リサーチや取材でスパイス麺を食い倒して悟ったこと。富士には月見草、スパイスカレーには中華の太麺! そばでは繊細すぎるし、うどんではチト重い。中華麺なら縮れでスパイスを拾い上げ、ごはんよりもダイレクトに舌へ刺激を届けてくれる。各店研究熱心で、『点と線.』はワシワシ食べてほしくて、スパイスラーメンの麺を太くする予定だ。『レインボウスパイス食堂かぶと』も改良を重ね、全粒粉入りの極太麺に到達。小麦香る麺が、マグロの出汁と抜群に合うのだ。例外は『パンチマハル』。最初に作ったチキンカレーがサラサラだったので、麺類も合うのではとフォーを入れたことから誕生。でもフォーは米の麺。カレーと合わないワケがない!
パンチマハル [神保町]
タマネギ未使用なのに旨味ドババッ
店主の幸田伸介さんは元板前。休暇でインドを放浪した際、カレーに開眼! スパイス迷子になった結果、行き着いたのが和の技法を活かしたカレーだ。チキンめんはスパイスが舌で躍動しつつ、鶏ガラを煮込んだ出汁、ショウガやニンニクで味付けした鶏キーマの濃厚な旨味がスープを支えており次の一口が進む。出汁のきいたスープがフォーと実に合う。「あえて炒めたタマネギは使わず、いろいろ引き算したらこのカレーになりました」。
こだわりスパイスはコレ!
点と線. [下北沢]
2大人気者の、ちょうどいいとこ取り!
スープカレーの名店『サムライ』が、新たなスパイス麺の店に挑戦。名物のスパイスラーメンをすすれば、八角やクローブの清々しさの後に鮮烈な辛さが! ただしスープ自体は豚骨出汁の味噌ベースのためまろやかで、カレーとラーメンのど真ん中に位置する絶妙なポジショニング。辛さを和らげるカシューナッツや紫タマネギ、醤油だれで下味をつけた揚げゴボウなど具も考えつくされており、最後まで飽きずに飲み干せる一杯なのだ。
こだわりスパイスはコレ!
レインボウスパイス食堂 かぶと [吉祥寺]
異色の共演で癖になる味が誕生!
店主の吉岡健さんは新たなカレー作りを目指し、『まぐろ藤田』と出合う。「マグロの頭(カブト)や頰肉、テールなどを特別に卸してくれることになりました」。当時築地場内にあった同店の一画を借り、試作を重ねたカレーがマグロのフィッシュヘッドカリーつけ麺の原点。カレーを煮込む際からカブトを投入するのでマグロ独特の酸味、旨味が濃厚。そこに南インドのマサラスパイス、全粒粉入りの麺やトマトの甘みが交わり、比類なき一杯に!
こだわりスパイスはコレ!
かれへぇ スパイス商店 [六町]
本格スパイスカレーをまぜめんで気軽に
裏メニューで出していたきーまぜそばだったが、お客からの支持が高まりレギュラー化。まぜそばといえど、ホールのシナモン、ベイリーフを使っており、まぜずにすすればスパイスの輪郭がくっきり。まぜれば紫タマネギが酸味、半熟玉子がまろやかさを加え、よりおいしく! コリアンダーとチリを漬けた黒酢でさらに味変でき、フリーザのように形態を変える最強麺なのだ。セットのサラダの、スパイス6種で作るドレッシングも秀逸。
こだわりスパイスはコレ!
取材・文=鈴木健太 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2020年9月号より