一方で街には、およそ「キャラ商売で大儲け」を狙ったとは思えないキャラが棲息している。私は特に居酒屋のキャラが好きだ。皆どことなく、一杯ひっかけて描いたようなゆるさがある。今回はこうしたほのぼの居酒屋キャラを追ってみたい。
店名がキャラ化される場合
まず、居酒屋の店名がそのままキャラクターとなっている場合。
「たぬき」や、
「おかめ」などは縁起物でもあるし、ある程度型が決まっているので、キャラにもしやすい。そのため各地で見ることができる。
店名が「こぶた」や、
「かあさん」となると、キャラ化するにも描き手の腕が問われそうだ。
店名そのままばかりではない
店名から連想される絵が描かれることもある。居酒屋ではないが、「とんち」というもんじゃのお店には、一休さんと見られる小僧さんが描かれていた。
店名には直接関係はなくとも、イメージキャラクターのようなキャラが描かれているお店もある。北小金の居酒屋にはキツネとタヌキのイラストが描かれていたが、ここは以前「狐狸庵」というお店であったという話もあり、そうなると「店名そのままキャラタイプ」に属するのかも知れない。
ところで、「ほのぼのとしたキャラ」=「絵が下手」という訳ではない。むしろ高い技術に裏打ちされたものであることが多い。たとえば甲府の居酒屋には盃を飲み干す武将の絵が描かれているが、かなりの画力の高さであることが窺える。
また、首都圏を中心に多数の店舗を展開している「加賀屋」のやっこ凧キャラクターも、体のバランスの取り方など、よくできたデザインである。
聞けば、このキャラクターは創業者と親交のあった漫画家さいとう・たかを氏によって生み出されたということで、完成度の高さも納得である。
先日、居酒屋にしては珍しいタイプのキャラを池袋で発見した。
牛や豚、鶏、魚がネオン看板のあちらこちらに散りばめられている。「食材がキャラになるタイプ」は精肉店や焼肉屋などに多く見られるが、居酒屋で食材が前面に押し出されるのは珍しいのではないか。しかしこのようにかわいいキャラを見た後では、肉料理や魚料理を注文するのが申し訳なくなってしまいそうだ。
居酒屋とはおおむね、酔っ払うことを目的とする店である。居酒屋のキャラにほのぼの系が多いのは、そうした酔っ払いを優しく包んでくれるイメージだからだろうか。店選びのポイントに、そんなほのぼのキャラを含めてみてもいいかも知れない。
イラスト・文・写真=オギリマサホ