アクセス
電車:東武鉄道浅草駅から特急リバティりょうもう号(スカイツリーライン・桐生線)・わたらせ渓谷鐵道で約2時間の大間々駅下車。
車:関越自動車道練馬ICから北関東自動車道などを利用し、太田藪塚ICまで約104km。同ICからみどり市大間々町中心部まで約10km。
あかがね街道の名残
古き街道風情が今も随所で息づく
江戸時代、幕府直轄の足尾銅山で精錬した御用銅(ごようどう)を都へ運ぶ交易路として、街道や宿場が整備された名残が市内各所に点在。「銅街道」「旧銅山街道」との表記も散見される。石畳や趣ある建物、銅蔵、常夜灯など往時の面影に触れれば、束の間タイムスリップした気分に。
●群馬県みどり市東町沢入ほか
岡直三郎商店
木桶仕込・天然醸造にこだわる
天明7年(1787)創業の醤油醸造元で、「日本一しょうゆ」の屋号が目を引く。国産有機濃口しょうゆ500㎖ 926円、国産有機再仕込しょうゆ500㎖ 1234円ほかラインナップは多彩で、料理に合わせた商品が揃う。醤油をベースに数種のスパイスを混ぜた新感覚調味料の日本一スパイス480円も評判上々だ。国登録有形文化財の店舗兼主屋は風情たっぷり。
ながめ余興場
懐かしさを覚える"生きる文化財"
渡良瀬(わたらせ)川を見下ろすながめ公園内に堂々と立つ昭和12年(1937)築の芝居小屋。木造2階建てのレトロな造りで、廻り舞台、花道、棧敷席を備えており、今も歌舞伎、落語、演劇、コンサートなどの公演が行われる。舞台下の奈落は地下資料室として活用。
cafe蔵八
蔵をリノベーションして憩いの場に
店主の新井規夫さんが代々引き継いだ土蔵群を修復し、この地を「蔵人新宇(くらーとあらう)」と命名。そのうち大正5年(1916)築の3号蔵を、ノスタルジックな風情を残しつつ、洗練されたカフェとして活用。前橋市にある『珈琲屋たなか』の自家焙煎豆を使用したコーヒーを手に、しばし喧騒を離れてくつろぎたくなる空間だ。
やぎぱん
住宅地にある家庭的なパン屋さん
自宅の庭に工房を構えた八木潔さん・雅子さん夫妻が営むこぢんまりとしたパン屋。国産小麦と近隣の桐生川源流水、オーガニック素材にこだわる。店頭に並ぶパンは約30種で、その日の種類と焼き上がり時刻は店内のホワイトボードやSNSで確認可能だ。手間をかけた、しっかりとした味わいのパンからは、作り手の実直な人柄が伝わってくる。
岩宿(いわじゅく)博物館
石槍を模した外観が目を引く
1946年、地元の在野研究者・相澤忠洋氏が関東ローム層から発見した石器をはじめ、旧石器時代のものとされる岩宿遺跡発掘の経緯や出土品などを紹介。博物館東側の『岩宿ドーム(史跡岩宿遺跡遺構保護観察施設)』では地層断面標本展示と解説アニメを上映している。
玉子屋やまたか
全商品が保存料不使用・無着色
1977年の創業以来、熟練職人による玉子焼きを扱ってきた経験を生かし、卵のスイーツも製造・販売。“たぶん世界一濃厚なプリン”と銘打った天国のぶたは選りすぐりの卵黄を凝縮した一品で、超が付くほど濃厚。苦みの効いたカラメルとの相性も抜群だ。タルトやシフォンのほか、だしと絶妙な火加減が自慢の玉子焼きも店頭販売している。
小平(おだいら)鍾乳洞
キャンプ場や親水公園、植物園が点在する小平の里内にある。長さ93mと鍾乳洞としては小ぶりだが、曲がりくねった狭い洞内には石筍(じゅん)や稀少なボックスワーク(箱状のカーテン)などもあり、気軽に探検気分を味わえる。
お休み茶屋 響(ひびき)
国道122号沿いに立つ「名水コーヒー」の看板に導かれ、枝道を進んだ先にある素朴な茶屋。玄関を開けると店主が明るく出迎えてくれる。名水コーヒー500円のほか、食事メニューはちぎりっこ900円、田舎煮込みうどん700円、季節の天ぷら500円、味噌おでん300円など。目の前に広がる自然もこの地ならではのごちそうだ。
草木(くさき)湖
山あいに広がる静かな環境の人造湖
ダム高140mの草木ダムにより渡良瀬川をせき止めた南北に長い人造湖で、総貯水容量は6050万㎥。西畔の『富弘美術館』一帯は道の駅に指定され、草木ダム下や東畔には遊歩道が整備されている。カヌーやSUP(スタンドアップパドルボード)の体験ツアーなど水上アクティビティも人気だ。
●群馬県みどり市東町草木
富弘(とみひろ)美術館
作品を前にすると優しい心持ちに
中学校でのクラブ活動の指導中、不慮の事故により頸椎(けいつい)を損傷し、手足の自由を失った旧東村出身の星野富弘氏。口に筆をくわえながら文字を記し、絵を描いた穏やかな作風の詩画作品を集め、展示している。現在は企画展「水温む」を開催中(2022年5月29日まで)。草木湖を望む明るく開放的なカフェも併設。
小中(こなか)大滝・けさかけ橋
思わず足がすくむ奇橋を渡って名瀑へ
袈裟丸山登山口へ向かうアクセス路の途中にあり、滝の落差は96m。駐車場から展望台までは足場の悪い道を240m進むが、途中にあるのが階段式吊り橋のけさかけ橋だ。最大傾斜はなんと44%もあり、谷底へ向けて吸い込まれるように下らなければならない。通行の際は注意を。
●群馬県みどり市東町小中
袈裟丸(けさまる)山
開花期は多くの登山者でにぎわう
市北部、栃木県との県境にあり、多くの花に出合える山として人気が高い。メイン登山口の折場登山口から前袈裟丸山までは片道約5.5km で、コースタイムは3時間10分(前袈裟丸山の先は通行禁止)。5月から6月にかけ、ツツジ科のアカヤシオやシャクナゲなどが登山道を鮮やかに彩る。
●群馬県みどり市東町小中
旅のワンポイント
渓谷の自然に触れられる“関東の耶馬渓”
大間々駅の東側を流れる渡良瀬川一帯は高津戸峡と呼ばれ、渓谷に沿って全長500mの遊歩道が整備。途中、ゴリラ岩などの奇岩も見られる。
乗り放題の一日フリーきっぷは1880円
「わ鐵」の愛称で親しまれるわたらせ渓谷鐵道。自然を間近に感じるトロッコ列車も運行中だ(別途整理券520円、運転日限定、定員制)。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2022年5月号より