MASTER'S VOICE
陰の人だけど親分よりいい演奏じゃない

学生時代に有楽町のジャズ喫茶「ママ」へ先輩に連れられて行ったのがジャズとの出会い。プレスリー好きだった耳に鳴り響いた音楽にとても親しみを覚えた。その後、郷里で就職し、初任給で最初のレコードを購入。いつかジャズ喫茶をやりたいという想いを抱きながら、友人・知人のつながりのなかで念願を果たしたそうだ。

表通りから小道を入ると現れる渋めのエントランス。
壁には世界に一枚しかない、ズートの肖像画。かつて店を手伝ってくれていた、看板の絵描き職人による傑作だ。

飾られた写真や絵からも和気あいあいとした店の雰囲気と歴史が伝わってくる。特に目を引くのがサックス奏者ズート・シムズの大きな肖像画。聞けば相澤さんは、全国に会員200人を擁するズート・シムズファンクラブの会長だとか。「単にお鉢が回ってきただけだけど、ズート・シムズは本当に好き!」とさらに笑顔に。

「友達がこれ聴かせてけろ、聴かせてけろっていうもんだから」と、山形弁も交えながら、温かい人柄の相澤さん。
木を基調とした落ち着く内装。ズートの他、仲間たちとの写真や時計のコレクションがセンス良く飾られる。

「演奏に温もりがあるの。常に盛り立て役で陰の人だけど、キラッと光る演奏が聴けると、バンマスの親分よりいい演奏じゃないか!とたまらなくなる。常に歌っていて、とにかく素晴らしい」とズート愛やまぬマスター。

そこはかとない温もりにあふれている店だ。

【店主が選ぶ一枚】Zoot Sims “Live in YAMAGATA vol.2”

閉店テーマもズートだぞ

店の一枚はズートを山形に呼んだときのライブ録音盤『ライブ・イン・ヤマガタvol.2』(1977)。長年の付き合いだったプロモーターの故・西陰嘉樹とともに成功させた伝説のライブだ。「最後、定番の終わりのテーマが、終われないでノリノリなの」と、レコードをかけながらそのエネルギーのほとばしりに満面の笑みの相澤さん。閉店テーマとしてテープで毎日流すのも、やはりズート。クインシー・ジョーンズが彼のために書き上げた「Evening in Paris」だ。

取材・文=常田カオル 撮影=谷川真紀子
散歩の達人POCKET『日本ジャズ地図』より

住所:山形県山形市幸町5-8/営業時間:11:00~21:00/定休日:無/アクセス:JR奥羽本線山形駅から徒歩2分
大阪市鶴見区にあるJR放出駅からすぐ、雑居ビル4階でアットホームなジャズ喫茶を営むのは、主婦然として優しげな酒井久代さん。無頼のジャズ喫茶好きという酒井さんが、ご主人から「やめとけ」と言われても実現させた念願の店だ。
鹿児島県の西部、東シナ海の大海原に面した串木野で1976年に創業。電子工学専攻の大学時代、アンプへの興味からジャズに惹かれていったという店主の須納瀬(すのせ)和久さん。