益子秋の陶器市
春秋あわせて約60万人! 大にぎわいのイベント
1966年から続く、春と秋の年2回開催される益子最大のイベント。全国から多くの陶芸ファンが足を運びにぎわいをみせる。約50店舗のほか約500のテントが立ち、皿などの日用品から伝統的な益子焼、美術品までさまざまな器が並ぶ。よい作品から売れるので、人気作家の作品を狙うなら早い者勝ち。
●城内坂・道祖土地区を中心に各所で。 (問)0285-70-1120(益子町観光協会)
陶庫
モダンな作品が並ぶ大谷石蔵のギャラリー
個性的かつ現代的で、質の高い器が充実したギャラリー。益子とその周辺地域で活動する個人の陶芸作家と、益子の土と伝統の釉薬(ゆうやく)を使ったオリジナルブランド「道祖土和田窯」の作品を扱う。元々は肥料商で、かつて米を貯蔵した大谷石蔵を改装した店内は和モダンな雰囲気。落ち着いた空間で器を選べる。
もえぎ本店
緑のなかで作品を鑑賞しティーブレイクを
工房をイメージした『Space flap』、吹き抜けが特徴的な『MOREギャラリー』の2棟からなり、作家本人とその背景に共鳴した作品を紹介。
あげあげはにわKid's
小さなはにわで、大きな癒やしを
益子の土を使って丁寧に焼きあげた、さまざまなポーズが楽しい手づくりのはにわ。「tsuchi no megumi」の屋号で活動する作家の鈴木恵深(めぐみ)さんが2018年10月から制作を始めた作品で、『道の駅ましこ』に置かれたガチャガチャで買える。毎週土曜13時に200個補充するが、翌日には売り切れることが多いとか。1個400円。
道の駅ましこ
田園地帯に佇む、益子の情報発信拠点
クルマの場合立ち寄り必須。レストランや地元産品のショップのほか、「ましこのコンシェルジュ」では観光案内やレンタサイクル受け付け、移住・定住相談と幅広くサポート。作家棚で気に入った作品を見つけたら、工房や店の案内もしてくれる。「山と土」をモチーフにした大屋根の建物も特徴的。
川尻製陶所
薪窯でしか出せない色の、自然環境にやさしい器
益子の土だけを使い、薪の窯で焼かれた器は、やさしい丸みを持ったホッとする形のものが多い。薪は廃材100%なので自然環境にもやさしい。ここで焼いた塩とスプーンがセットの「塩つぼ」3300円は『道の駅ましこ』で買える。登り窯を改造したゲストハウスは現在改装中。再開が待たれる。
添谷書店
益子焼を究めるには、まず書籍から
明治34年(1901)創業、益子の歴史とともに歩んできた、町なかの老舗書店。「つくるひと・みるひとに役立てれば」と、焼き物に関する書籍や図録を豊富に揃えている。筆や和紙、陶の文具、益子のポストカード、子供向けのオモチャなども。通りに面した『addギャラリー』には陶器作品も展示。
日下田藍染工房
伝統的な草木染の手法を守り伝えて200年
創業した寛政年間(1789~1800)からの染場で藍を染める工房。藍染めに関わりの深い木綿の伝統も守るため、種から育てた綿を紡いで手織りする作業にも取り組む。明治中頃まで庶民の衣類の8割に用いられた藍染めには、丈夫で色褪せせず虫除け効果も。そんな藍染の木綿やコースターをみやげに。
ハナメガネ商会
「ヲトメゴコロ」をくすぐる個性派古書店
「ヲトメゴコロ」なテイストでレトロに飾った店内に並ぶ女性実用書や絵本、かわいいレトロ雑貨やコケシにほのぼの。奥の間は月替わりのギャラリースペース。
ましこ世間遺産
「世界」でなく 世間」遺産を知って益子ツウに
生活にとけ込んだ身近な存在で、地域で愛され将来にわたって守り伝え育成していきたい風土・風景・風習・食文化などを認定登録、魅力を発信して町を活性化しようというプロジェクト。2年前に始まり、現在認定されているのは46件。2020年度までに55件認定登録することが目標という。観光客にあまり知られていない、地域の隠れた史跡や風習を知るよい取り組みだ。
西明寺
益子氏ゆかりの「笑い閻魔」に会える古刹
天平9年(737)行基菩薩の草創とされ、宇都宮氏や益子氏に庇護された。閻魔堂のユニークな「笑い閻魔」を描いた御朱印が人気の坂東巡礼第20番札所としても知られる。ここに城を構えた益子氏の祖の一人で「土佐日記」で知られる紀貫之が本堂奥に祀られている。
城跡めぐり
まちなかと山あいに築かれた益子氏の城跡
征夷大将軍だった紀古佐美の後裔、紀貞頼が常陸国信太(霞ケ浦南岸)の郡司となり、その子孫が築いて本拠を構えたのが西明寺城。益子氏を名乗って長く宇都宮氏の重臣だったが、天正17年(1589)主家に背いて滅亡した。後に本城となった益子古城の跡には『益子陶芸美術館 陶芸メッセ・益子』がある。戦国時代には益子古城を平時の居城、西明寺城を詰の城にしていたらしい。
●見学自由。益子3021(益子古城)/益子高館山(西明寺城跡)
益子の低山ハイキング
秋になれば落ち葉の絨毯でフカフカ!
雨巻山は大川戸から足尾山、雨巻山、三登谷山をめぐる3~4時間の周回コースが人気。端正な姿の芳賀富士は麓の安善寺から標高差80mとやや物足りない。茂木駅から芳賀富士を経て七井駅まで約14kmの散歩を勧めたい。2座とも「栃木百名山」「ましこ世間遺産」選定・認定で、よく手入れされ歩きやすい。
●栃木県益子町上大羽1236先(雨巻山)/大平(芳賀富士)
綱神社&地蔵院
荘厳な雰囲気のなかで堪能する、中世の文化財群
山あいの上大羽地区は、名族宇都宮氏三代当主朝綱(1122~1204)隠居の地。累代墓所に三十三代が眠る。綱神社と地蔵院は宇都宮氏の菩提寺が起源といわれ、綱神社と大倉神社の本殿、地蔵院本堂の3棟は室町建築で国の重要文化財(旧国宝)。綱神社では例年11月、太々神楽の奉納が行われる。
●境内自由。栃木県益子町上大羽943 (問)0285-72-3101(益子町生涯学習課)
真岡鐵道
のんびりとSLが走る益子への鉄路
「SLもおか」で有名な、茨城県の下館駅から栃木県の茂木駅に至る鉄道。益子駅近くに架かる土木遺産認定の小貝川橋梁は我が国最古級の「ポニーワーレントラス」で、幹線から移設されて大正2年(1913)の開通時から使用。イギリス積みの煉瓦橋脚は増水対策で嵩上げされている。
●「SLもおか」は土日祝を中心に運行
ましこ悠和館
上皇陛下ゆかりの入母屋造の建物
上皇陛下が皇太子時代、奥日光へ学童疎開した際に滞在された「旧南間ホテル別館」の建物。「終戦の詔書」の玉音放送を聞かれた「御座所」と、平和について学べる「平和のギャラリー」が今年6月から一般公開されている。2019年度中には館内で宿泊できるようになる予定。
取材・文・撮影=飯田則夫
『散歩の達人』2019年11月号より