日本橋駅からすぐのアンテナショップ『ここ滋賀』
ここが『ここ滋賀』である。見よ、看板に琵琶湖を掲げている。チーバくんのようにキャラクターにするならまだしも、そのまま琵琶湖の形。入り口には名産の信楽焼(しがらきやき)のたぬきがドアマンのごとく佇んでいる。確信する、滋賀県は琵琶湖帝国なのだ。
県産食材の滋を感じる『日本橋 滋乃味(じのみ)』
1階の物販スペースを抜けて、2階のレストラン『日本橋 滋乃味』へ。普段はランチやディナーに、近江牛の炙り焼きや鮒寿司などの県産食材を使用した料理が食べられるお店で、滋味深い滋賀の味が味わえる。今回は、滋賀県にあるイタリアン『ヴィーテ』が手がけるスペシャルイベント「滋賀のワインとBIWAKOイタリアン」へお邪魔した。
ヒトミワイナリーの爽やかなCaribou 2021 スパークリングで乾杯し、スジエビを使った濃厚なポタージュには、酸味や旨みの強い醸し発酵のデラウェアガール 2020を合わせる。冒頭からテンポよくワインが運ばれご機嫌。隣のテーブルも同じ気持ちだったようで非常に盛り上がっていた。
続いて、氷魚の釜揚げ、小鮎のオリーブオイル煮。鮎の稚魚である氷魚も小鮎も琵琶湖の恵み。ここでも、湖魚のほろ苦さにあうワインが注がれ、気分はさながら竜宮城に来た浦島である。
パスタの上に乗っているのは、ゴリというそうだ。ヨシノボリというハゼの仲間の小魚で、ホワッっとやわらかな湖の風味がする。その後も、高級魚のビワマスのマントヴァ風、純米大吟醸 道灌のシャーベットと続き、滋賀県のうまいもん責め。あっという間の1時間半だった。こうしたイベントは不定期で開催しているようなので、こまめにチェックして店を訪ねたい。
さて、知ったからには滋賀県のうまいもんを買って帰らんわけにはいかん!
うまいもんが買える『ここ滋賀』1階へ
1階は滋賀県の名産品を集めた物販スペースに、地酒とおつまみが楽しめるバーが併設している。信楽焼のたぬきは、あちらこちらにいて忍者の格好をしたものまでいる。ちょっと可愛いので、目が合うと買って帰りそうになるので要注意。今回も1000円の旅セットを作っていく。
予算1000円!旅とは
我が家の電子レンジが壊れたことにはじまる。旅行に行けるその日まで残そうと決めていたお金が最新家電になってしまった。そのショックと出かけられないストレスが沼の化身になって現れて、私を飲み込む。節約と旅を両立できる場所を求めて、行き着いた先がアンテナショップだった。
難しいことはない。1000円ポッキリでご当地を堪能する品を買う。
・予算1000円
・予算内ならなにを買ってもOK(取材経費)
・オーバーしたら、自腹
これだけだ。
布教活動がすごい。琵琶湖がすらすら描ける、びわこテンプレートである。琵琶湖王国に住む人は、おそらくノールックで描ける。この商品はきっと移住者向けなのだろう。
とび太くんまで、すらすら描きたい滋賀県民。飛び出しを防いで交通安全を守る、飛び出し坊やは滋賀県発祥。とび太くんは滋賀県が輩出した有名人のひとりなのだ。独特の手足のポージングもすらすら描けるようになるべきだ。
この日はサラダパンはなかった。サラダパンとは、たくあんとマヨネーズをコッペパンにサンドした、県民に絶大な人気を誇るローカルパンのことだ。毎月第1、3の金曜日・土曜日で入荷するのだが、その日はオープン前から待ち構えているお客様もいるのだそう。売り切れ必至なので、サラダパンを食べてみたい方は狙いうちで来店することをオススメする。
冷蔵・冷凍コーナーにはお目当の湖魚。ビワマスも鮎もいいけど、今回のイベントで食べられなかった鮒寿司も気になる。
鮒寿司とは、寿司の原型ともいわれる熟れ(なれ)寿司だ。琵琶湖で獲れる二ゴロブナを米で漬けていて、酸味とコク深い旨みがあるのだ。しかし、いつも県の名産品で1000円セットを作っているわたくしとしてはやや予算オーバーだ。
ニゴロブナと同じ琵琶湖の固有種のホンモロコを丸一匹使用した、だし醤油“もろこ隠れ”もうまそうだ。味見しなくてもわかる。これは、日本酒とグイグイイケるやつだ。
そのほかにも、近江牛に……
日本酒など、名産品をたっぷり吟味した。
お会計ののち、滋賀県の英雄である西川貴教さんに一礼して、店を後にした。
さて、今回の1000円セットは?
私の滋賀県1000円セット
チーズふなずし 540円
チオタミンD 忍 200円
近江の茶 324円
しめて、1064円!念願の鮒寿司も買えたぞ。
滋賀県は実はお茶の名産地。同じくお茶の名産地である京都のお隣で、気候もお茶の栽培に適しているのだそう。焼酎を加えて緑茶ハイにして、チーズをはさんでスライスしたチーズふなずしをつまみに一杯はじめよう。
甲賀の忍者が描かれた栄養ドリンクがお守りのかわりだ。
しばらくして、チーズふなずしをワインと合わせたくなった。『滋乃味』で覚えたペアリングに味をしめたのだ。すっきりドライな白ワインと、鮒寿司の酸味がよく合う。気がついたら、鼻歌交じりで飲んでいた。すぐにハーフボトルが空いてしまう。
1000円オーバー! はみ出し購入品
1000円セットに収められずに思わず手に取ったのは、赤こんにゃくと小あゆのオイル漬け。
赤こんにゃくは近江八幡市の名物で、着色料ではなく三二酸化鉄で赤く染められている。完全に見た目が気になって購入を決めた。由来は諸説あり、派手好きの織田信長が発案したともいわれているそうだ。小あゆは「絶対に自宅でも湖魚にワインを合わせる」と心に誓って購入した。
赤こんにゃくは、甘辛く味付けしてあってお酒にもぴったり。小あゆは香りも良くやわらかで、ほろ苦く、ワインに合うのはいうまでもない。
湖の恵みは酒に合う
『ここ滋賀』を訪ねて、すっかり湖魚と酒のペアリングのトリコになってしまった。チーズふなずしは初心者もチャレンジしやすいマイルドな味わいだったので、次はぜひ本格的な鮒寿司も食べてみたい。
今度、滋賀県民に「琵琶湖の水止めたろか」といわれたら、「鮎と鮒寿司のためなら、いいよ」と返すだろう。
※3月22日より一時休館、2022年4月29日(金)にリニューアルオープン予定。
取材・文・撮影=福井晶