パン家のどん助
祖父の思いと3 代目のセンスが融合
「どん助」とは店主・齊藤建太郎さんの愛猫。その白とグレーのマーブル模様をイメージしたのがずばり、ネコの手ゴマあんぱんだ。頬張ると、生地に練り込まれたゴマペーストが香り、北海道産あんこの甘みと一体化。これが焼き上がる朝8時ごろを狙ったようにやって来て、「大好きなの」とまとめ買いする常連客も。ここは元々、祖父がパン屋をしていた場所で、一度閉業したが、2001年に大人になった齊藤さんが店名を新たに再開。王道の味も大事にしつつ、ハンバーグやカレーなど具材を工夫したりと、3代目ならではの新味も追求する。
ミサキベーカリー
目当ては具材も手作りの総菜パン
開店直後からパンがぎっしり並び、店内は活気に満ちている。家族に朝食の買い出しを頼まれたのか、トレイに何個も山積みにする人が少なくない。総菜パンや菓子パンのバリエーションが多く、なかでも総菜パンは具材まで手作り。人気のコロッケパンは、ジャガイモを潰すところから自分たちで行い自家製のパン粉をまとわせたコロッケを挟む。パンの表面はこんがりキツネ色で歯触りは軽く、内側はふわっ。コロッケはサクッ、ジャガイモがほくほく。異なる食感のハーモニーとじわじわ広がる素材の甘みが、目覚めきれていない脳を起こしてくれる。
Cawaii Bread&Coffee
食べる人を思い、素材を厳選する
編集プロダクションのカワイイファクトリーが「近所に毎日通えるパン屋がない、ないなら作ってしまおう」と2014年にスタート。実際、待ち望む人は多かったようで、出勤前のオフィスワーカーやビジネスホテルの宿泊客が早い時間から足を運ぶ。売り場と工房は一体型ゆえ、製造風景をのぞくのも楽しみ。国産小麦や自家培養発酵種、オーガニック食材を選び、食べる人をいたわってくれるのがうれしい。ふわっとしたベーグルは具材となじみ、サンドイッチに◎。総菜系の他、時季によってフレーバーが変わる自家製ジャムサンドもおすすめ。
碑文谷ベーカリー
朝5時にオープンする頼れる老舗
「おはようございます!」と元気な声。売り場を担うお母さんは常連客とツーカーで、「いつもの」をスッと差し出す。昭和17年(1942)の創業以来、佐藤さん一家が一丸となって営み、学校給食などの業務用パンも製造する地域密着型。昔ながらの味の中にアイデアが光り、カレーパンだけでも特製、辛口、チキンのトマトカレーなどバラエティ豊富だ。なかでも厚みのある特製カレーパンは自家製パン粉でカラッと揚げられ、噛み締めるともっちり。煮詰めてペースト状にしたカレーに刻んだゆで卵まで入り、腹持ちがいいので昼まで頑張れそう。
取材・文=信藤舞子 撮影=鈴木奈保子
『散歩の達人』2020年8月号より