混ぜるたびに変転!

カレーは全3種で定番のMANOSチキンカレー、月替りキーマ、そして季節ものや変わり種が週替わりでイン。お好みで1種がけ、2種がけ、3種がけから選べ、2種以上を混ぜながら食べると魔法みたいに味が変化する。辛味、旨味、甘み、酸味など多方向から味覚を刺激。こちらの想像の斜め上を行く発想で、

「いろんな色を出しまくっていたら、自分が何色かわからなくなりました!」

と店主の遠藤僚さん。

南インドのミールスなど混ぜて食べる文化は東京にも浸透しつつあるが、「大阪スパイスカレーが流行る前から関西にはカレーを混ぜて食べる習慣がありました」と遠藤さん。
南インドのミールスなど混ぜて食べる文化は東京にも浸透しつつあるが、「大阪スパイスカレーが流行る前から関西にはカレーを混ぜて食べる習慣がありました」と遠藤さん。

関西人の遊び心が皿の上で炸裂

3種がけ 1400円(MANOSチキンカレー /豚骨&鰹出汁のうちなーポークキーマ/海老とトマトとズッキーニのカレー)。
3種がけ 1400円(MANOSチキンカレー /豚骨&鰹出汁のうちなーポークキーマ/海老とトマトとズッキーニのカレー)。

この店がオープンしたのは2019年だが、遠藤さんのカレー道は、2014年に先輩と大阪で北インドカレーの店を開いたのが原点。やがて大阪スパイスカレーの人気店『旧ヤム邸』に移り、毎日のように異なるレシピを考案した。2017年に『旧ヤム邸』が東京進出した際、遠藤さんも上京。2年後に独立。

出店場所に三軒茶屋を選んだのは、「大阪の“混ぜて食べる”文化を面白がってくれると思ったから」。すでに多種多様な飲食店があり、いけると感じたとか。

どんな食材でも使う。ただの変態です(笑)

レシピを考える流れはまるで連想ゲーム。例えば、今は夏だからゴーヤを使いたい。ゴーヤ→沖縄→ソーキそば。では出汁を活かし、シークヮーサーで爽やかさを足そう! これは冒頭の 「豚骨&鰹出汁のうちなーポークキーマ」だ。友達が「トマトのカレーを食べたい」と言えば「海老とトマトとズッキーニのカレー」で応える、そんなフットワークの軽さもいい。

一方、 関西人の遊び心か、「ただの変態です。これカレーじゃないでしょ、みたいな食材にも果敢に手を出す」。チキンカレーには大根を。ヒントはおでんで、「出汁が具に染み込んでいるのを関西弁で“しゅんでる”と言います。それをカレーで表現したかった」。

また、バレンタインには「チョコレート」をテーマにカカオニブを使い、バターチキンキーマを作った。

品書きは黒板を確認。
品書きは黒板を確認。

一度ハマると変態的にのめり込む性格の遠藤さん。カレーの前は、何にハマっていたの?

「高校から大学まで吹奏楽部でした。カレー作りは合奏に似てる。高音のクラリネットは、スパイスで例えるならカルダモン。いや、クミンかな。低音のチューバはクローブやブラックペッパー。僕の担当だったアルトサックスは色物なので、フェンネルかフェネグリーク」

その複雑なハーモニーに、こちらもハマる!

内装はバーをイメージ。
内装はバーをイメージ。
住所:東京都世田谷区太子堂3-18-2 三茶ビル1F/営業時間:12:00~15:00LO・19:00~21:30LO/定休日:月・金/アクセス:東急田園都市線三軒茶屋駅・東急世田谷線三軒茶屋駅から徒歩8分

取材・文=信藤舞子 撮影=金井塚太郎
『散歩の達人』2020年9月号より