地粉文化を受け継ぐ二人三脚うどん『さかえ』[久米川]
「昔から家庭で出された普通のうどんですよ」と、女将の海老沢れい子さん。小麦粉を東村山の農家から仕入れ、手打ち・手切りにこだわるのが普通だなんて! 麺の頂には耳(うどんを切る際に出る端の部分)、自家栽培や親戚農家の野菜をゆでる糧(かて)と、これぞ由緒正しき武蔵野うどんの姿。みずみずしい麺をすすれば、舌で跳ねるコシともっちり感、立ち上る地粉の香りに目尻が垂れる。ご主人の重夫さんいわく「妻のうどんは日々まかないで食べますが飽きません」。
『さかえ』店舗詳細
/アクセス:西武鉄道新宿線久米川駅から徒歩6分
若き店主が目指すのは喉越しと余韻『手打ちそば しゅう』[東村山]
光武脩之輔(みつたけ しゅうのすけ)さんは谷保の名店『きょうや』で修業し、2022年夏独立。「そば粉と小麦粉の比率は8.5対1.5。喉越しと香りのバランスを考えました」。少し緑がかった中太のそばを手繰れば、心地よいコシのあとに北海道摩周産ソバの風味が余韻を残す。つゆは本枯れ節のみで出汁を取るため、凝縮された旨味が次の一口を誘う。「ここは前店舗も常連の多かったそば屋。『しゅう』も地域に愛される店にしていきたいです」。
『手打ちそば しゅう』店舗詳細
魚介が主役、日本人の琴線に触れる一杯『つるが』[新秋津]
オープンは2020年。「秋津は豚骨を押し出したこってり系の店が多かったので、魚介を利かした和風のスープを意識しました」と矢作一久さん。まず立ち上る煮干しの力強い風味、サバ・宗田節の慣れ親しんだお出汁感にほっとする。スープのコクを支える鶏ガラ・豚のゲンコツとの塩梅も絶妙だ。麺は地元の製麺所『あさひや』のストレート麺。「スープとよく絡むよう、開業半年後に中太から中細に変更しました!」。
『つるが』店舗詳細
地元で四半世紀愛される実直麺『ラーメン 味六』[久米川]
東村山でこつこつと26年。先代から不変の麺は稲城の『中西食品』のもの。「うちのスープには、この卵入りの縮れ麺じゃないと」と佐藤信二さん。2代目が大切にするスープは煮干しやカツオ、昆布、モミジなどをじっくり煮込んでおり、透明度が高い。一口すすればじんわりと旨味が広がり、三世代で通う客がいるのも納得。ふわふわで甘辛い豚ひき肉や、そのひき肉のタレで味付けしたゆで卵など、具にも個性あり。
『ラーメン 味六』店舗詳細
地元の麺好きが沸いた、ソウルフードis Back!『すぱいす』[東村山]
半世紀前、本町界隈は食事処が少なかった。そこで、「栄養が取れて、腹持ちのいいものを」と先代によって考案されたのが、豚ロースの唐揚げをのせたちゃんぽんだ。道路拡幅工事で2021年前に閉店し、いったん姿を消したが、2022年同じ本町で復活。「かつて仕入れていた地元製麺所は閉業してしまったので、蒲田の『菅野製麺所』に特注。0.1㎜単位で調整を重ね、親父の麺に近づけました」と2代目。四角い極太麺とたっぷりの野菜が、地元民の胃袋を再びキャッチ!
『すぱいす』店舗詳細
取材・文=鈴木健太 撮影=井上洋平
『散歩の達人』2023年3月号より