ジャズ喫茶は京都の大学時代によく通って、アルバイトしていたほど好きな場所。お手製の大阪ジャズ喫茶マップを作って配布するほどの情熱の持ち主でもある。子育て中、フリー・ジャズ好きのご主人がヨーロッパものなども含め存分にジャズを聴いている傍らで、「自分のジャズへの想いも蝋燭の灯のようにありました」と語る。
開店の契機は、子育てを終えて、これからまたジャズ喫茶通いをしようと、久しぶりに訪ねた天王寺の店が閉店していたことだ。それなら自分でと、オープンしたのが2011年11月。
いざ店を始めると、年配のお客さんから人気を博し、「この店のおかげで再びジャズを聴くことになってうれしい」と、レコードもオーディオも多くをお客さんから教えられたという。「ジャズは若い頃聴いた時も、今聴いてもまったく同じ。古くさくない」という客たちの声にうれしそう。
「たとえ一曲でも自分の好きな曲に出会えたらそれを聴いて幸せになって帰る。それが私流のジャズ喫茶の使い方。ここがそんな場所になれたら本望です」と目を輝かせる。
【店主が選ぶ一枚】John Lewis & Sacha Distel "Afternoon in Paris"
MJQ のジョン・ルイスとパリの先鋭ミュージシャンとの共演
「特に好きなのはマッコイ・タイナー」と都会派な好みの酒井さん。ウディ・ショー、ビリー・ハーパー、ハンク・モブレーなど続々と名が挙がる中、一枚選んだのは、ジョン・ルイス&サッシャ・ディステルの『アフタヌーン・イン・パリ』(1956)。フロックコートを着こなすジャズ界の貴公子ジョン・ルイスが、訪仏時にサッシャ・ディステル、バルネ・ウイランなどパリの先鋭のミュージシャンと録音した愛すべきアルバムだ。
取材・文=常田カオル 撮影=谷川真紀子
散歩の達人POCKET『日本ジャズ地図』より