想いをしたためる文具を銀座で
あんなに作文や日記を書いていた子供の頃が噓のように、手書きをしない大人になってしまった。ついメールで済ます無精者だけど、ペンジャケットのキャップを取った瞬間の衝撃。ボールペんてるが何気取ってんの? でも太めの軸のフィット感と適度な重み、しかも赤・白・黒とおなじみの『伊東屋』カラーが、銀座買い物って満足感を盛り上げる。
使い込んで短くなり、軸が飴色に変わった『月光荘』の8B鉛筆の誇らしげな様子も、「僕は銀座を使ってる」という思いを高めてくれるのだ。手みやげに「ありがとうございます」の言葉を添える一筆箋だって、できれば銀座メイドがいい。明治遷都に合わせて東京に出店したという『鳩居堂』の2階に並ぶ毛筆には手が出なくても、そこにルーツを持つ筆ペンを使うという満足感。全ては思い込みでしかないけど、そこから手書きがスタートすればいいじゃないか?
何万通りもある中から悩んで選んだノートクチュールのネーム入りノート。製作過程をガラス越しにボンヤリ眺めてたけど、じゃあこの一冊を何に使おう? レトロモダンなユーモアカードを誰に出そう? いやいや、気軽に使えばいいんです。どんどん書いて使いきったらまた買いに行くんだ。銀座のあの店へ……。
季節を感じられるオリジナルのペーパーアイテムたち。『G.C.PRESS』
1979年創業のオリジナルのペーパーアイテムのお店。一筆箋、はがき、便箋や封筒……季節のアイテムからシンプルな定番便箋、カードなどのペーパーアイテムがズラリと店内に並び、その全てがオリジナルアイテム! 可愛らしさと大人っぽさを兼ね備えた使いやすいデザイン、時代に合わせ使いやすさを考えられた商品が多いので、実用性はバツグン。のし袋やシールなども揃うので、冠婚葬祭や贈り物の際にも心強い味方となってくれそうだ。
『G.C.PRESS』の詳細
オリジナル万年筆や色とりどりのインク…自分だけの文房具。『ancora銀座本店』
2021年3月にオープンしたばかりのこちらは、『セーラー万年筆』とオフィス家具や文具、事務用品などを手掛ける『プラス』のコラボ店舗。コンセプトは「カスタマイズ」と「ギフト」とのことで、さまざまな“ここだけでしか手に入らないアイテム”が展開されている。自分オリジナルの万年筆を作ったり、数多あるインクから自分の色を探したり。日常を少し楽しく明るくしてくれる、そんな文房具やアイテムが揃う。
『ancora』の詳細
スイスメイドのクオリティがここに。『カランダッシュ 銀座ブティック』
スイスの画材・高級筆記具メーカー『カランダッシュ』と、老舗文房具店・伊東屋とのコラボレーションショップ。1Fはボールペンや万年筆を取り扱うフロア、2Fが画材を扱うフロアとなっており、特に2Fではカランダッシュが国内で扱うほぼ全ての商品が揃うとのことでプロも足を運ぶとか。1915年にスイス・ジュネーブの鉛筆工場としてスタートしたという『カランダッシュ』の世界を、この1店で楽しむことができる。
『カランダッシュ 銀座ブティック』の詳細
銀座の路地裏に佇む、予約制の小さな文房具店『ぎんざ五十音』
銀座の裏路地に佇む、少し変わった文房具(?)店。店内は要予約&ワンドリンクオーダー制。万年筆のように見える「ミミック」や真鍮のデザインがシックな「エクステリバー」などの鉛筆補助軸、本革で作られたシース(万年筆や鉛筆などを入れるサック)「ジャック」など、ユニークなオリジナル文房具などを手にとって確かめ購入することができる。お向かいの宝童稲荷神社の門前茶屋も兼ねているので「キツネ」グッズも多数!
『ぎんざ五十音』の詳細
銀座メイドでおしゃれに装う『銀座 伊東屋 本店』
事務用ペンに洗練された衣装を着せてしまうペンジャケットは、文房具を知り尽くした老舗ならではの発想だ。調整リング330円でペンの交換ができる気配りも忘れない。好きな紙やパーツを組み合わせて作るノートクチュールは、タイミングが合えば銀ブラしているうちに完成する。良い物は愛着を持って大事に使う、だから実は経済的なのだ。『伊東屋』で誂える文房具は、背伸びせずにできる銀座メイドのお楽しみ。
絵を描くようにお手紙を『月光荘画材店』
銀座はアートの街。無数のギャラリーに、趣向を凝らしたショーウィンドー。その隙間に『月光荘』の佇まいがしっくり馴染む。本来はデッサン用の8B鉛筆もアイデア次第。軟らかな太芯は濃淡も変幻自在だから、お気に入りのユーモアカードを見つけて手紙を出そう。巨匠猪熊弦一郎画伯の絵も、懐かしいプリントゴッコで1枚ずつ手刷り。絵の具も無料で借りられ、切手も買える。小さくアート気分。
京都と東京の薫りを筆に乗せ。『東京鳩居堂 銀座本店』
この店は京都の匂いがする。激変する周囲の風景や時の流れも、ここだけゆっくり動いている。昔と今の銀座を表現した一筆箋は、刷り色に日本の伝統色を使用。書道用品とお香を揃えた2階のしっとりした風情を味わううち、敷居の高い毛筆に、先ずは筆ペンから挑戦してみようって気持ちになる。銀座の街で見つけた手土産に一言添えて渡すのもいい。書は優しき遊び心だと『鳩居堂』は教えてくれる。
取材・文=高野ひろし、屋敷直子、川口有紀 撮影=小野広幸、金井塚太郎、川口有紀 構成=林本啓祐、フリート