yum-yum kade ▶︎ スリランカ
野菜たっぷり油少なめ。混ぜてさらに旨し!
日替わりカレープレート1200円に、+300円で1品追加したもの。
インド南部に浮かぶ島国で魚介が豊富。米を主食に野菜の収穫量も高く、乳製品よりココナッツを多用。ミルク、ファイン(果肉を削ったもの)、オイルなどで用いる。古積由美子さんが供するのは、スリランカの滋味深い家庭料理が中心。現地家庭の厨房を訪ねたり、ホームステイして見識を深めてきた。主たるハーブはフレッシュを、スパイスやオイルは極力スリランカ産を用いるため、料理の香り高いことといったら! 油はごく少なく、野菜はたっぷり。「手で混ぜて食べるのが基本のため、汁気のあるカレーとドライな料理の取り合わせとバランスに気を配ります」という。混ぜてどんどん味が変わる定食は、満足度は高くも食後感はいとも軽やか。
【チキンカレー】南部の家庭で習得。サラサラでスープのよう。焙煎したチリパウダーが香る。
【なすのモージュ】素揚げしたナスにココナッツビネガーとスパイスを和えたもの。暑い国で腐りにくい工夫がされている。【ピーマンのテルダーラ】粗挽き唐辛子入りピーマンの炒め物。ココナッツオイル使用。
【パリップ】挽き割りレンズ豆の煮物。作り方がさまざまで今回は混合スパイス「トゥナパハ」を使用。ココナッツミルクで煮ることが多い。
【パパダン】ウラド豆が主原料。揚げて、米に混ぜたり酒のつまみにも。
【ビーツのサラダ】皮ごとゆでたビーツをスライスし、塩とレモンで調味。【ポルサンボーラ】タマネギ、粗挽き唐辛子、ココナッツファインを潰し、レモン汁で味を整える。アクセントの和え物。
現地流の食べ方
個別に味わった後、手前の空いた部分で各料理を少しずつ混ぜ、最後は全種混然一体に!
【現地の一品】全脂粉乳を溶くスリランカ式ミルク紅茶500円。
料理教室も主宰する古積さん。2019年5月開店。
『yum-yum kade』店舗詳細
住所:東京都文京区向丘1-9-18/営業時間:11:30~17:00(夜は6名以上の要予約で営業)/定休日:月/アクセス:地下鉄三田線白山駅から徒歩3分
OLD NEPAL TOKYO ▶︎ ネパール
こんなにも繊細! 初めての「国民食」
ダルバートの2種盛り1650円。
ネパールは、60余りの民族が暮らす多民族国家。それゆえ「ネパール料理とは」を端的に表すのは難しいが、唯一全国で食べられている料理こそ「ダルバート」だ。味噌汁的な「ダール」とご飯「バート」が揃った「一汁三菜」で、内容は民族や階級により千差万別である。そのダルバートに魅入られ、ネパールに人生を捧げる料理人が本田遼さん。大阪でダルバート専門店、スパイス販売&カレー店を開き、よりレストランスタイルに特化すべく、今年7月、東京へ進出し、この店を開いた。1年のうち数箇月をネパールで過ごすこと約10年。店名に「TOKYO」がつくのは、ネパール出店を見込んでいるから。豪徳寺の新店の延長線上にネパールがある。
【チキンカレー】現地でポピュラーなカレー。カレーは2種盛りがMAX。【ダンドウルック】乳酸発酵し乾燥させた青菜カレー。現地ではあまりに家庭的で店で出ないほど。軽い酸味と程よい歯ごたえ。
【ダール】豆のスープで他国ならおかずになるが、味噌汁的な必須料理。
【バート】白ご飯。ダルバートはどれだけご飯を食べさせるかが肝、みたいなところもある。
【タルカリ】スパイスで味付けしたおかず。おもに野菜のことを指す。【サーグ】青菜炒め。この日は小松菜を使用。総じてスパイスは控えめ。
【アチャール】スパイスを使った漬物。この日は、右よりきゅうりと人参、キャベツ、大根、トマト。定食全体のアクセントになる
【サラダ】自家製チャットマサラを振りかけたシンプルなスタイル。
現地流の食べ方
熱々のうちにダールを一口。次に中央のご飯にかけて。さらに副菜を混ぜて食べ進めよう。
【現地の一品】ネパール山椒を漬けたスパイスジン、ネパール産ダークラム各660円。
本田さんは、ネパール料理の書籍2冊を出版したばかり。
『OLD NEPAL TOKYO』店舗詳細
