【まずは町そばから】
『手打そば 車家』まるで刺し身のようなフレッシュさ[京王堀之内]
福島から築150年の古民家を移築。太い柱や高い天井など、懐かしくもゆるりとした空気が流れる。先代が近代そばの始祖・片倉康雄氏に師事。今もその教え通り、全ての食材・調味料は全国の産地から選り抜くなど、体に優しい素材ばかりだ。ソバの実は低温保存し、その日打つ分だけ石臼で自家製粉しているから、いつでもフレッシュなそばが堪能できる。直球勝負のせいろやそばがきからその真髄が伝わってくる。
『手打そば 車家』店舗詳細
『手打そば 山泉』地元野菜のヘルシーメニュー[西八王子]
甲州街道から1本隔てた住宅地にある一軒家。1996年の創業で現在は2代目が腕を振るう。手打ちされたニ八のそばは、端正に裁たれた細切り。きりっと角が立ち、手繰ればふんわりと香ばしさが広がる。八王子ヘルシーメニュー認定のみぞれそばは、温かなもり汁に7種類の野菜が入り、相性抜群。そば前などすべての品に丁寧な仕事ぶりがうかがえる。丼とのお得なランチメニューセットも。
『手打そば 山泉』店舗詳細
『越後そば 弥彦』つるつるシコシコのハーモニー[八王子]
錦鯉の泳ぐ水路に水車が回る古民家。八王子にあって越後名物のへぎそばが味わえる。つなぎに小麦粉ではなく布のり(海草)を使用し、「へぎ」という器に盛る。ツルツルとした喉ごしと、コシのあるしっかりとした食感が楽しい。油分を大幅にカットする特別なフライヤーで揚げた天ぷらも自慢。見た目もびっくりの、名物「まるごとしめじ天」は芯までサクサクで、へぎそばとのマッチングが絶妙だ。
『越後そば 弥彦』店舗詳細
『季節料理と蕎麦の店 やお庵』香ばしいくるみだれで一献[八王子]
店名は実家が八百屋だったことに由来。いわゆるそば居酒屋で夜の営業のみだが、午前中から数々の品をみっちり仕込んでいる。のど越しツルツルの手打ち粗挽き二八そばは、北海道産と茨城産のブレンド。角がきりっとした細めの麺は香りも豊かだ。信州立科の無添加醤油と3年熟成のかつお節で合わせたつゆで手繰る。季節の料理と地酒は店主奥様の地元・信州がメイン。滋味あふれたそば前にお酒がついつい進む。
『季節料理と蕎麦の店 やお庵』店舗詳細
【山そばも外せない】
『蕎麦座髙尾山 髙橋家』ねばりととろみが絶妙[高尾山口]
高尾山ケーブルカー駅が目の前。古くは旅籠だった、創業天保年間の老舗。名物はもちろんとろろそばだ。そばはとろろ芋と上質粉で練られ、高尾山の湧水でさらす。まさにツルツルののど越し。とろろは大和芋と長芋を合わせ、ねばりととろみが絶妙だ。また、セルフの刻み海苔はとろろのためにある!と再確認できるベストな組み合わせ。最後にそば湯を注いで満腹完成と相成る。
『蕎麦座髙尾山 髙橋家』店舗詳細
『栄茶屋』野性味あふれる自然薯パワー[高尾山口]
高尾山の表参道に軒を連ねる。こちらは自然薯(じねんじょ)そばがウリだ。自然薯は直火でヒゲを焼いて取り除いた後に皮ごとすっているので栄養満点! ちょっと野性味のある香りがたまらない。そばは会津や北海道産を二八で。とにかく自然薯は粘り気が強いので、恥ずかしがらず徹底的に混ぜてズルっと手繰ろう。麦飯も締めに欠かせない。また、川魚も名物。夏はアユ、それ以外はイワナで一杯いける。
『栄茶屋』店舗詳細
取材・文=工藤博康 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2023年11月号より