楽器修理のプロが営む雑貨店『ボゴランマーケット』[荻窪]
鮮やかなブルーの壁の広々とした店内には、ジャンベを中心とした西アフリカの楽器やボゴランと呼ばれる泥染めの布、木彫りの人形などが並ぶ。もとは相撲部屋だったとは信じられないほど、アフリカ一色だ。一年に100件以上もの楽器修理をこなしながら店番をする店主の西森裕記(ゆきひろ)さんは、「アフリカでは小さい子からお年寄りまで物づくりをしていて、その工程を想像するのが好きなんです。今後はもっと雑貨を増やしたい」と語る。
『ボゴランマーケット』店舗詳細
日本の手しごとを身近に感じたい『art+stellas器物家』[荻窪]
仙台で23年間民芸品店を営んでいた母を継いで、2008年荻窪に店を構えた娘の武田直子さん。店を始めたきっかけは、「日本の職人と買い手の橋渡しをしたいと思ったから」だそう。東北のかごをはじめ、陶器やガラス食器など、店内には職人による手しごと品が並んでいる。「山ぶどうやあけびのかごは雪や雨にも強く、50年以上暮らしに寄り添ってくれます」と武田さん。月に一度、商品を総入れ替えして行う作家の企画展も見ものだ。
『art+stellas器物家』店舗詳細
紙モノ雑貨のみ。じっくりゆっくり選ぶ楽しみを『ぺぱむら』[西荻窪]
『ぺぱむら』は「ペーパーの村」という意味で、店内は紙モノの雑貨でいっぱい。文房具店で販売を担当していた姉の渡辺久美さんと、妹でグラフィックデザイナーの渡辺律子さんの姉妹で営む。じっくり丁寧に商品を見ているお客さんが多く、30分以上滞在する人もいるそう。どの客も「選ぶこと」が本当に楽しそうだったのが印象的だ。
文房具屋ではなく、あくまで「紙モノ雑貨屋」がコンセプト。バースデーカードをはじめ、用途別のカード、シール、マスキングテープ、ちょっとおもしろい飾り小物など、どれもアイデア次第で使い方は自由自在だ。姉妹のあたたかいムードが心地いい。今後はオリジナル商品も増やしていく予定だという。
『ぺぱむら』店舗詳細
店主がこだわってセレクトした、ずっと使える愛すべき道具たち『雑貨食堂 六貨』[西荻窪]
ときどき食堂と間違われるが、あくまで雑貨屋だ。食堂の日替わり定食みたいに、日々仕入れたものを並べて売っていきたい。そんな気持ちをこめてつけた店名「雑貨食堂」。そして「六貨」は、人が生きるのに必要な衣・食・住にプラスして、心地よく暮らすための、読む・創る・贈るの3つを加えた6つの要素を意味しているという。
店主厳選の道具は、国内外を問わずシンプルで歴史をもつものが多い。古くから使われ続けている道具はとっつきにくい反面、機能にあったデザイン性もあり、長く付き合っていけるから、と話す。
パッケージから出した状態で置いてあるので、持ってみて選べるのも特徴だ。商品に対する思いは手書きの商品説明カードにも表れているので、じっくり読んで品定めしよう。
『雑貨食堂 六貨』店舗詳細
小さな世界旅行が楽しめる、不思議な雑貨のおもちゃ箱『salon+atelier polka』[西荻窪]
タイ、ロシア、ベトナム、韓国、ウクライナ……。店主自ら買い付けた、世界各国の雑貨に出合える店。雑貨屋と美容院というふたつの顔を持っている。アンティークの使い込んだ棚に、古い本物のミシンや大きなキューピーなど、少しレトロな店内に、タイ、ベトナム、韓国などのポップな色味とウクライナやロシアなどのちょっと懐かしい色味、両方の色が混ざり合う。どこか不思議な国のおもちゃ箱に舞い込んだような感覚だ。
思ってもみない使い方や、加工をするお客さんがたくさん来るので、用途不明の商品も気に入れば仕入れる。買う人自身がおもしろいことを考えてくれるのが楽しいそう。店主自身もイラストレーターであり、オリジナルの雑貨の制作もしているので、お客さんと“ものづくりの自由さ”を分かち合う、そんな店だ。
『salon+atelier polka』店舗詳細
日本の暮らしになじむ北欧雑貨を『Mies』[西荻窪]
モノトーンの店内に、食器や掃除道具、服などが整然と陳列。ポップで色鮮やかな北欧雑貨が多く出回るなか、ここにあるのは日本の暮らしにもなじむシンプルで中性的なデザインの北欧雑貨だ。「機能的で長く使えるものを置いています。冬が長いという土地柄のせいか、暮らしが豊かになるような雑貨が北欧には多いんです」と店主の太田美保さん。太田さんのセンスを信頼して通う年配の常連客が多いというのもうなずける。
『Mies』店舗詳細
虫眼鏡を覗く気分でじっくり宝探し『Loupe』[西荻窪]
「15年開いていても、いつからありました? って聞かれるんです」と笑う店主の出下厚子さん。店は奥に引っ込み気味で見つけにくい。棚にテーブルに並ぶ品々も小さなオブジェや瓶や人形など。まさにルーペで覗いて宝探ししたくなるような店だ。手作業の温もりを感じるもの、海外のアンティーク、小さい頃から好きだったという張り子や土人形などの郷土玩具も豊富。
『Loupe』店舗詳細
財布にもやさしいナチュラル系『Tipi Arbre』[西荻窪]
4人も入れば満員状態の14㎡の小部屋ながら、装飾品から洋服、カゴ、木の食器や陶器などの生活道具までと幅広い品がすっきり陳列。地球と人にやさしい天然素材系が多く、しかもうれしいことに千円札でも買い物が楽しめるものもある。「私が、高すぎると買えない性質なので、普段遣いできて贈り物にも選びやすいものを心がけてます」と店主の西田紗緒里さん。お手頃価格で“収穫”の喜びを!