住所:東京都世田谷区豪徳寺1-42-11/営業時間:11:30~14:30LO・18:00~21:00LO/定休日:月・火のランチ/アクセス:小田急線豪徳寺駅・東急世田谷線山下駅から徒歩2分
サッパドゥ レディ ▶︎ 南インド
攻めてるのに食べやすい、バランスの妙
カレー 2種1100円。毎日3種のカレーを用意。
南インドはパラリとした米が主食で、カレーはさらさら。スパイスをしっかり利かせ、ココナッツや魚介も用いる。店では、定番のマデュライチキンカレーをはじめ、南部の料理を提供することが多いが、「限定はしていません」と、山崎恵子さんに気負いはない。というのも、山崎さんは南インド料理専門店『ダクシン』『エリックサウス』を経て独立。ご主人はマデュライ出身の元料理人。里帰りも共にするとあれば、ごく自然なことなのである。自宅ではスパイスカレーは“日常食”。「シンプルなレシピでも、夫が創るとまるで違う味になるんです」と、奥深いスパイス使いを探求する日々。ご飯もバスマティライスが常で、そもそも「うちに日本米はないんです」。
【マデュライチキンカレー】インド最南部の東側に位置する都市流。スパイスを多用したリッチなカレー。
【ケララのミーンモイリー】南インド式ココナッツフィッシュカレー。この日はカジキ使用。
【パパドゥ】豆の粉を揚げた煎餅で、パリパリ軽い食感。小さく砕いてご飯やカレーに混ぜて。【キャベツのポリヤル】炒め物のことで、ココナッツや豆と共に炒めることが多い。
【ダイコンのウールガイ】「ウールガイ」(タミル語)、「アチャール」(ヒンディ語)=漬物。辛味、塩気、酸味のあるアクセント。
現地流の食べ方
カレー&ご飯を味わったら、副菜や漬物と混ぜて。食べ終えたらバナナの葉は丸めてポイ。
【現地の一品】チャイ300円。(冷)400円もあり。
2020年5月に店を開いた、山崎さん。店は現地の食堂をイメージ。カウンター 6席のみ。
『サッパドゥ レディ』店舗詳細
住所:東京都練馬区立野町10-37/営業時間:11:30~15:30LO(売り切れ次第終了)/定休日:火・水(祝の場合は営業)/アクセス:JR中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩17分
プージャー ▶︎ 北東インド
魚介が豊富でマスタードを多用
ランチセット1200円にカレー 300円を追加。
現・西ベンガル州は、およそガンジス川の下流にあるデルタ一帯に位置。淡水魚を中心とした魚介が豊富で米が主食。マスタードをスパイスとしてもオイルとしも多用するのが特徴である。店の扉に「ナンはありません」と紙が貼られているのは、もはやおなじみの光景だ。2005年の開店時はインド料理も出していたが、6年後、長潟裕朗さんはベンガル人の妻・ションチータさんと共に自身が感動したベンガル料理に振り切るように。「最初は商売になりませんでしたが、やっとマニアが気づきだしました」。他国のカレーには一切興味ないと語る長潟さんが目指すのは、ベンガル人が食べてもおいしいと思う味。ディナーならさらに深淵なる味に出合える。
【エビのトマトスパイシーカレー 】魚介のカレーにトマトを合わせたオーソドックスなカレー。酸味と甘みが融合。【チキンのココナッツカレー】コク豊かなマイルドなカレーで、銘柄鶏「美桜鶏」を使用。
【キャベツとジャガイモの炒め煮】代表的副菜のスパイス炒め。辛味の少ない穏やかな味わい。【ムシュルダール】レンズ豆のカレー。ベンガル特有のスパイス、カロジレ入り。
【バスモティライス】「バスマティライス」とも呼ばれる、香り高い長粒米。【サラダ】タマネギを中心に、塩のみで味を整えたシンプルなもの。
現地流の食べ方
種類の異なるカレーは混ぜない。豆→野菜→魚→肉の順に一種類ずつ食べ進んでいこう。
【現地の一品】ニシン科の「魚の女王」イリシュのマスタードカレー 2000円。
ベンガル最大の祭りで祀られる女神の壁掛け。
『プージャー』店舗詳細
住所:東京都荒川区町屋3-2-1 ライオンズプラザ町屋B1/営業時間:12:00~14:00LO・17:00~20:00LO/定休日:水(祝の場合は営業、翌木休)/アクセス:地下鉄千代田線町屋駅から徒歩7分
取材・文=沼由美子 撮影=本野克佳
『散歩の達人』2020年9月号より