韓国の若者に人気の韓国伝統菓子を提供するカフェ
2023年6月17日にオープンした『METDORU CAFE』。新大久保駅と西武新宿駅のちょうど真ん中くらいに位置し、周辺に飲食店があるものの大久保通りほどガチャガチャとした雰囲気はない。大久保界隈を散策したあとゆっくり落ち着けそうだ。
「新大久保には素敵なカフェがたくさんありますが、韓国の伝統的なお菓子を堪能できるカフェを体験していただきたくてここにオープンしました」というのはオーナーの韓智愛(ハン・ジアエ)さん。
新大久保を訪れる人たちの多くはもともと韓国の文化やアーティストが好きなはずだけど、このお店に来ればお菓子を通じてもっと韓国が好きになれるかもしれない。
店内では、韓国の伝統菓子と石臼で挽いたコーヒーや抹茶が楽しめる。ちなみに店名の『METDORU』とは、石臼という意味なのだそう。海を隔てて日本のお隣にある韓国。伝統菓子はどんなものなのか楽しみだ。
日本の和菓子にも通じる韓国の懐かしい味に舌鼓
レジ前のメニューを見ると、トレイの上に色とりどりのお菓子が並んでいるものがある。タグァハンサン茶菓子盛り合わせ990円は、韓国の代表的な茶菓子を盛り合わせにしたもの。日本の和菓子みたいにかわいくてキレイだ。「そうですね、日本のお茶菓子によく似ていると思います」と韓さん。
韓国のタグァは(茶菓)は豆や餅米などを使い、昔ながらの製法で作られているという。そんなお菓子には、店名にもなっている石臼で挽いた抹茶ラテ759円を合わせてみよう。
毎朝、抹茶やコーヒーを専用の石臼で挽いて提供している。茶葉を挽きはじめると、ふわっとお茶の香りがしてきた。
タグァハンサン茶菓子盛り合わせと抹茶ミルクがテーブルに運ばれてくると、あんまりのカワイさに「わぁ!」と声が漏れる。まずはあんバターもなかから。
パリッと香ばしいもなかのなかには、よく練られたこしあんに、口の中でじんわりとけるバターが。混ざり合っておいしい。
ハチミツや穀物、餅米をこねて油で揚げたカンジョンは、ゴマやナッツがたっぷり入っていて、もっちりとした食感。持つと軽いが、黒ゴマもクルミもぎゅっと固められているので見た目以上に食べ応えがある。オランダはカンジョンと味が似ているけど、もっと軽い食感で香ばしい。ひとくちサイズのようかんは、日本のものより粘度が高くて甘〜い! だけど、これがお茶にぴったり〜。
韓国の人たちもお菓子をポリポリ&お茶をひとくちゴクリと飲んで、「ああ、幸せだなあ」と感じているに違いない。形も味も日本のお茶菓子と似ているものだけに、おいしさが共有できて、以前よりもっと親近感が湧いてきちゃったなあ。
韓国もレトロブーム。MZ世代に広がる伝統菓子のおいしさ
日本では昭和レトロがブームだ。たとえば、純喫茶やその象徴となるクリームソーダが爆発的な人気になったり、レコードやフィルムカメラも然り。韓さんによれば、韓国でも20〜30代のMZ世代と呼ばれる人たちの間で昭和ブームが巻き起こっているのだとか。
日本のおこしに似たオランダという伝統菓子にドーナツによくあるトッピングをするなど、伝統菓子を現代風にアレンジしたメニューもある。「日本で初登場のメニューです。伝統菓子のヤックァを合わせたり、チョコやアーモンドを乗せたり、全部で9種類あるので、いろいろな味のオランダを味わえますよ」と韓さん。
また、現地・韓国のナウなヤングに人気のバターバーもイチオシ。「アメリカの国民的なおやつですが、最近韓国のカフェで人気のデザートです。抹茶バターバーは、石臼挽きの抹茶を使っていて、より深い抹茶の風味が味わえると思います」。
「ここ数年、本国のMZ世代の人たちは、おばあちゃんの世代が若かった頃の食べ物をはじめ、古きよき時代の文化にハマりだしています。そういう懐かしさを新しいものとして受け入れ、楽しんでいますね。ですから、当店のお菓子も、石臼挽きコーヒーや抹茶なども、きっと日本のみなさんにも喜んでもらえると思っています」。
韓国スイーツといえば行列ができる10円パンやピンス、ワッフルなどさまざまあるが、これからは原点に返ってタグァでしょう。新大久保はどこへ行っても人混みばかりで辟易していた筆者のオアシスを見つけました。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