生産者と消費者、川島町と恵比寿をつなぐ架け橋になりたい

季節によって変わる植物たち。オーナー自ら世話をしにくるそうだ。
季節によって変わる植物たち。オーナー自ら世話をしにくるそうだ。

恵比寿駅を出て駒沢通り沿いにあるケンタッキーフライドチキンの角を右折すると、2022年7月にオープンした『JAPANESE GELATERIA&CAFE ASANOHA』がある。にぎやかな飲食店街を横目に見ながら歩いていると突如緑に囲まれた店が現れて、立ち止まってみたくなる。

看板に書かれた「素材を生かした地産地消のジェラート」の一文に興味をひかれる。
看板に書かれた「素材を生かした地産地消のジェラート」の一文に興味をひかれる。

取材当日は晩秋にしては暖かい気候で、ひんやりしたジェラートを食べたい気分。店に入り、ガラスケースに入ったジェラートをのぞいていると「ここは埼玉県川島(かわじま)町にある『鎹(かすがい)ファーム』が運営する『JAPANESE GELATERIA ASANOHA』の姉妹店です。川島産の野菜や果物を使ったジェラートをはじめとした地産地消スイーツが楽しめるんです」と担当マネージャーの畑さんが教えてくれた。

埼玉県川島町は“小江戸”と名高い川越市の北側に隣接する場所で、東京から車で1時間ほどの場所にある。肥沃な土壌から生まれる野菜、果物、米など良質な農産物が収穫できるそうだ。

ガラス張りの店舗は開放感があり、外に見える植物たちに癒やされる。
ガラス張りの店舗は開放感があり、外に見える植物たちに癒やされる。

川島町に魅力を感じたこの店を運営する創コーポレーションのオーナーは、自ら畑仕事に勤しみ農業法人『カスガイファーム株式会社』を立ち上げた。また2021年7月に鎹ファームや和食店、BBQ場、そしてジェラテリアJAPANESE GELATERIA ASANOHA』を併設した複合施設『川島エビス1st Place』を開業。ここ『JAPANESE GELATERIA&CAFE ASANOHA』でも川島町の工房で作られたジェラートを提供している。

ジェラートがカップに盛り付けられる間、3つの黒板に書かれたこのジェラートがおいしい理由を読んで待とう。
ジェラートがカップに盛り付けられる間、3つの黒板に書かれたこのジェラートがおいしい理由を読んで待とう。

JAPANESE GELATERIA ASANOHA』は“地産地消ジェラート”をコンセプトに、鎹ファームや川島町で採れた野菜や果物、近隣牧場から届く埼玉県産ミルクを100%使用して製造しています。本場イタリアTELME社製ジェラートマシンで製造しているのもおいしさのポイントです」と畑さん。

鎹ファームのアイドル・子ヤギのしのぶちゃん。
鎹ファームのアイドル・子ヤギのしのぶちゃん。

食のインフラから見直し、一企業が生産者と消費者、畑とレストラン、そして川島町と恵比寿を繋ぐとは興味深い取り組みである。

「鎹ファームで収穫されたものは、恵比寿に直送されて創コーポレーションが運営する和食店や中華・イタリアンレストランなどでも使用しています。たまたま川島町の方とご縁があり、 “生産者と消費者”を食でつなぐ架け橋になれるのではないか、という想いがありました」。

ガラス製のウォーターサーバーもおしゃれ。
ガラス製のウォーターサーバーもおしゃれ。

埼玉県産牛乳100%を使用。ピュアなミルクのおいしさがダイレクトに伝わるジェラート

ガラスケースの中には12種のジェラートが並び、ラインナップは季節によって変化するという。ジェラートで四季を感じられるなんてなんだかステキだなあ。どれどれ、どのフレーバーにしようかな?

