【コースガイド】
最高地点 : 標高329.1m(鋸山)
歩行時間 : 4時間20分
歩行距離 : 約6.5 ㎞
体力度 : ★☆☆
難易度 : ★☆☆
車力道は未舗装の登山道なのでハイキングシューズで臨もう。切り通し跡分岐から展望台は急勾配。その先の山頂までは少し体力がいるので、省略してもOK。浜金谷駅や日本寺境内は自動販売機あり。
アクセス
[行き] JR・地下鉄東京駅からJR総武快速線で約40分の千葉駅乗り換え、JR内房線で約1時間25分の浜金谷駅下車。
[帰り] JR浜金谷駅からJR内房線で約30分の君津駅乗り換え、約1時間35分の東京駅下車。
快晴時は富士山まで遠望できる展望台
富津館山道路の下をくぐり、森へと入ると、石畳のような道が現れた。これは、鋸山から切り出した石をネコ車 (大八車のような荷車) で運ぶ際に使った車力道(しゃりきみち)。運び手は主に女性で、直方体に切り出した80㎏の石を一度に三本も運んだ。道に残る轍(わだち)の跡はその重さの証し。轍に汗を落としながら、踏ん張る女たちの姿を想像する。
どんどん高度を上げると、木々の合間に石切り場の跡が見えた。いったん、石切り場方面から離れ、展望台と鋸山山頂へ進路を取る。コース内最大の急勾配、胸突きの階段を上りきると、展望台から金谷港や三浦半島が! 南西に見えるは伊豆大島か。
“ラピュタの壁”を経て、日本寺境内へ
踵(きびす)を返し、石切り場の真下へ。ツルハシで大量の石が切り出された岩壁は、階段状の空間が奥へ続く。荘厳な雰囲気は山の神の住む神殿のよう。父親が1985年まで採石を続けた石工の元締めだった鈴木裕士(ひろし)さん曰く
「階段状なのは、奥へ斜めに沈んでいく良質な石の地層を追って掘ったため。切り取った跡の造形美に石工の職人魂を感じるでしょう? 2月9日は山神(やまんがみ)の日といい、山に入らず、山に感謝する日もあったんです」。
最大垂直面96mもの石切り場“ラピュタの壁”を経て、日本寺境内へ。ここからはロープウェーでやってきた観光客と合流し、登山道から観光地の空気に変わる。ただ、石切り場跡に彫られた百尺観音や、その上にテラスのような形で岩壁が残った地獄のぞきなど、境内の名所にも採石との深い結びつきを感じられた。
【山麓食堂】 漁師めし はまべ
ザクザク衣の奥に忍ぶふわふわアジ
はまべ定食の皿に鎮座するのは、金谷漁港に揚がった大アジのフライ。鋸山のギザギザ尾根のような衣にかぶりつけば、三枚おろしの大ぶりな身から旨味がジュワ~。ソースやタルタルも合うけど、新鮮なアジだから醤油も抜群。これで、ご飯がワシワシ進む。返す刀で脂ののったシマアジ、プリプリ食感が鮮度を物語るアジの刺し身を食べれば、茶碗はすぐ空に。すみません、ご飯お代わり!
『 漁師めし はまべ』店舗詳細
【山麓温泉】 KANAYA STATION
老舗旅館が新たな情報発信基地に
1970年代創業の温泉宿をリノベーション。金谷や鋸山の魅力を発信する観光案内所と、日帰り入浴も受け付ける宿泊施設として生まれ変わった。泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で(2021年4月から違う泉質に変更予定)保温効果が高いほか、肌つるつるになる美肌の湯と評判! 入浴後は、地元ロースタリー焙煎のコーヒー・ノコギリマウンテン450円を飲めるカフェスペースでくつろぎたい。
『KANAYA STATION』店舗詳細
取材・文=鈴木健太 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2021年3月号より