まねき猫の隣には、台町駅の記念碑が。

石材店のある場所は、もともと秦野から二宮を結んでいた湘南軽便鉄道の秦野駅だった場所です。

大正10年に、この場所から専売局前(現在のNTT東日本)に秦野駅が移り、台町駅に名前が変わりました。

この路線は1906(明治39)年に馬車鉄道として始まり、蒸気機関による軽便鉄道に代わり、湘南軌道となった後、1937(昭和12)年にその役目を終えました。

現在、旧道を通るバスは、湘南軽便鉄道の路線とかなり似たルートを走ります。

昭和のはじめ、巡業帰りの関取が湘南軽便鉄道に十数人乗った時は、二宮から秦野へ向かう上り坂で動かなくなり、3分ほど先にある停留所まで歩いてもらったのだとか。

それ以外にも、上り坂ではお客さんに降りて押してもらったり、車掌さんが車両の前の線路に砂を少しずつ巻いて滑りにくくしてゆっくり進んだりと、苦労したようです。

1927(昭和2)年、小田急線の新宿~小田原駅間が開通する前には、皮肉にも、廃線のきっかけとなるレールを二宮から秦野まで運びました。

もともと小田急線の秦野(はだの)駅が1987(昭和62)年まで大秦野駅(おおはたの)駅という名前だったのは、開通当時には湘南軽便鉄道で既に秦野駅という駅名が使われていたためだそう。

同じ年、隣の大根(おおね)駅も、東海大学前駅へと名前を変えました。

旧道沿いに建つ中井町立井ノ口公民館には、湘南軽便鉄道の模型がひっそりと展示されているので、興味のある方は出かけてみてください。この模型は、静岡県の小山町の方が湘南軽便鉄道をまねて作り、寄贈したものだそうです。

参考資料:「湘南を走った小さな汽車」、「小田急線沿線の1世紀」