ニラレバなのか、レバニラなのか?
ニラレバなのかレバニラなのかはよく論争になるところだ。浅草・雷門の『生駒軒』のメニューは「レバいため」とある。いやぁ、町中華は自由だ。とはいえ、ここは「ニラレバ」で話を進めたい。僕は町中華で出されるニラレバが苦手だった。20歳のころ初めて食べたのだが、レバー特有の臭みがダメでほとんど残してしまった。以来、ずっと食べていなかったのだが、雑誌『散歩の達人』で町中華探検隊の連載が始まってから考えが変わった。他の隊員がおいしそうに食べるのを見て僕も箸をつけるのだが、訪れる店では臭みはなく、とてもおいしい味付けがなされていた。最近はニラレバ好きになったのだが、初めて訪れる店で注文する勇気はまだない。(マグロ)
昔は苦手だったんだけど、何度も食べてるうちに慣れてきた。
レバーは今も苦手なんですが、マグロさんが前おっしゃってたように、『トラック野郎』的な世界で憧れのメニュー。自分はあまり頼まないけど、人が頼んでいるとうれしくなります。
自分もずっと苦手でした。でもレバニラ、食べやすいというか、おいしいという意味では今回紹介する浅草『生駒軒』が自分の中では町中華トップですね。今回、『生駒軒』さんに味噌ラーメンで取材をお願いしに行ったら、「これ食べてみて」とレバいためを出されて「オレ、レバーが苦手なんですよ」と言っていただいたら、うまくて! 味噌ラーメンからレバいために変更になりました。
オイスターソースが効いてましたね。『生駒軒』のレバいため。
そうなんですよ。『生駒軒』は濃い味がたまらない。
『生駒軒』さんのレバニラ、美しい!! 角がピンと立ってますね~。レバニラに限っては、味が濃ければ濃いほどうまいという気がします。
味が濃い割にメシがすすむというタイプではなくて、単独でどんどん食べられちゃうのが不思議。
レバニラorニラレバ、呼び方問題はみなさんどう思いますか。中国語だとニラが先にくるらしいですけど、レバニラのほうが語呂がいいから普及したのかな。
ニラがあってこそのものではあるけど主役はレバだからレバニラに一票かなあ。
僕もレバニラ派。
『菜苑』系の「純レバ」というのもありますね。
純レバは下町の居酒屋メニューによくありますね。森下『三徳』とか。
アニメの『天才バカボン』で「レバニラ」という言葉がタイトルに盛り込まれた回があって、そこから広まったそうですね。
なるほどバカボンかぁ、うちの母もバカボンの歌のせいで「お日様が西から昇るとどうしても思ってしまう」と言ってたので、影響力大だったんでしょうねえ。
そうそう、バカボンのパパだから、間違えている説を唱えたくなります。正しくはニラレバだけどバカボンのパパだからレバニラ、みたいな。たぶん、最初にテレビとかで聞いたのが「ニラレバ」だったんで、自分は「レバニラ」には違和感を感じますね。
時代を感じますね、赤塚先生偉大! バカボンに出てくるということは、古い町中華には大体あったんですかね。
気になる町中華ワード「スタミナ」
レバニラ炒めとビールという注文、自分ではしないけどシブいなと思ってたな、20代の頃。
そうそう!それカッコいいですよね~。確かに、どんぶり飯もいいけど単品ビールカッコいいですよね。40代50代くらいの人が、白Tシャツ着て。
定食じゃなくてビールと単品ってのが通っぽくてさ。
ほかのメニューにはほぼ使われないだろうレバーが、レバニラのためだけに温存(冷蔵)されていることが愛おしいです。
あくまで予想だけど、正肉よりもホルモン系のほうが手に入れやすかった戦後の名残もあるんですかね?
そうだと思います。あとレバーは「スタミナがつく」というイメージも強いよね。
中野坂上の『ミッキー飯店』のミッキーライスもスタミナがつくようにって、レバーを入れたと言ってましたね。
そしてまた、客がそれを素直に受け入れるんだ。お、スタミナつけとこうかって。
そうですね、実際、レバーもニラもビタミンAなどが超多いから、夜もガンガン働ける的なことだったのかも?
地味だけどニラのおいしさも大事だと言いたい。チェーン店では紙のようなニラが出ることも。
僕、畑やってるんだけど、ニラは本当にとりたてだと強烈にうまくて、そのことからもニラってレバニラ炒めを下支えするバカボンのママ。言い過ぎか(笑)。
昔はちょっと臭みがあって食べにくいけど、それをガツガツ食える大人がカッコイイみたいなところもあったのですかね。
なるほど! その視点なかったです。かなり衝撃! おいしくて好きと思う人が頼んでるとばかり思ってました。苦いブラックコーヒーを我慢して飲む、みたいな。
名画にも登場するこれぞ昭和の味
バカボン以外にも昭和の作品にはレバニラがよく登場しますよね。
映画『幸福の黄色いハンカチ』で警察官役の渥美清が出前で取っていたのは「レバニラ」だったかも。
はい、渥美清がレバニラ頼んでましたね。
『トラック野郎』では菅原文太が「レバニラにライス大盛り、あと豚汁」と注文してましたっけ。
元気とかたくましいとかの記号的な使われ方ができていた。『トラック野郎』の頃はまさにレバニラ全盛期かもしれない。
「スタミナ焼き」なんて言うメニュー、何が焼かれているかよくわからないけど、魅力的。
逆に若者がやってる店でスタミナ〇〇ってないですね。令和の世に昭和の文化を引き継ぐ町中華ワードだ。
絶やしたくないなあ。そのためにも我々はスタミナメニューを頼まねばなりませんね。
むしろなんでもいい。スタミナと書かれてさえいれば!
なんでもいいんだ!(笑)
ニラレバかレバニラかよく言われるけど、今回の『生駒軒』さんの「レバいため」というメニューでどっちでもいいんじゃないのって思いました(笑)。
そうですね、さらに自由度を1ランク上げられたというか。さすが町中華という感じでした。
それでいいのだ!
まさに、バカボン精神!
『生駒軒』カップルの二人三脚
のれん分けで徐々に数を増やし町中華の一大勢力となったのが「生駒軒」。そこで修業していた小林實さんは、輝子さんとお見合いし独立、浅草に店を開いた。「一人じゃできねえもん」と實さんが話す通り、以来、半世紀近く二人三脚で店を盛り立ててきた。レバいため650円はじめ、歴史ある「生駒軒」の技を味わえる場であると同時に、小林夫妻の温かみや優しさを堪能できる店でもある。
取材・構成=半澤則吉 撮影=山出高士
レバニラは『散歩の達人』連載1回目の下北沢『丸長』以来、連載でも時折食べてきましたね。あれから4年、みなさんレバニラへの思いが変わったように思います。