錦糸町『北斎茶房』。生苺ミルクの生熟かき氷は生いちごの香りが濃い!
JR・地下鉄錦糸町駅から徒歩約10分。北斎通り沿いにある2003年創業の甘味処『北斎茶房』。周辺は葛飾北斎の生誕地とされ、店の名もそれにちなむ。元々は長屋の倉庫だった店舗は天井が高く広々としている。
同店を代表する味といえば、稀少で高価な兵庫県丹波市春日産の丹波大納言、春日を使った粒餡だ。大納言あんみつは、艶やかで風味豊かなこの粒餡と、徳之島産黒砂糖の黒蜜をストレートに楽しめる逸品。
夏の名物は、毎朝氷屋さんから届く氷で作る、約12種類のかき氷。一番人気は生熟かき氷生苺ミルクだ。長野の奥田農園の夏いちごを惜しげもなく使い、ピュレにする際加えるのは砂糖だけ。水は一切使わないので、いちごの味が濃厚だ。練乳のミルキーなコクがいちごの甘酸っぱさを引き立てる。底にもいちごのピュレが入っているので、最後の一口まで夏いちごの味を楽しめる。
あんみつと同じ黒蜜を使う徳之島産黒蜜きなこのかき氷も見逃せない。鹿児島県の奄美群島の離島の一つ、徳之島産の黒砂糖から作る黒蜜は、さらりとしてアクを感じず、それでいてコクがある。甘く香ばしいきなこと好相性だ。
湯島『みつばち』。売れ残った煮小豆から名物誕生!
明治42年(1909)に氷業「嶋田屋」として創業した甘味処『みつばち』は、地下鉄湯島駅から徒歩2分ほどの場所にある。同店の名物小倉アイスは、大正4年(1915)に冷夏で売れ残ったかき氷用の煮小豆から偶然誕生したものだ。通常版のほか、小豆の量を増やした濃厚な小倉アイスSPもある。どちらも使うのは小豆と塩と砂糖だけ。乳製品不使用なのに驚くほど口当たり滑らかだ。
小倉アイスが誕生するきっかけとなった氷あずきも今でも食べられる。小豆の上に削り氷がたっぷり乗りインパクト抜群。蜜などは添えられておらず小豆と氷だけで食べるさっぱりとしたかき氷だ。見た目も名前もかわいいかき氷クリームミルフルも見逃せない。アイスクリームと練乳(ミルク)、フルーツを使うところからのネーミングで、みかんと黄桃、白桃、パイナップルの上にたっぷりの氷を削り、練乳をかけてバニラアイスクリームをポコンとのせる。アクセントは真っ赤なさくらんぼだ。最初はミルク感があり濃厚で、〆はフルーツでさっぱり!
麻布十番『麻布野菜菓子』。野菜でつくるかき氷!
地下鉄麻布十番駅から徒歩1分、麻布通り沿いにある野菜菓子の店『麻布野菜菓子』。2012年にグラフィックデザイナーの花崎年秀さんが南麻布の自宅兼事務所のガレージで物販を始め、2014年に現在地へ移転してカフェを併設した。
看板商品は、野菜餡のどら焼き。人気の高い南瓜餡のどら焼きは、ふんわりとした生地で北海道産のえびす南瓜と白餡、生クリームを合わせ、ほんのりとシナモンを利かせた滑らかな餡を挟む。南瓜の香りと甘みがしっかり感じられる餡だ。
カフェの夏の人気メニューは野菜のかき氷。野菜は随時変わるが、花崎さんが「野菜のかき氷の魅力が一番伝わる」というセロリのかき氷は、ふんわりとした氷にセロリのソースと練乳、クリームチーズソース、それからセロリのコンポートを乗せたもの。砂糖と白ワイン、レモンで煮たセロリのジャムをペーストにしたソースは、セロリの爽快な香りと、花崎さんが「スパイシー」と表現する独特の香味が印象的だ。柔らかい中にも歯応えのあるコンポートの食感は、どこかパイナップルを思わせる。
『京はやしや』の新ブランド『日比谷 林屋新兵衛』で抹茶スイーツに舌鼓!
抹茶スイーツの流行を牽引してきた京都の茶カフェ『京はやしや』の新業態の茶カフェ『日比谷 林屋新兵衛』。2015年に銀座に開店し、2018年3月に東京ミッドタウン日比谷の開業時に同施設内に移転オープンした。店舗名の『林屋新兵衛』は創業者の名で、2021年に樽栄総研(たるえみちあき)社長が就任するまで、初代から6代に渡り代々林屋一族が店主として林屋新兵衛の名を受け継いできた。開放感のあるカウンター席では、既存店以上に上質な素材を使い、抹茶の配合量を増やすなどした贅沢なスイーツを目の前で作ってくれる。
一番人気は抹茶わらび餅あんみつ。プレーンの寒天を器の底に敷き詰め、柔らかい抹茶ゼリー、みずみずしい餡を重ねる。白玉団子、濃厚な抹茶アイス、最後に抹茶きな粉をたっぷりまぶした抹茶わらび餅をのせて完成だ。京都の老舗製餡所『中村製餡所』に特注している餡と黒蜜以外は、全て毎日店内で仕込む自家製。甘味に合わせるよりすぐりのお茶を選ぶのも楽しみのひとつだ。夏季限定の茶の風味豊かなかき氷も見逃せない。
亀戸『船橋屋』。江戸時代に誕生した発酵食品!
亀戸天神前に本店を構える『船橋屋』の創業は文化2年(1805)。乳酸発酵させた小麦でんぷんで作る「くず餅」が名物だ。本店には芥川龍之介、永井荷風、吉川英治ら文豪がよく訪れたという。本店内に飾られる『船橋屋』の看板は、吉川英治の手によるものだ。
小麦粉を水でこねた生地を水で洗うと、小麦でんぷんとグルテンに分かれる。グルテンは精進料理の貴重なタンパク源、麩(ふ)の原料だ。一方の小麦でんぷんが、くず餅の原料。ヒノキの樽で15カ月間乳酸発酵させた小麦でんぷんを数日かけて水洗いして湯がき、木枠へ流して蒸し上げて、台形にカットしたらくず餅の完成だ。
台形なのには理由があり、1つは食べやすい大きさにカットするときに台形だと無駄が出ないから。もう1つは皿に盛ったときに台形だとスプーンですくいやすく、黒蜜ときな粉がより絡みやすいからだ。くず餅は箸では食べない。黒蜜ときな粉がつるつる滑って逃げてしまうのだ。くず餅にかけるのと同じ黒蜜を使うアイスをはさんだ「最中アイス(黒蜜)」も隠れた人気。さっぱりとしたアイスにコクのある黒蜜がよく合う。
取材・文・撮影=原亜樹子