地粉文化を受け継ぐ二人三脚うどん『さかえ』[久米川]

普通盛り 天ぷら付き 肉汁850円(休日価格)。天ぷらは旬の野菜のかき揚げなど3品ほど。肉汁変更は無料。平日は各うどん50円引きで提供。
普通盛り 天ぷら付き 肉汁850円(休日価格)。天ぷらは旬の野菜のかき揚げなど3品ほど。肉汁変更は無料。平日は各うどん50円引きで提供。

「昔から家庭で出された普通のうどんですよ」と、女将の海老沢れい子さん。小麦粉を東村山の農家から仕入れ、手打ち・手切りにこだわるのが普通だなんて! 麺の頂には耳(うどんを切る際に出る端の部分)、自家栽培や親戚農家の野菜をゆでる糧(かて)と、これぞ由緒正しき武蔵野うどんの姿。みずみずしい麺をすすれば、舌で跳ねるコシともっちり感、立ち上る地粉の香りに目尻が垂れる。ご主人の重夫さんいわく「妻のうどんは日々まかないで食べますが飽きません」。

塩味控えめのつゆなどは、重夫さんが試食し味を助言。夫婦二人三脚で、今の味わいに。
塩味控えめのつゆなどは、重夫さんが試食し味を助言。夫婦二人三脚で、今の味わいに。
自宅で2021年に開業。
自宅で2021年に開業。
麺打ち歴30年以上のれい子さん。「小盛りや大盛りも用意してお待ちしています」
麺打ち歴30年以上のれい子さん。「小盛りや大盛りも用意してお待ちしています」

『さかえ』店舗詳細

住所:東京都東村山市栄町2-14-5 /営業時間:11:30~14:00(麺が無くなり次第終了)/定休日:月・火・金
/アクセス:西武鉄道新宿線久米川駅から徒歩6分

若き店主が目指すのは喉越しと余韻『手打ちそば しゅう』[東村山]

海老天せいろ1550円。天ぷらは、東久留米の市場で仕入れた旬の野菜などを揚げる。
海老天せいろ1550円。天ぷらは、東久留米の市場で仕入れた旬の野菜などを揚げる。

光武脩之輔(みつたけ しゅうのすけ)さんは谷保の名店『きょうや』で修業し、2022年夏独立。「そば粉と小麦粉の比率は8.5対1.5。喉越しと香りのバランスを考えました」。少し緑がかった中太のそばを手繰れば、心地よいコシのあとに北海道摩周産ソバの風味が余韻を残す。つゆは本枯れ節のみで出汁を取るため、凝縮された旨味が次の一口を誘う。「ここは前店舗も常連の多かったそば屋。『しゅう』も地域に愛される店にしていきたいです」。

左官仕上げの壁が印象的。全14席。
左官仕上げの壁が印象的。全14席。
35歳で独立。「喉越しを左右する水回しは特に気をつかいます」。
35歳で独立。「喉越しを左右する水回しは特に気をつかいます」。
蔵王深山竹炭水鴨の脂が旨い鴨南蛮1630円。
蔵王深山竹炭水鴨の脂が旨い鴨南蛮1630円。

『手打ちそば しゅう』店舗詳細

住所:東京都東村山市本町2-1-14 武井ビル1F/営業時間:11:00~14:00LO・17:00~20:00LO/定休日:火/アクセス:西武鉄道各線東村山駅から徒歩3分

魚介が主役、日本人の琴線に触れる一杯『つるが』[新秋津]

しょうゆラーメン800円。『あさひや』の麺は喉越しがよくもちもち。カエシは醤油3種をブレンド。バラ肉を煮込むチャーシューはほろほろ食感。つけめんや激辛ラーメン各900円も用意。
しょうゆラーメン800円。『あさひや』の麺は喉越しがよくもちもち。カエシは醤油3種をブレンド。バラ肉を煮込むチャーシューはほろほろ食感。つけめんや激辛ラーメン各900円も用意。

オープンは2020年。「秋津は豚骨を押し出したこってり系の店が多かったので、魚介を利かした和風のスープを意識しました」と矢作一久さん。まず立ち上る煮干しの力強い風味、サバ・宗田節の慣れ親しんだお出汁感にほっとする。スープのコクを支える鶏ガラ・豚のゲンコツとの塩梅も絶妙だ。麺は地元の製麺所『あさひや』のストレート麺。「スープとよく絡むよう、開業半年後に中太から中細に変更しました!」。