『Tipi Arbre』店舗詳細
さまざまな国の手仕事に触れて旅気分『Hin plus』[西荻窪]
旅と雑貨と手仕事が好きなきたひろみさんが2016年に開店。“旅する雑貨屋”というテーマを掲げるだけあり、多様な国の手仕事品が所狭しと並ぶ。特に多いのはバルト三国にポーランド、ポルトガル、モロッコ、中南米などのもの。買い付けは必ず現地へ出向くという。「作り手の笑顔や思い、その場の空気感までお客様に伝えたいなと思うんです」。エキゾチックな店内で、眺めて触れてお気に入りを連れて帰れば、自分も旅した気分になれそう。
『Hin plus』店舗詳細
熱いモノガタリを通して知る魅惑の品々『あめつち』[西荻窪]
店主の柘植英則さんは説明上手。品を手に取れば次々と、その魅力や作り手の話を淀みなく教えてくれる。どんな構造? 作り方は? と好奇心をくすぐり、自分がほれ込んだものしか置かないからこその熱意と詳しさなのだ。「だから、売れるものと売れないものの差が激しくて(笑)」。西荻の作家が手がけるフィット感バツグンのルームシューズ、ぐるりと細長ポケットが囲むバケツ形のツールバッグなど、日々の生活に溶け込みやすいものの宝庫だ。
『あめつち』店舗詳細
出合えるのは、全国から直接集めた作家もの『tsugumi』[西荻窪]
好きなブリキ玩具を求め西荻の骨董屋に通ううち、親しんだこの地で雑貨店を開くことになった山﨑康之さん。こだわるのは、陶磁器、木工、布ものなど、すべて日本のもの。全国の作家の工房や個展を訪ね、直接買い付けるので一点物も多い。木や陶器、金属など異なる材質のブローチの品ぞろえも楽しめる。「月1回の西荻手しごと市にも行くんです。センスのいい作品があると置かせてもらっています」。地元の若き才能も応援しているのだ。
『tsugumi』店舗詳細
「サラリーマン時代より今のほうが充実してます」『天草製作所』[西荻窪]
実は、以前は広告代理店に勤めていた西森真二さん。39歳のとき仕事を続けることに疑問を抱き「人生を足元から見直そう」と決意し、路上靴磨きに転身した。「お客さんから靴について質問されるうちに、きちんと靴づくりを学びたいという気持ちが芽生え、一から勉強しました」と西森さん。その後わずか数年で故郷の名を冠したお店まで持ってしまったのだから、すごい勇気と行動力だ。「根っからの夢想家」という西森さんがデザインした靴はどれも個性的。「履いていて楽しくなる靴を」という思いが伝わってくる。
『天草製作所』店舗詳細
敷居の低い古時計指南の頼れる本格派『トライフル』[西荻窪]
店主・寺山和弘さんは、好きが高じて20年以上の独学で技術を習得し、年代ものの機械式時計を修復販売するに至った。工房風の店内にガラスまでぴかぴかに磨き込んだ古時計が並び、愛情のほどが伝わってくる。国内外の柱時計の充実ぶりがこの店ならでは。機械部分も調整され、最多価格帯は6万円前後だ。置き時計、懐中時計、腕時計も扱い、なるだけ気安く使ってほしいと機械式腕時計は10万円前後中心。思い出の時計の修理や初心者の相談にも乗ってくれる。
『トライフル』店舗詳細
構成=フラップネクスト 取材・文=下里康子、奥谷道草、川端美穂、ミヤウチマサコ 撮影=原 幹和、オカダタカオ、鈴木愛子、ミヤウチマサコ