジュン)さんが幼い頃から親しんできた福建省のお茶と、甘さを最大限控えたスイーツを提供している。福建省はウーロン茶の故郷として知られ、ほかにも鉄観音茶やジャスミン茶などの有名なお茶の名産地でもある。この店では、李さんのお父さんの親友が営む茶荘から、それら名産となる品種の茶葉を中心に仕入れている。
店名に冠された“金木犀”を使ったメニューも、この店の定番だ。李さんのかけがえのない思い出のワンシーンに刻まれているという金木犀は、李さんに故郷を思い起こさせる大切なもの。また実際、中国では金木犀がお茶やお菓子などにも使われている。李さんは、そういった背景を見事に融合させ、オリジナルメニューに金木犀を度々使用している。
『sweet olive 金木犀茶店』店舗詳細
希少な武夷岩茶のみを扱う中国茶喫茶の先駆け。『岩茶房』(目黒)
中目黒の閑静な住宅街に店を構える『岩茶房(がんちゃぼう)』は、中国・福建省の武夷山市で生産される武夷岩茶(ぶいがんちゃ)のみを扱う中国茶喫茶。武夷山の険しい谷間の岩肌で養分を吸収して育った木から収穫された武夷岩茶(以下、岩茶)は生産量が少なく、現地でも希少なお茶として知られている。店主の佐野典代(さのふみよ)さんは、日本で中国茶を飲める店がまだ珍しかった1988年に、中国大陸を代表する最高級烏龍茶である岩茶を日本に初めて導入し、全国に広めた第一人者でもある。
この店では、25種類以上の岩茶を扱っているが、これは本物の岩茶を扱う喫茶店としては日本一を誇る品ぞろえだという。佐野さんは「岩茶を飲んでいると、排せつ機能が活発になったり、体がぽかぽかしてきたり、その日のお客様の体調によっても感じ方が変わるのよ」と話す。味や香りがよいだけでなく、健康への好影響も期待できるのだ。
『岩茶房』店舗詳細
池袋で20年以上続く中国茶喫茶。『梅舎茶館』(池袋)
南池袋公園のすぐそばに佇む雑居ビルの2階で営業を行う『梅舎茶館(メイシャチャカン)』。1999年のオープン以来、店主のヨーダさん(愛称)はこの場所で、中国大陸と台湾で作られたお茶を提供している。扱っているお茶は、中国大陸原産の青茶と緑茶、台湾原産の烏龍茶、そして季節のブレンド茶。
中でも、定番の一つとして提供しているのが単叢(たんそう)である。単叢とは、広東省東部にある鳳凰山(ほうおうさん)周辺で育った茶の木から作られるお茶の総称。花やフルーツのような芳醇な香りが特徴で、16種類の香りのグループ(型)に分けられるという。この店では、その年ごとの美味しい茶葉を10種類ほどそろえている。迷ったときは「お客さんの顔色や雰囲気からおすすめのお茶を選ぶこともできます」と、ヨーダさん。
『梅舎茶館』店舗詳細
中国茶ビギナーも利用しやすいセレクト。『甘露』(早稲田)
早稲田大学からほど近く、早稲田通りを一本入った場所に『甘露』はある。この店は、日本人夫婦と中国人夫婦が共同で経営する中国茶カフェだ。2018年のオープン以来、中国大陸と台湾で作られたお茶をバラエティ豊かに取りそろえ、中国で一般的なおやつとともに提供している。
扱うお茶の種類は、烏龍茶や緑茶、工芸茶、薬膳茶などバランスよくそろえた25種ほど。季節によって入れ替わる品種もあるというが、四川省から浙江省、そして台湾まで幅広い産地のお茶が並んでいる。中国茶ビギナーも利用しやすいよう配慮されたお茶のセレクトと幅広い価格設定が特徴だ。おやつにもこだわり、店主の向井直也さんが中国に赴いて取材した現地のおやつ・軽食メニューを、奥様が本場のレシピを参考に作り上げている。そのラインナップは、ずらり40種近くにも上る。
『甘露』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり(teamまめ)、柿崎真英 撮影=高野尚人、柿崎真英