親子3代で継ぎ足し続けてきた伝統のだしで煮込む『尾張家』

右から時計まわりにがんも300円、大根200円~、ねぎま400円、ロールキャベツ400円。
右から時計まわりにがんも300円、大根200円~、ねぎま400円、ロールキャベツ400円。

昭和から続くおでんの老舗で、東京のおでんを語る上で欠かせない店。練り物はもちろん、豆腐、ロールキャベツ、ねぎまなど、独自のおでん種も好評だ。関東風おでんは濃口醤油で味付けするが、この店では日高昆布、鰹節、煮干しで出汁を取り、白醤油と薄口醤油で味を調えた関西風。おでんと並ぶ看板料理が刺し身の盛り合わせ。毎朝、豊洲市場から仕入れるだけあり、鮮度も抜群だ。

赤提灯を吊した玄関。敷居が高く感じるが、心配はいらない。
赤提灯を吊した玄関。敷居が高く感じるが、心配はいらない。

『尾張家』店舗詳細

遊び心に富むスペシャルおでんと地酒で勝負『保夜萬歩参』

手前は盛り付けが美しいカニ面1639円、後方左が味付けした煮大根を揚げた揚げ大根319円。
手前は盛り付けが美しいカニ面1639円、後方左が味付けした煮大根を揚げた揚げ大根319円。

割烹仕込みの料理人・村椿さんと燗酒名人・吉永さんのチームワークが抜群。店のコンセプトはおでんと日本酒。焼き茄子、だし巻き玉子、手羽海老真丈(しんじょ)……。一品料理と思いきや、おでん種と聞けば驚く人も多いはず。鶏ガラスープに鰹節と昆布の出汁を合わせ、味付けは白醤油、塩、みりんで行い、上品な味に仕上げている。おでんの枠を越えたスペシャルおでんを味わってみよう。

常時約30銘柄の日本酒を揃え、店内には造り酒屋から贈られた前掛け、半纏(はんてん)、幟などが飾られている。
常時約30銘柄の日本酒を揃え、店内には造り酒屋から贈られた前掛け、半纏(はんてん)、幟などが飾られている。

『保夜萬歩参』店舗詳細

気さくな店主が手作り総菜とおでんでもてなす小粋な料理店『なか川』

手前から時計回りにゆば巻き、タマネギ、百合根、エビ巻き、よもぎ麩で1個100~200円。
手前から時計回りにゆば巻き、タマネギ、百合根、エビ巻き、よもぎ麩で1個100~200円。

気さくで話し好きの店主が一人で切り盛りする店、神田『なか川』。おでんのだしは創業以来、継ぎ足しで使い、関西風に味付ける。さつま揚げ、ばくだん(ゆで卵入りの練り物)、エビ巻きなどの練り物は自家製で、知人の農家から直送される野菜を使った野菜のおでんも味わえる。カウンターに並ぶ手作りの総菜も逸品ぞろい。シメの一品は茶漬け風のかけめしがおすすめ。

カウンターに並んだ総菜、この日は万願寺唐辛子、ハタのあら煮、里芋煮、焼き茄子、揚げムカゴ、マグロ煮など14種類。
カウンターに並んだ総菜、この日は万願寺唐辛子、ハタのあら煮、里芋煮、焼き茄子、揚げムカゴ、マグロ煮など14種類。

『なか川』店舗詳細

静岡県人も足を運ぶ“静岡おでん”がうまい店『福ちゃん』

静岡おでん盛り合わせ(大)550円。牛すじ、黒はんぺんなど7品前後が入る。
静岡おでん盛り合わせ(大)550円。牛すじ、黒はんぺんなど7品前後が入る。

テーブル4卓の小さな店。看板料理は、牛すじのだしを継ぎ足し、濃口醤油で味付けた黒いだしで知られる静岡おでん。牛すじ、なると巻きなど、おでん種も個性的で、仕上げに青のりとだし粉を振りかける。なかでも名物は黒はんぺんで、イワシ、サバなど青魚のすり身にでんぷんと調味料を加え、半月状に成形して茹でたもの。皮や骨もすりつぶすため、灰色になり「黒はんぺん」の名前が付いた。静岡県民のソウルフードでもある。

気っ風の良いひとみママとの会話を楽しみに訪れる常連も多い。
気っ風の良いひとみママとの会話を楽しみに訪れる常連も多い。

『福ちゃん』店舗詳細

おでんを肴にクラフトビールを味わえる店『KARAKURI』

おでんはトマト550円、玉子(那須御用卵)330円、大根363円など。自然派ワインも各種そろう。
おでんはトマト550円、玉子(那須御用卵)330円、大根363円など。自然派ワインも各種そろう。

階段を下りると、白い暖簾(のれん)を下げた引き戸の玄関が見えてくる。おでん種は定番12種と季節限定2~3種。一番人気の大根は3日かがりで仕込む自信作であり、ちょこんとのせたとろろ昆布の香りがよい。カウンターでひときわ目を引くのがビールサーバー。8個のタップ(注ぎ口)があり、それぞれに異なるクラフトビールの樽がつながれている。日本酒は燗酒12~13種、冷酒10種を用意する。

壁や床などの内装は店主自らが行った。手仕事の温もりがする。
壁や床などの内装は店主自らが行った。手仕事の温もりがする。

『KARAKURI』店舗詳細

取材・文・撮影=内田 晃