この道十数年の店主。「スープを飲み干すお客さんも多いですよ」
この道十数年の店主。「スープを飲み干すお客さんも多いですよ」
清潔感のある店内は全12席。
清潔感のある店内は全12席。

『つるが』店舗詳細

住所:東京都東村山市秋津町5-24-1 /営業時間:11:30~14:00LO・18:00~21:30LO/定休日:火/アクセス:JR武蔵野線新秋津駅から徒歩3分

地元で四半世紀愛される実直麺『ラーメン 味六』[久米川]

ワンタンメン1000円。鶏油(チーユ)が覆うスープ。生地から作るワンタンは肉厚でむちむち。ほかに塩ラーメン750円や味噌ラーメン850円も。
ワンタンメン1000円。鶏油(チーユ)が覆うスープ。生地から作るワンタンは肉厚でむちむち。ほかに塩ラーメン750円や味噌ラーメン850円も。

東村山でこつこつと26年。先代から不変の麺は稲城の『中西食品』のもの。「うちのスープには、この卵入りの縮れ麺じゃないと」と佐藤信二さん。2代目が大切にするスープは煮干しやカツオ、昆布、モミジなどをじっくり煮込んでおり、透明度が高い。一口すすればじんわりと旨味が広がり、三世代で通う客がいるのも納得。ふわふわで甘辛い豚ひき肉や、そのひき肉のタレで味付けしたゆで卵など、具にも個性あり。

スープと絡む細めの縮れ麺。
スープと絡む細めの縮れ麺。
山形出身の寡黙な店主。地元から仕入れる米も旨いと評判。「ハーフ餃子などがセットのお得な定食もはじめました」
山形出身の寡黙な店主。地元から仕入れる米も旨いと評判。「ハーフ餃子などがセットのお得な定食もはじめました」

『ラーメン 味六』店舗詳細

住所:東京都東村山市本町1-4-5 サンコーポ久米川1F/営業時間:11:00~20:00/定休日:水/アクセス:西武鉄道新宿線久米川駅から徒歩9分

地元の麺好きが沸いた、ソウルフードis Back!『すぱいす』[東村山]

特製ちゃんぽん900円。あっさり味のスープに唐揚げの脂、辛いタレ(中央)が溶け込むことで、コクとパンチが加わる。
特製ちゃんぽん900円。あっさり味のスープに唐揚げの脂、辛いタレ(中央)が溶け込むことで、コクとパンチが加わる。

半世紀前、本町界隈は食事処が少なかった。そこで、「栄養が取れて、腹持ちのいいものを」と先代によって考案されたのが、豚ロースの唐揚げをのせたちゃんぽんだ。道路拡幅工事で2021年前に閉店し、いったん姿を消したが、2022年同じ本町で復活。「かつて仕入れていた地元製麺所は閉業してしまったので、蒲田の『菅野製麺所』に特注。0.1㎜単位で調整を重ね、親父の麺に近づけました」と2代目。四角い極太麺とたっぷりの野菜が、地元民の胃袋を再びキャッチ!

2階にはテーブル席も。
2階にはテーブル席も。
低加水ながらモチプリ感のある特注麺。
低加水ながらモチプリ感のある特注麺。
気さくな2代目の嶋田将英さん・裕子さん夫妻。「野菜はそのまま麺半分のハーフちゃんぽんも!」
気さくな2代目の嶋田将英さん・裕子さん夫妻。「野菜はそのまま麺半分のハーフちゃんぽんも!」

『すぱいす』店舗詳細

住所:東京都東村山市本町4-6-13/営業時間:11:00~21:00(スープが無くなり次第終了)/定休日:不定/アクセス:西武鉄道各線東村山駅から徒歩12分

取材・文=鈴木健太 撮影=井上洋平
『散歩の達人』2023年3月号より

街を歩いていると、多くの“東村山産”に遭遇。映画の舞台にもなった八国山緑地は自然豊かで大人も童心に帰る。昭和50年代、テレビで志村けんが歌う「ひがっしむらやぁま〜」で一躍有名になった街は、実にのどかだった。
柔らかな光の中で温かいお茶をいただいて、心も体もポッカポカに。所沢・清瀬・東久留米は、空が広い郊外ならではの喫茶店が多く、窓も印象的。光差し込むのどかな時間が流れている。店の人たちの人柄も温かく、合わせてほっこり癒やされるに違いない。