両駅のほぼ真ん中にある鳩森八幡神社は、ダガヤサンドウの中心。「この五差路から、放射状に街が広がっています」と話すのは、街の動脈的存在「千駄ケ谷大通り商店街」の理事、岡﨑千治さんだ。村上春樹の作品が誕生した千駄ケ谷に惹かれて移り住み、目下、街づくりに奮闘する。「明治神宮、神宮外苑、新宿御苑に囲まれて、近隣から文化が入らずに置き去りにされた場所です」と聞き、なるほど。のんびりローカルな理由、腑に落ちた。
歴史散策も楽しめるエリアだと言う岡﨑さんに、おすすめポイントを案内してもらった。津田塾大学のあたり一帯は、徳川家の茶畑があった場所で、「徳」と記された電柱を何本も発見! また『盆栽自転車店』近くの坂道には千駄ケ谷町時代のマンホールが残り「千」の字が刻まれている。さらに、戦火を逃れてどっしり立つレンガ造りの蔵など、写真を撮りたくなる見どころが、あるわ、あるわ。
一方で、昭和の東京オリンピック以降に建てられた、凝ったデザインのマンションが多く、今は大小のアパレルメーカーが入居。わっ、かっこいい~っと見惚れるセンスのいい大人が闊歩するわけだ。
「新宿と渋谷が近いのに真空地帯のよう」とは『GAギャラリー』の斎藤日登美さん。歴史と新しい感性がバランス良く共存する都会の狭間を、まったりと巡ろう。
盆栽自転車店
カフェと自転車店が同居するオアシス
日当たりのいい袋小路に潜む、サイクリストの立ち寄り処。停めた自転車を見守れるガラス張りの店内は、奥へ進むと雰囲気が一変。自転車の部品や工具がずらりと並び、秘密基地みたい。土日は静かで、地域猫が昼寝するのどかな光景を眺めながら、ほっ。
『盆栽自転車店』店舗詳細
Monmouth Tea
甘露な紅茶と笑顔がある街のへそ
鳥居前の交差点に鎮座。出勤前のモーニングからプロ野球観戦後の一杯まで、ひっきりなしに人が集うティースタンドだ。3坪の店内で、店主・柏井慶一さんとスタッフが濃厚で病みつきになるモンマスティー380円を淹れる。地元民だけでなく遠方から通う常連も。
『Monmouth Tea』店舗詳細
おかしや うっちー
素材が生きるすっぴんお菓子
「素材の味をそのまま伝えたい」と、真新しい厨房で早朝から腕をふるう店主・内山裕介さん。ジャージー牛乳由来の生クリームで覆われた、真っ白なちいさいみるく1223円は、繊細なので持ち運ばず店内で。中国茶600円~と合わせて、そぉっと口に運びたい。
『おかしや うっちー』店舗詳細
THE GRAPES WINE SHOP
界隈のワイン消費アップに貢献!?
ワイン好きの域を超えて本格的に学んだ後、ついに店を構えたコジオ・ロベルトさん、奈津子さん夫妻。「気軽でおいしい“おうちワイン”を」と、リーズナブルなものから、自然派や特別な日の一本も紹介する。二人とワイワイ相談しながら選ぶ時間、楽しや。
『THE GRAPES WINE SHOP』店舗詳細
GA gallery Bookshop
建築とアートの専門書がぎっしり
建築専門誌『GA』が運営するギャラリーに併設。美しい写真に圧倒される大型本をはじめ、希少な洋書が揃う。ここに来店する外国人には、東京の建築ガイドブック類が人気だ。ひと際目を引く斬新な建物、天井の高い室内にも目を見張る。
『GA gallery Bookshop』店舗詳細
取材・文=松井一恵(teamまめ) 撮影=千倉志野
『散歩の達人』2020年1月号より