場所の魅力を活かしたカフェ
三鷹駅南口から徒歩3分の場所で、約60年この街を見守り続ける三鷹センタービル。地下1階から2階にスーパーや飲食チェーン店などが入るこのビルの3階で、『319』は営業を行う。1階出入口の脇から伸びる階段を上り、3階フロアに足を踏み入れると、一気に集合住宅の様相に変わる。ずらりと並ぶドアの1つから、温かな明かりが漏れている。この一室が今回の目的地だ。
どこか殺風景な印象を醸していた内廊下からは、まるで想像できないような洗練された店内。テーブルやイスをはじめとした家具から装飾品の1つ1つにまで、センスがあふれている。
「一見カフェが入っているか分からないようなところに、想像もしていなかった空間が広がっている……。そのギャップを表現できたらおもしろいなと思ったんです」と伊藤さん。店名も、この店が入る319号室という部屋番号から名付けるほど、この場所の魅力が店づくりに大きな影響を与えたようだ。
SNSでも高い評価を集めている内装は、一から手がけた。フランスやベルギーなど海外各地から取り寄せた家具を中心に、各々が好きなものを集めてつくり上げた店内は、無国籍な雰囲気を表現しているという。
そんな非日常を感じられる空間で楽しめるのが、丁寧に作られた料理とスイーツ、そしてドリンクだ。週末にはモーニングの提供も行っており、それを目当てに訪れるお客さんで朝から賑わいを見せている。
おしゃれな空間でいただく絶品メニュー
今回はグランドメニューの中から、和の料理と焚火ラテをいただいた。運ばれてきた品々は、想像以上に本格派。主役である料理だけでなく、器選びにもこだわりが見て取れる。お重に入っているのは、玄米で作ったおこわ。上には、山椒の実の醤油漬けとしらすがトッピングされている。真ん中には副菜のきんぴらごぼうとメザシ、香物のいぶりがっこ。そして、和風ミネストローネが並ぶ。汁物の具材は日によって替わるといい、この日はカブと鶏団子、油揚げが入っていた。
おこわは、玄米と言われなければ分からないくらいもっちりとした食感に仕上がっている。最近の家庭では見かけなくなったメザシは、おこわと相性抜群。具だくさんの和風ミネストローネは柚子胡椒が隠し味になっていて、ちょっぴり大人な味わいが楽しめる。おしゃれな雰囲気のなかで、ほっとするおいしさの料理がいただけるというのも、ひとつの魅力に感じた。
この店のシグネチャードリンクになりつつある焚火ラテは、こんがり焼けたマシュマロを木の枝に刺して添えた、遊び心あふれる一杯。考案者の伊藤さんによると、「ラテは甘さを控えめにしているので、温かいうちにマシュマロを溶かして飲むのがオススメです」。発酵バターを使ったキャロットケーキや、仕上げにパルミジャーノチーズをスライスするレアチーズケーキなど、素材にこだわったスイーツと一緒にオーダーするお客さんも多いとか。
和と世界各国の料理の2種類から選べるフードメニューは、お客さんのリクエストなども参考にしながら不定期で変わっていくというので楽しみだ。三鷹を訪れたら、またこの魅力あふれる一室へ足を運びたい。
『319』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英