街を彩るアンティークショップや雑貨屋の数々

西荻窪を散歩するとまず驚かされるのは、アンティークショップや雑貨屋の多さだ。JR西荻窪駅を挟んで南北に延びる明神通りを歩けば、軒先に家具や古道具が積まれた店や、ショーウィンドウの棚にしゃれた文具の並ぶ店が次々と現れる。

『Tipi Arbre』。
『Tipi Arbre』。

アンティークの街として根付いたのは1980年代ごろと言われているが、いまだにこだわりの強い雑貨屋や文具店が日々増殖中。“旅する雑貨屋”がテーマの『Hin plus』、雑貨店兼美容室の『salon+atelier polka』、地球と人にやさしい天然素材系を多く取りそろえる『Tipi Arbre』など、扱うものや雰囲気もさまざまだ。アンティーク時計専門店の『トライフル』や、紙モノのみを取り扱う『ぺぱむら』といった専門雑貨の店も目立つ。

また、若き職人が奮闘する手しごとの店も見逃せない。『天草製作所』、『グリーンベックスキャンドル アトリエショップ』など、話を聞けば、趣味が高じて店を出すことになったという店主も多い。ここは、偏愛的な究極の趣味人が集まる地ともいえるかもしれない。

個人店が厳しい、物販が厳しいと言われる昨今だが、西荻窪を歩いているとそんなことはないのではと思えてくる。こと、雑貨の店は、歩けば続々現れてイキがいい! そんな中から、今回は個性的な7店を紹介。財布の紐をゆるゆるに緩ませるけど、いいモノとの出会いは目白押し。後悔はさせません。

深く根付く、喫茶・カフェ文化

『どんぐり舎』の店内。
『どんぐり舎』の店内。

散歩に欠かせない喫茶やカフェのレベルの高さも折り紙付きだ。『それいゆ』は50年以上、『どんぐり舎』『物豆奇』もそれに次ぐ老舗で、もはや“西荻の顔”といっていい。

老舗だけではない。築80年の木造家屋を使ったブックカフェ『松庵文庫』、モダンジャズを聴ける『JUHA』、無添加の食材でベジタリアンにも対応する『café ilo』、手作りのお菓子をお供にコーヒーをいただける『Kies』など、挙げるときりがない。2018年には、新感覚日本茶スタンド『Saten Japanese tea』や手の込んだ定食もおいしい『器カフェ 棗』もオープンした。

さらに、カフェ『HATOBA』と服屋『SUTOA』の店主が中心となって2009年に始まった“お茶を楽しみつつ街を散歩してもらう”イベント「西荻茶散歩(ニシオギチャサンポー)」も、この街の特徴を表している。ギャラリーやショップが店頭に「やかんマーク」を掲げ、各店が工夫を凝らしたお茶を提供して参加者をもてなすというもので、ゆるいけど熱い、各店の“西荻愛”が感じられる。

緑に囲まれた『松庵文庫』。
緑に囲まれた『松庵文庫』。
荻窪は、古くからの庶民派の店舗と、おしゃれで新しい店舗が入り交じり、個性豊かな個人店が多く連なる。喫茶店もその一つで、純喫茶の名店から、名曲喫茶、こだわり店主の喫茶店、フードが自慢の喫茶店まで、同じ“色”の店は二つとない。この週末は、もてなしの空間も、提供する1杯も、それぞれ独自の味をもつ、喫茶店めぐりへ繰り出そう。
落ち着いた雰囲気が魅力の西荻窪は、カフェ巡りの聖地とも言われています。カフェや喫茶店の数が多いのはもちろんのこと、どの店も個性豊かで他にはない魅力を持っている上、駅周辺にある店が多いので巡りやすいのもポイント。ただ、数が多くてどの店に行けばいいのか迷ってしまいますよね。そんな方におすすめの、魅力的なカフェ・喫茶店をご紹介。日常に彩りを添えるカフェで、ホッと一息ついてみてはいかがですか?

飲み屋街も見逃せない

飲んべえを誘惑する柳小路の灯り。
飲んべえを誘惑する柳小路の灯り。

陽が落ちると活気を帯びてくるのが、駅の南側にある闇市の残り香漂う柳小路だ。小さな飲み屋やせんべろ酒場が密集していて昼飲みにもうってつけの場所だが、老舗『やきとり 戎』の赤い看板が煌々と手招きする夜は格別。どこかアジアの国の路地裏みたいな雰囲気だが、2016年オープンの山小屋バル『西荻ヒュッテ』、2017年オープンの『ギリシャ小町三丁目』など、店のジャンルや雰囲気はさまざま。また、柳小路からすぐのサカエ通りにある連日満席の人気店『焼とり よね田』も、ぜひ立ち寄りたい一軒だ。さらに、『しんぽ』『吉』『Spice飯店』『スナック慕情』など、こだわりの日本酒を取りそろえる店が多いのも特徴だろう。

『テンセイ』は北口商店街の鳥居をくぐった道の先にある。
『テンセイ』は北口商店街の鳥居をくぐった道の先にある。
飲んべえひしめく横丁は、毎日お祭り騒ぎのにぎわい。粒ぞろいの名店を巡るのもいいが、地元民の帰り道に潜む隠れ家酒場を探すのも一興。表通りも裏通りも、注意深く観察すべし!

