『noodle house錦鯉』が監修した酒に合う担々麺を提供するダイニングBar×ラーメン店
車の往来が激しい外堀通りから1本路地に入ると、昼間はシンと静かになる。居酒屋がひしめく繁華街の路地裏に佇むのは『Blood Moon-Tokyo design noodles-』。以前は銀座でバーテンダーをしていたオーナーの高梨朋良さんが2021年にオープンした店だ。
1階は白を基調にし、いかにもラーメン店らしいシンプルな内装だが、2階はチェリーみたいなペンダントライトがムーディーなダイニングBar。ここでは1階のラーメンはもちろんのこと夜限定のお酒に合う創作料理も楽しめるようだ。
「お酒とラーメンの組み合わせは面白いな、という発想から私の地元・新橋にこの店をオープンしました。バーテンダーの知識を生かしてラーメンと創作中華に合うお酒も提供しています」と、高梨さんは語る。新橋で生まれ育った高梨さんにとって、この辺りは勝手知ったる場所だ。
「実家は新橋4丁目にあって旅館をやっていたんですが、マッカーサー通りの再開発地区にあたってなくなってしまいました。新橋は芝家具といわれた家具の街で、戦後、大使館とか都内に住む外国人のために洋家具を作って栄えていたそうです。昔は田町で木材を運んで、浜松町で組み立て、新橋で塗装をしていたそうです」。今の港区では想像できない街の歴史を興味深く伺った。
あとで少し調べてみると、芝家具は明治維新をきっかけに発展し、1970年ごろまでは港区内に100か所以上の家具関連の事業所があったという。しかし、現在は10か所ほどしか残っていないそうだ。今や高層ビルに囲まれた新橋にはそんな過去もあったのだ。
濃厚なゴマとメリハリをきかせたスパイスが混ざり合う担々麺
提供するラーメンは、旧知の仲だという錦糸町『noodles house錦鯉』のオーナーに依頼し、酒に合う担々麺をプロデュースしてもらったという。
麻辣担々麺950円は、自家挽き練りゴマとカシューナッツ、ネギ油などを合わせた特製芝麻醬で、濃厚なゴマのコクと芳醇な香りがたっぷり。さらにスープには鶏と乾物類をベースに、シジミや北海道産真昆布、シイタケなどで幾重にも広がる味の層が印象的。コクがあってもしつこいというのではなく、ほどよくキレのある絶妙なバランスだ。
トッピングの肉味噌は国産豚の粗挽きを使用。中国醤油や数種の香辛料でまとまりのある味付けに。さらに辛さと香りが決め手のラー油には、辛さを際立てる朝天唐辛子をはじめ、4種の唐辛子をプレンドし奥行きのある味わいを表現している。
高梨さんから「別料金だけど、相性がいいのでぜひ!」とおすすめされたのは、生姜醤油が香るジャリチ(薄切り豚ロース唐揚げ)300円。うん、これは酒のつまみにもいいなあ! ふわっとショウガが香り、醤油ベースのタレに漬け込まれているので、揚げたてのパリパリを食べてみると、そのままでもおいしい。
「白米やお酒にも合うんですけど、担々麺に入れてもすごくおいしいんですよ」という。衣にたっぷり担々麺のスープを吸い込んで、麺と一緒に食べればボリューム満点。高梨さんがパーコー麺からヒント得た、と聞き思わず膝を打った。
さらに特筆すべきは菅野製麺所と共同開発した全粒粉入りの細麺と中太麺。小麦本来の香りと旨味、それでいてつるりとした喉越しもいい。濃厚なスープにも負けない味わいを実現しているだけでなく、たっぷりとスープを持ち上げてくれるので、一気にズズズっとすすりたくなる。
まった〜りと濃いゴマのコクと香りの担々つけ麺
そしてさらにもう1品。「担々麺のつけ麺はストレート太麺で濃厚なスープを吸い上げるので、また違ったおいしさがあります」と、高梨さんが持ってきてくれたのが担々つけ麺1000円だ。
ゴマと唐辛子の香ばしさを楽しみながらレンゲでスープをすくってみると、トロリとした粘度があり、なるほどさらに濃厚そうだ。ひと口飲んでみるとまった〜りとなめらかで黒酢由来のおだやかな酸味がある。
謹製のスープに絡むのは全粒粉を混ぜたもっちもちの中太麺。力強い味と香りでスープを迎えうつ。これは、ゴマ好きにはたまらないな〜。皿に盛られた麺は並で200gもあるが、スープと麺の相性が絶妙すぎて箸が止まらない。「さっき麻辣担々麺を食べたじゃない⁉︎」と、もう1人の自分が驚いている。この味、中毒性があるのでご注意を。
またこの店に来たときは、無意識に担々つけ麺の食券を買ってしまいそう。そしたら素直に100円をプラスして大盛か追い飯、はたまた和え玉で楽しみ尽くすのだ。キシシッ!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