酒屋併設の新スタイルな発酵ビストロ
新中野駅から歩くこと1分。中野で三代続く卸酒屋が運営する『柴田屋酒店 本店』の上階に、2021年から営業しているのが直営レストラン『発酵ビストロ SAKE-YA SHIN-NAKANO UE』。『柴田屋酒店 本店』の店内にある、螺旋階段を上った先が同店だ。
明るい店内には、カウンター席とテーブル席がゆったりと配されているため、一人でもグループでも利用しやすい。おしゃれな雰囲気ながら、ランチや仕事終わりにふらっと立ち寄りたくなるカジュアルさも兼ね備えている。
「いろんな国や品種のお酒をちょっとずつ楽しんでいただけるのが、酒屋直営のレストランならではだと思います」と話すのは、店長の宮下寛之さん。
「料理については、お酒との相性を一番に考えて開発しています。お酒といえば“発酵”なので、料理にも発酵要素を取り入れているのが特徴です。発酵食品をさまざまな形で楽しんでいただくため、定番の塩麹や醤油麹から、にんにく醤油麹や黒ゴマ麹などのオリジナル麴まで、自家製の麹をふんだんに使っています」
フードメニューは、フレンチレストラン出身のグランシェフが監修。醸造家でもあるシェフは、自身でクラフトビールを仕込むこともあるというから驚きだ。ホールのスタッフも、ソムリエ資格の所持者などお酒の知識が豊富なので、お酒について気軽に質問してみよう。
50種類以上のワインがリーズナブルに飲み放題
店内で最も目に留まるのが、ずらりと並んだボトルワインの数々。同店では、50種類以上のワインを楽しめるフリーフローが名物だ。30分1210円、90分2420円、3時間3630円という良心価格で、棚と冷蔵庫に並んだ多種類のワインを自由に堪能できる。
酒屋直営とあって、さすがの品揃えに驚いてしまう。これだけの種類のワインをフリーフローで楽しめるのはワイン好きにとって貴重な場所だろう。
フリーフローは、ワインに限らず日本酒やクラフトビールなども注文可能。この機会に、たくさんのお酒と出合ってみたい。
フリーフローと並んで人気なのが、ワインの飲み比べ。5種類のワインを、30mlずつという少量で楽しめるのが魅力だ。ワインの種類は、白・赤・ロゼ・泡の中からその日おすすめのものをスタッフが選んでくれる。
「一度にいろんな種類のワインを飲み比べできるお店はあまりないのか、ソムリエ試験のテイスティング対策として注文するお客様もいらっしゃいますよ」と宮下さん。
ワインを味わうだけではなく、ワインに詳しくなりたいときにもぴったりの飲み方だ。
多種類あるワインの中で、いま飲んでおきたい注目のワインも教えてもらった。それがイタリアのオーガニックワイン「カンティーナ オルソーニャ」の2ブランドから、2022年12月に発売したばかりの新作ワインだ。ブランドは、ビオディナミというオーガニック農法の厳しい認証“デメテール”を取得する「ルナリア」と、イタリアが誇るワインとファッションを表現したパッチ(あて布、布片)柄のラベルが印象的な「パッチワイン」。
「ルナリア」からは、トレッビアーノ種100%でフルーティーな白ワイン、ぶどうの天然酵母で発酵したオレンジワイン2種類、干しぶどうから造られた自然な甘みとまろやかさを楽しめる赤ワイン、数多くの受賞歴を持つ樽熟成リゼルヴァの赤ワインという5種類のラインナップ。
「パッチワイン」からは、ボタニカル柄ラベルの白ワインと、グレンチェック柄ラベルのロゼワイン、アーガイル柄ラベルの赤ワインの3種類が登場した。
おしゃれなラベルデザインが魅力なのはもちろん、どれもナチュラルな甘みがあり飲みやすい。それぞれのワインは1階のショップで買うこともできるので、自分へのご褒美や贈り物としてチェックしておくのもいいだろう。
心温まる定食ランチを提供
この日は、週替わりの定食ランチから、人気メニューのすき焼き定食を味わうことに。ランチを注文すると、赤・白から選べるワインセットを300円で追加できるのもうれしい。
お腹をしっかりと満たしてくれる定食ランチは、特に平日、近隣のビジネスマンから大好評。週末はお酒に合うおつまみ系のメニューが中心になるため、曜日によって異なる味わいを楽しめる。
すき焼きは、割り下に玉葱麹が使用されているため自然な甘みと旨味が楽しめる。まろやかで優しく、深みのある味わいでお腹と心をほっこりと満たしてくれる。セットの赤ワインも牛肉とマッチしていて、すき焼きの旨味を引き立ててくれた。ランチと一緒に、ちょい飲みを楽しむのは至福のひとときだ。
そのほか、開栓料1000円を支払えば1階で購入したボトルワインを持ち込んで飲むことも可能。さまざまなワインを、ボトルでもグラスでも気軽に楽しめるのが同店の一番の魅力だろう。ランチがてら、まだ見ぬワインとの出合いを求めてみるのはいかがだろうか。
取材・文・撮影=稲垣恵美