ええっ! 味噌味のジェラート(写真左下)ってどんな味なんだろう。
ええっ! 味噌味のジェラート(写真左下)ってどんな味なんだろう。
こちらにはゴボウチョコレート(写真右上)。ペーストにしたゴボウが練り込まれているらしい。
こちらにはゴボウチョコレート(写真右上)。ペーストにしたゴボウが練り込まれているらしい。

ジェラートの価格はシングル330円、ダブル605円。1種類食べたらもうひとつ食べたくなるにきまっているので最初からダブルを選んだ。

というわけで、ひとつめは珍しいゴボウチョコレートを。
というわけで、ひとつめは珍しいゴボウチョコレートを。

「川島町産のゆでたゴボウをフードプロセッサーでペースト状にし、チョコレートと一緒に混ぜ込んでいます。後味にふわっとゴボウの香りが感じられると思いますよ」と、スタッフのあかりさんがヘラでジェラートをこねる。最初は堅そうだが、空気を含んでクリーム状になってきたところでカップに盛り付けた。

もうひとつは、埼玉県産ミルク100%のあさのはをオーダー。
もうひとつは、埼玉県産ミルク100%のあさのはをオーダー。

そして店名を冠したミルクジェラート・あさのは。「これはすべてのジェラートのベースになっているんですよ」と付け加えてくれた。

スタッフのあかりさんがジェラートにカッコよくツノをピンと立てて盛り付けてくれた。
スタッフのあかりさんがジェラートにカッコよくツノをピンと立てて盛り付けてくれた。

さていよいよ実食。ゴボウチョコレートからいただきます。濃厚なチョコとゴボウらしい苦みがほんの少し香る。シャリシャリとした繊維もあってしっかりゴボウの生存確認をいたしました。

見た目はふつうのチョコレートジェラートだけれども……。
見た目はふつうのチョコレートジェラートだけれども……。

続いてあさのは。ミルク系アイスにありがちな生クリームやバニラエッセンスなどを加えておらず、ピュアなミルク感だ。口溶けがよくて食べ終わったあとも舌に残らず、あっさりといただける。ミルクのおいしさをダイレクトに感じられるぞ。

最後に冒頭から気になっていた川島町産の川島味噌のジェラートを試食させてもらうと、甘じょっぱくて香りのいい味噌の味がやさしいミルクとなじんでいておいしかった。

旬の採れたてフルーツを使った素朴な味のタルト

食後の余韻に浸っていると、店内で気になるPOPが目に入ってきた。ムムムッ、紅玉リンゴと川島イチヂクのタルトにジェラートもついているじゃないか。タルトの写真を凝視していると畑さんが「鎹ファームなどで活動を始めたところ、長野県下諏訪町の農園さんともご縁ができまして。オーナー自ら収穫した紅玉リンゴと、川島産のイチジクをタルトにしました。基本的には川島町の季節のフルーツを使ったタルトを季節替わりで提供しています」と語る。

タルトとジェラートとの相性はもちろん最高に決まってる!
タルトとジェラートとの相性はもちろん最高に決まってる!

というわけで、ジェラート(あさのは)+ドリンクセット(紅茶)896円をオーダーしてみた。

ゴロゴロとリンゴが入っていて、角切りのイチジクも存在感あり。最後のほうは溶けたミルクジェラートがソース状になり、タルトに絡めて食べてみた。
ゴロゴロとリンゴが入っていて、角切りのイチジクも存在感あり。最後のほうは溶けたミルクジェラートがソース状になり、タルトに絡めて食べてみた。

軽くオーブンで温められたタルトは、サクサクとして生地からは小麦の香りがする。フィリングには無添加のアーモンドクリームがたっぷり。皮と一緒にシロップ漬けにした紅玉りんごを使い、爽やかな甘酸っぱさとシャリシャリとした歯ごたえが特徴的だ。

また、ラム酒が香るイチヂクは大人の味わいも醸しつつプチプチ食感が楽しめ、温かいタルトをミルクジェラート・あさのはと一緒に楽しむ“冷や&アツ”の感覚も面白い。タルトもジェラートと同様に素材のおいしさを活かすように作られていて、素朴な味わいにすっかり魅了されてしまった。

川島産の新米も店頭販売。もちろん全国発送も可能だ。
川島産の新米も店頭販売。もちろん全国発送も可能だ。

ちなみにジェラートやタルトはオンラインショップで購入も可能。クール便にも対応し、全国各地へ発送できる。それを聞いて、真冬でも厚着をしながらアイスをパクパク食べる友人を思い浮かべた。味だけでなくコンセプトまでまるっと含めて興味深いから、アンテナの高い友人・知人に「ねえねえ、ちょっと食べてみなよ」とおすすめしたくなった。

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