錦糸町駅から徒歩約4分。どこか懐かしい和の佇まい
『熊本Dining Kitchen 馬刺し 居酒屋』があるのは、錦糸町駅南口から徒歩約4分に位置するマンションの一階。立て看板近くの角を曲がると、日本家屋を思わせる外観の居酒屋が見えてくる。
のれんをくぐると、カウンター席と座敷を備えた店内に漂うのは、どこか懐かしい穏やかな雰囲気。鏡でおおわれた座敷の壁が照明を反射し、訪れた人を晴れやかな気分にしてくれる。
店内には、至る所に熊本県のマスコットキャラクター「くまモン」が。ふきんや地酒のボトルといった市販の商品だけでなく、手書きのメニューにも描かれていた。
店主は熊本県の水前寺出身。提供する食事には、店主の思いが込められた熊本由来の料理が並んでいる。
新鮮な馬肉は熊本直送。店主こだわりの冷酒はワイングラスで
店名にも含まれている自慢の馬刺しには、熊本直送の新鮮な馬肉を使用。
店主おすすめの4点プレート(2〜3人用)4400円には、ほどよくサシが入った霜降り肉のほか、希少部位であるコウネ(たてがみ)とフタエゴ(お腹の肉)、熊本名物のからし蓮根が盛られている。コリコリとした食感のフタエゴは、脂身と赤身が美しく分かれており、脂身はほのかに甘く、ゆっくり口の中で溶けていき、噛むたびに上品な甘みが広がる。
やさしい甘さの熊本の醤油とあわせると、赤身の繊細な風味が一層強く感じられた。鮮やかな赤色の霜降り肉からは、肉の旨味がダイレクトに伝わってくる。本場のからし蓮根は辛みが強く、馬肉に負けないパンチのある味わいと香りを楽しめた。
山うに豆腐(パン付き)700円は、味噌に漬けて6カ月間寝かせた豆腐を使ったメニュー。
口に入れた瞬間に、豊かな香りが鼻を抜けていく。熟成によって大豆の風味が引き立てられており、まろやかなコクと甘みを楽しめる。柔らかなパンや付け合わせのキュウリとの相性も良く、酒の肴にぴったりのひと品だ。
『熊本Dining Kitchen 馬刺し 居酒屋』に行った際には、料理に加えて、冷酒も味わいたいところ。
店主が自ら酒屋に出向いて選び、時期によって異なる日本各地の銘柄の酒を提供している。冷蔵クーラーの中には、店主こだわりの日本酒が並ぶ。よく冷えた日本酒は、ワイングラスに注ぐのが同店流。
変わった体験を提供したい、という店主の計らいから生まれたスタイルだ。洒落た雰囲気を感じつつ、ゆっくりと銘酒を味わおう。
昭和31年創業。錦糸町で三代続く老舗居酒屋
『熊本Dining Kitchen 馬刺し 居酒屋』が創業したのは昭和31年(1956)。創業時から現在の場所に店を構えている。
現店主の山本みねおさんは三代目。山本さんのお姉様である初代店主が、フランス映画のタイトルから店を「居酒屋」と名付け、後に店の名物「馬刺し」が加わって今の店名に至ったそうだ。
店主が制作しているメニュー表は、イラスト付きで温かみがあり、見ているだけで思わず笑顔に。デザイナーの経験を活かし、さまざまな手段で多くの人を楽しませている。
名物の馬刺しはもちろんのこと、熊本の郷土料理やこだわりの冷酒も楽しめる『熊本Dining Kitchen 馬刺し 居酒屋』。店に飾られた笑顔の客と店主の写真からは、長い歴史をもつ同店が結ぶ人と人の縁が感じられた。
都会にいながら、熊本につながる老舗居酒屋。愛される理由は、本場直送の美味しい料理だけでなく、店主や店の雰囲気にもあるのだろう。
取材・文・撮影=てらこ