どうしたら心地よく過ごしてもらえるか
三崎坂と三浦坂を「く」の字につなぐキッテ通り。その一番南に『COUZT CAFE』はある。
谷根千をよく散策する人にとってはおなじみの風景だろう。この店がオープンしたのは2009年の秋のことだ。
「美術系の学校に通っていたこともあり、カフェの空間としてのおもしろさにとても興味がありました」と話すのは、この店のプランナー・デザイナーであり、『COUZT CAFE』の代表を務める椿ひとみさん。椿さんは2010年から携わり、その翌年からは中心となってお店を切り盛りしている。
「最初は手探りではあったけれど、どうやったら心地よく過ごしてもらえるかを考えて、メニュー表や内装で表現することで、少しずつお客さんが増えていってくれました」
肩肘張らずに過ごせる空間を提供することに重きを置き、そのうえでおいしいものを提供する店であることを心がけている。
大満足のランチプレート
今回注文したCOUZTプレートは時期ごとに内容が変わり、この日は豚スペアリブのホロホロBBQがメイン。甘辛く香ばしい味付けで身はしっとりとやわらかく、よくあるカフェのランチプレートとは一線を画す本格的な味! そのほかにポテトロースト、4種きのこのマリネ、自家製シーザードレッシングのサラダと盛りだくさん。これだけで大満足の内容だが、14時まではさらにスープが付く。野菜のだしで作った豆乳のスープで、たまねぎの甘みが効いたほっとする味だ。
このプレートは10年ほどキッチンで働いているスタッフさんが考案したもの。椿さんは、お店に立つスタッフさんが「やりたいことをできる」という環境も重視しているという。
「今のキッチンスタッフは、“実際に自分が食べたいもの”という視点で色々と考案してくれていて、それがとてもいいなと思っています」
COUZTプレートのほか、定番メニューの自家製マヨネーズの玄米タコライス980円や、イベリコ豚のローストポークサラダ1250円も根強いファンがいるそうだ。
また、ここに来たならばぜひともコーヒーも味わいたい。というのも、店長の宮田さんは、コーヒー全般についてを学びに焙煎所へ通った経験があり、コーヒーの種類にはこだわりあり! 「宮田ブレンド」は焙煎所での研修中に選りすぐりの珈琲豆からブレンドしたもので、甘みがあり後味もすっきりとしていてくせがなく、コーヒーがあまり得意ではない人でも飲みやすそうな口当たり。来るたびに違うものを選んで飲み比べてみるのもおもしろそうだ。
見えない部分のこだわりと信念
すっかり満腹になり、改めて店内を見渡すと、壁やテーブルに飾られているアート作品や雑貨がこの店の世界観を形作っていることがよく分かる。入り口付近の一角では雑貨や焼き菓子も販売していて、お店で使っているものやライブをした方のCDを扱っている。
人気なのは、お店で提供しているお茶をオリジナルのパッケージで販売するCOUZT茶葉。パッケージの綺麗な絵は谷根千に住んでいるアーティスト・樋口亜弥さんが描いたものだそう。
「食材はなるべく体に優しくオーガニックのものを使い、調味料も自家製のものを増やしています。最近は、お店で使う洗剤も自然分解できるものに変えました」
今後はヴィーガンの方が食べられるメニューも用意していきたいという。でも、表向きにそれをアピールするのではなく、コーヒーを気に入って通っていたらいいものを使っていたとわかる……そんな自然体で営んでいきたいと話す椿さん。実際に『COUZT CAFE』のファンが着々と増え、常連さんが通う店になっているのは、そんなこだわりがしっかりと伝わっているからだろう。
『COUZT CAFE』店舗詳細
取材・文・撮影=中村こより