菩薩とは「悟りを目指す者」
「菩薩」という言葉だけでは、なんだか仏教の難しい言葉といったイメージがあるかもしれません。しかし、菩薩は意外にも皆さんの身近にいるんです!
「お地蔵さん」や「観音さま」って、道端や近所のお寺で見かけませんか?
実は、それぞれ「地蔵菩薩」「観音菩薩」とされ、仏像の中でも「菩薩」という尊格なのです。
では、その「菩薩」とはどんな存在なのでしょう。前回の【如来編】では、「如来は”悟りを開いた者」とご紹介しました。それに対して菩薩は「悟りを目指す者」なのです。
菩薩の見分け方とは?
悟りを開いているため、きらびやかな装飾を身につけず簡素な身なりをしているのが如来の特徴でしたが、それに対して、まだ悟りに至っていない菩薩は、宝冠やイヤリング、ネックレスなどの装飾を身につけているのが多いのが特徴です。
仏教の開祖であるゴータマ・シッダールタは、出家をして悟りを開く前はインドの王子でした。そのため菩薩像は、豪華なアクセサリーを身につけているのです。
また、如来の螺髪(パンチパーマのようなヘアスタイル)ではなく、長い髪を高く結い上げている「髻(もとどり)」という髪型を表している像が多いのも如来と対照的な特徴と言えるでしょう。
あなたの願いを聞きます!観音菩薩
菩薩像の中で、最もポピュラーなのが「観音菩薩」。
観音とは「民衆の願いをよくよく見(観)て、救いの声(音)を聞くという意味」です。
菩薩はまだ悟っていないと知ると、「菩薩は価値が低いのでは?」と思われるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません!
まだ悟っていないと言うことは、「より私たちに近い存在」とも言えます。だからこそ「観音さま」のように、私たちのそばで見守ってくれる存在でもあると言うことにもつながり、古い時代から現代まで多くの観音菩薩像が作られて来たのです。
変身!観音菩薩はいろんな姿に変身する!
ザ・ブルーハーツは「夢」という曲の中で「あれも欲しい!これも欲しい!もっと欲しいもっともっと欲しい!」と歌いました。
私たちは、どんなに頑張っても心の奥底から、色々な煩悩が湧き上がって来てしまいます。
この色々な煩悩(=苦しみ)を取り除くため観音菩薩は、どんな人にもマッチした姿に「変身」するのです!
例えば、あらゆる方角の人を見渡せるよう、顔のたくさんついた「十一面観音」になったり、たくさんの人を救えるよう「千手観音」になったり。
はたまた、交通安全の祈りにマッチするよう、当時の移動手段の一つであった馬を取り込んだ「馬頭観音」になったりと、33もの姿に変身します。
つまり、装飾や髻はある程度共通していますが、色々なバリエーションが見られるのも観音像のポイントです!
いつもそばにいるよ!地蔵菩薩
私たちにとって、最も身近な菩薩といってもいいのが「地蔵菩薩」。
しかし地蔵菩薩は、簡素な袈裟を着て剃髪した姿をしており、菩薩の特徴である、きらびやかなアクセサリーや高い髻といった像容ではありません。
これは地蔵菩薩が「実は悟りを開く資格を持っていながら、衆生を救うため”あえて”菩薩として止まっている存在」とされているためだとも言われます。なんだか、カッコいいですね。
また、錫杖と呼ばれる杖を持っている像例も多く、これは六道(仏教における様々な世界)を歩き回って人々を救っているためとされます。
インテリキャラ!?文殊菩薩
その他の菩薩では「三人寄れば文殊の知恵」ということわざにもなっている「文殊菩薩」もポピュラーな存在です。(仏教では「智慧」と表現)
ことわざにある通り「頭のいい存在」として、学業成就や合格祈願のご利益があるとされます。
姿としては、右手には知恵の象徴である剣を持ち、左手に経典の書かれた巻物を持っている姿が一般的。
獅子に乗っている像例も多くあり、これは「たとえ獰猛な獅子でも乗りこなすほどの智慧を持つ」ことの現れと言われています。
如来とチームを組むことも
仏像は単体で安置されることもあれば、複数で祀られることもあります。そんな時、菩薩は如来をサポートする脇侍(きょうじ)としての役割で配置されます。
例えば、薬壷を持った薬師如来が本尊の場合、両脇には「日光菩薩」「月光(がっこう)菩薩」が控え、阿弥陀如来を本尊とする場合は、両脇が「勢至菩薩」と「観音菩薩」となります。
このように、どの如来なのかに応じて脇の菩薩が決まる「チーム制」のため、如来の姿がわかれば両脇がなんと言う菩薩なのか知ることもできますね!
今回は「菩薩」についてご紹介しました。この尊格は、お寺や博物館だけでなく、散歩の道端にも祀られていることも多いので、いつもの通勤路や散歩道で、気にかけてみてください!
写真・文=Mr.tsubaking