いざ、雪印メグミルク 海老名工場へ!
海老名工場は、1967年に「雪印乳業 厚木工場」として操業を開始した。
2011年から大規模な改修を行い、2014年に現在の形に。同時に、工場見学も始まった。ここでは、「おいしい雪印メグミルク牛乳」やコンビニやスーパーのPB商品の牛乳、「毎日骨太MBP(R)」などの乳飲料のほか、「牧場の朝ヨーグルト 生乳仕立て」「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」といったヨーグルト、意外なところでは「Dole(R) 100%ジュース」も製造している。
「窓の外をご覧ください」と、案内人の小野寺さん。その手が指し示す先には、銀色にきらめく巨大なタンクが。
「あれは、届いた生乳を貯蔵する『受入タンク』で、100tタンクが6本、30tタンクが4本の、合計10本あります」。
もはや、ピンとこない大きな数字だが、年間製造量21万㎘、国内最大規模の市乳工場のスケールは伊達ではない。ここでは、この圧倒的な量の生乳が、牛乳になっていく工程を見られるわけだ。
製造ラインまで進むと、実際に働いている人の姿もガラス越しに見え、臨場感がある。特にここでは、「おいしい雪印メグミルク牛乳」独自の「低温脱気製法」に着目だ。
「生乳を低温に保ったままで酸素を取り除く技術により、加熱による味の変化を抑えることができるんです」。
この製法は、数ある同社の商品の中でも、「おいしい雪印メグミルク牛乳」でしか採用されていない。「よかったら、弊社の別の牛乳と比べてみてください」と、小野寺さん。どのような違いがあるか、興味が湧いてきた。
帰ったら、試してみよう。
さらに進むと、品質検査のコーナーへ。ここでひと際目からウロコだったのは「官能検査」だ。検査機器や機械を用いた検査と合わせ、社内の厳しい試験を通過した「官能評価員」が、味覚を研ぎ澄まして品質を確認するという。「人の感覚」の検査も加えるところに、プロ意識が見えて、感動。
そのあとも、商品のパック詰めラインを見たり、パッケージの豆知識などを教えてもらったりしながらコースを進む。そして、最後には試食・試飲コーナーがあるのもうれしい。
成り立ち知れば、味わいも変わる
振り返ると、工場全体が見学ありきの設計であったことに気づく。ホームページを見れば、海老名以外の工場も見学を実施していて、中には、「オンライン工場見学」なる変わった試みをしたりしている工場もある。雪印メグミルクが、工場見学に並々ならぬ熱量を持っていることがうかがえるが、その理由はなぜなのだろう。
「いろいろありますが、子供たちに『自分たちが口にしている牛乳は、こう作られている』と、知ってもらいたいというのは大きいですね。学校給食で普段飲んでいる牛乳を製造しているので、その使命感もあります」
なるほど、製造過程を知ると、おいしさもまたひとしお。子供だけではなく、大人も発見の連続だった。
今こそ、工場見学で“リアル”を味わうべし!
見学でのポイントをピックアップ!
【Point 1】品質管理の最後の砦は「人」だった!
徹底した品質管理を行う雪印メグミルクだが、その検査の一つに「官能検査」というものがある。これは「官能評価員」なる人達が、自分自身の五感を頼りに風味の検査をするというものだ。
官能評価員になるには、通常の牛乳や水と、風味に差をつけられたものの違いを見極めるという、超ハードな試験を満点合格で通らなければならない。その難度ゆえ、社内でも数えるほどしかいないという。普段は、おのおのの持ち場で仕事をしているが、商品に異常が報告された際は、まるでアベンジャーズのように集結し、検査を行うことも。かっこいい!
【Point 2】知ってました? パッケージの豆知識
雪印メグミルクといえば赤いパッケージだが、これには理由がある。実は、牛乳は光に弱く、室内照明でも傷む。そのため、遮光性の高い赤を採用して、品質保持の作用を高めているのだ。
他にも、目が不自由な方でも生乳100%の商品であることが判別できるよう業界で統一されている「切欠き」や、開け口と逆の口を開くとリサイクルメッセージも。随所に工夫が凝らしてある。
【Point 3】お土産もあります!
取材・文=どてらい堂 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2023年9月号より