歴史は語らず。ただそこに在る〈近代化無言遺産〉の無常観
まちの片隅に古いものが取り残されているのを見かけることがあります。とくに記念碑や銘板などの刻字が摩耗したり塗料が剥離したりして判読できなくなってしまったものは、存在理由を失った無用の長物でしかありませんが、それでも──いや、それだからこそ──何とも言えない愛おしさや清々しさを感じてしまうのです。近代化遺産とは国家や社会の近代化に貢献した産業・交通・土木に関わる建造物などを保存するために名付けられるものですが、年代物でありながら無言ゆえに誰にも相手にされない孤高の存在を我々は〈近代化無言遺産〉として認定していきたいと思います。