カレーや本屋も特徴的、新しい試みも

実はカレーもおいしい店がそろっている。出汁の旨味とスパイスの絶妙なマッチが特徴の『OHIO』、雑居ビル最上階のテラスでカレーをいただける『ササユリカフェ』、野菜だけでも満足感たっぷりの『大岩食堂』など、どれも店主のこだわりが光る個性派の一皿だ。

『古書 音羽館』。
『古書 音羽館』。

駅前すぐの『今野書店』から、『古書 音羽館』、新館と古書が混ざった品揃えの『BREWBOOKS』、絵本の古書店『トムズボックス』、展示やイベントも開かれる『ウレシカ』、旅心を掻き立てられる『旅の本屋 のまど』など本の街としての一面もあり、夜遅くまで店が開いているため、本好きの間では“夜の神保町”と呼ばれているとか。

注目は、古いアパートを改装した建物に複数の店が入る複合ショップ『西荻百貨店』。まだまだ進化中だが、最終的には100人の仲間を集めて、暮らしのあれこれを提供する“百貨店”を目指すという。

中央線沿線、吉祥寺のとなりにある西荻窪。閑静な住宅街が広がる一方で、こだわりの喫茶店や個性的な酒場も充実している街だが、実は隠れたカレー激戦区といわれているのをご存じだろうか。そんな隠れ激戦区である西荻窪にある様々なカレー店の中から、今回は店主のこだわりが詰まった実力派を4店紹介。
駅前にはノスタルジックな雰囲気が漂う商店街があり、はたまた駅から少し離れると閑静な住宅街が広がるという異なる顔を持つ西荻窪。お店のジャンルも街の雰囲気同様幅広く、個性あふれる店が軒を連ねている。とはいえ、カレー、イタリアン、フレンチ、ラーメンなどバラエティ豊かな店が多くあるからこそ、どの店を選べばいいのかというのは悩みもの。今回はそんな時に覚えておきたい、西荻の空気を存分に堪能できて、もちろん味も申し分ないという珠玉の店をセレクトした。
角田光代さんは、26歳のときに西荻窪に引っ越してきて以来、26年間住み続けている。地元の新刊書店や古書店を、どのように巡り、仕事に生かしているのかを聞いた。

根底にあるのは、“西荻愛”

西荻窪に個人店が多いのは、隣の吉祥寺や荻窪に比べて家賃が安く、小さなお店を始めやすいから……という話はよく聞くが、新しい試みを受け入れてくれる懐の深さが最大の要因ではないだろうか。

どの店も、挑戦的、偏愛的、個性的。しかし、お店同士がほどよい距離感でつながり、よけいな口は出さないが、お互いを気にかける雰囲気も感じられる。

ちなみに、2000年代に入って以降、月刊『散歩の達人』が一番売れるのは「吉祥寺」でも「鎌倉」でもなく「西荻窪」である。その理由を、ある西荻住民は「西荻の人は、自分の知らない店が西荻にあるのが許せないから」と語った。

“西荻愛”を根底に、あらゆる個性が交差し、積み重なって、変化してゆく街。歩けば歩くほど、発見があるに違いない。

散歩には、音楽が欠かせない。反論があることは承知の上だ。風の音や野鳥の囀り、商店街のざわめきに耳を傾けながら歩くのは楽しい。むしろ「さんたつ」編集部たるもの、五感を研ぎ澄ませて街を味わうべきで、イヤホンを両耳に突っ込んで歩くなど言語道断かもしれない。でも、BGMを変えるだけで、見慣れた景色が違って見えるからおもしろい。鬱陶しい満員電車の人混みも、サイケな1曲で彩るとクレイジーな映画のワンシーンになる。まだ葉が色付く前の街路樹にフォークソングを添えると、一気に秋めいて見えることもある。毎朝、自分を奮起させるためのロックなプレイリストを用意している人もいるかもしれない。季節や気分で選んでもいいが、今日は「街」で選ぶさんぽのテーマ曲なるものを提案したい。思いがけず街の魅力を引き立てる、よいスパイスになるはずだ。

西荻窪でよく見かけるのはこんな人

奇抜ではないけれど個性的。よく西荻窪を歩いているのは、そんな人だ。

ファッションに疎い人間ならまず躊躇してしまいそうな柄物アイテムもさらりと着こなし、それでいて気取っていない。むしろ着古してちょっとクタッとした上着の様子からは、お気に入りを長く着ていることが伺える。小物使いも印象的で、1点モノらしきバッグや革靴、ニット帽を身に着けて、店頭に並んだ雑貨を眺めている姿をよく見かける。

ついつい女性に目が行くけれど、男性も負けてない。ハンチングが似合うお兄さんや、カワイイ柄のトートバックを下げたおじさまも、興味津々で本屋をのぞいたり、柳小路で嬉しそうに乾杯していたり。

自分のお気に入りを身にまとい、お気に入りの店へ行く……そんな人が、今日も西荻の街を行き交っている。

取材・文=中村こより 文責=散歩の達人/さんたつ編集部 イラスト=さとうみゆき