What’s 路上園芸?

建物が密集する街なかでは、道端や室外機の上などのちょっとした路上空間が園芸スペースとなる。また足元に目を向けると、舗装のひび割れやブロックの境目といった隙間から小さな緑が顔を出している。

路上園芸とは、そのような「路上空間で営まれる園芸」や「人の手を半分離れ路上でたくましく自生する植物」のこと。隅々まで計画された街の中で、路上園芸は街に適度なゆるやかさと居心地のよさをもたらす。人の園芸愛と植物の生命力の共演によって生み出された、そこにしかない唯一無二の風景を観察し味わうのが路上園芸鑑賞の醍醐味だ。

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村田あやこ 著/グラフィック社/1650円

路上園芸を楽しむキーワード

人の技

街なかの園芸では、限られた空間を巧みに駆使した配置の技や廃材を転用した鉢など、路上園芸家たちの手仕事が見どころだ。路上園芸を通して暮らしや人柄が垣間見えてくる。

# どさ草 …… 園芸愛が公共空間へとあふれ出し、植え込みや歩道がひっそり誰かの「庭」化する現象。

# 配置の美学 …… ブロック使いや収納術など、路上の鉢植えの配置には路上園芸家の知恵が詰まっている。

# 転職鉢 …… お鍋などの廃材が植木鉢として転用されていること。写真は鏡開きで使い終わった酒罇。

緑の力

人間中心に作られた街の中でも、思いがけない場所が植物の住み処となる。最初は人の都合で植えられた植物でも、年月をかけた独自の成長の結果、時に妖怪チックな見た目になる。

# はみだせ緑 …… 砂漠のような街の環境でも土と水さえあれば、わずかな隙間だって植物の根城となる。

# 植物壁画 …… 建物の外壁をキャンバスにツタなどの植物が描く偶然の線描は、季節で変化する壁画だ。

# 植物のふりした妖怪 …… 成長や独自の仕立ての結果、街なかには時おり妖怪のような見た目をした植物が存在する。

いざ、深川を歩く

森下駅から外に出る。ふと植え込みの植栽に目をやると、街路樹の根元に誰かが植えたらしきパンジー。……むむむ、のっけから路上園芸家の気配をプンプン感じる。

植え込みのパンジーに路上園芸家の気配。

路上園芸は地図には載っていない。とにかくきょろきょろと嗅覚に従い、より生活感のする方や年季の入っていそうな路地、道のはじっこなどに注意を向けながら歩いていく。

江戸時代の痕跡が残りながら洒落たお店も続々とオープンするこのエリアは、大通りを一歩中に入ると町工場や住宅がひしめいている。路肩や室外機に板を渡して鉢を置いたり鉢の下にブロックを積み重ねたりと、限られた空間を有効活用する路上園芸家たちの創意工夫が随所に光る。漬物樽やトロ箱などを鉢に転用した「転職鉢」にも生活の気配。

犬のように紐でつながれた紫陽花。支柱になっているのは小さな鳥居。
トロ箱に植えられた木。下からは根っこが貫通。
レトロな建物にピンクのバラが。

住人とともに長い年月をかけて根を張ってきたのか、鉢から2階の窓を覆うサイズに育ったシェフレラや鉢底からすっかり根が貫通したモミジなど、気持ちよいほど伸び伸び成長した植物の姿も。

建物を徐々に緑に塗り替えるツタ。
店主自ら年2回手入れしているという『メンズヘアーユタカ』の見事なキヅタ。芸術的な植物壁画は細やかな手入れの賜物。
鉢いっぱいに密集したサボテン。頭上では白い花が満開!

探検気分で足の赴くままに歩いていると、隅田川へ流れ込むいくつもの運河や大きなマンションが目の前に現れる。隙間を縫うようにはみだす路上園芸。少し歩くだけで様々なスケールの風景を味わえるのも深川エリアの醍醐味だ。

文・撮影=村田あやこ
『散歩の達人』2021年7月号より

いつもの駅前で、職場の近くで、家の周りの住宅街で。周りを見渡してみてほしい。家の軒先やお店の前に、鉢植えが並んではいないだろうか。道や街路樹の植え込みなどにまで侵出していることがあるかもしれない。