1978年のオープンからずっと『セントポールの隣り』です
別名セントポールと呼ばれる立教大学と細い道をはさんで隣にあり、立大生なら必ず知っている喫茶店だ。立地もさることながら、安くておいしい定食や大人数でもOKのマルチな店で、1978年のオープン以来ずっと立大生に愛されてきた。体育会系の部活や漫研などのサークルとも繋がりが深く、普段のランチはもちろん、ミーティングや60人の宴会までこの店を使う部活もあるほど。アルバイトも立教生がほとんどで、現在は10人以上がスタッフとして働いている。
優先順位は1に授業、2に部活、3がデートで……。バイトに課するは独自のルール
「まかないは好きなだけ食べていいルールなんです」と店長の榎本さん。スタッフには体育会系の部活に属している学生も多いと聞くと、かなり心配になるルールだ。大丈夫?「チアリーディング部の子に、ストップっていうまでご飯を盛るよって言ったら、ぜんぜんストップって言わなくて。どうするのかな〜って思ってたら『あればあるだけ食べるんで!』だって。わはは」って笑ってる場合じゃないですよ!食材の値上がりが問題になっている昨今、底なしの胃袋を持つ学生たちにこのルールとは。いや〜、太っ腹ですね!
まかない以外にもう1つ大切なルールがある。それは優先順位だ。1位が授業、2位が部活、とここまではなるほど学生の本分。当然だろう。ところが3位に入るのはなんとデート!ようやく4位に来るのがこの店のバイトだ。え〜!いいんですか?この順番で!とびっくり。このルールのアイデアは、榎本さんが昔見たアメリカのドラマのワンシーンからだそう。バイト先のマスターに「今日はデートだからバイト休むね!」と堂々と宣言する。「自分もそうしたかったんだけどできなかったからね」と榎本さん。実際、このルールを使うバイトも多いらしい。ときには恋愛模様を話してくれることもあり、「こっちからは聞かないんだけどね」とうれしそうだ。
オールタイムOKのバラエティ豊かな定食メニュー
いつでも食事メニューが食べられるのも魅力だ。冊子メニューのほかに、ぐるりと周囲を見渡すと壁にもいろんなメニューが書いてある。ハンバーグだけでも5種類以上、カレーも何種類かありそう。そのほかにも鶏むねカツにとろろをかけた白いカツ丼など実にバラエティ豊か。中でもネーミングからは想像がつきにくいのが「まりちゃんカツ」だ。なぜに「まりちゃん」?
オーダーしてから待つこと数分。デミグラスソースを敷いた上に揚げたての鶏むねカツ、さらにホワイトソースがかかっている。トマトの赤やコーンの黄色、レタスの緑と彩りもきれい。そしてこのボリューム!これはうれしい。
箸で一切れを持ち上げると重みを感じるサイズ。揚げたてなのでアッツアツ、サックサクの衣で、中はしっとりジューシーでとてもやわらかい。厚みのある鶏むね肉は食べごたえ満点で、ちょっぴりヘルシーなのもうれしい。そして、とろりとかかったホワイトソースの甘みとコクがカツに合う。デミグラスソースを多めにつけると濃厚な味わいで、これはもう間違いなくご飯が進む味!今度は両方混ぜて……。と楽しみ方もいろいろ。サラダや味噌汁も付きバランスもいい。きちんとおいしいものを食べてお腹いっぱいになれる。学生にとっては本当にありがたい店だと実感する。
なんで「まりちゃん」なんでしょうか?と聞くと、「いろんなまりちゃんに食べてもらいたいって思って作ったんだよ。天地真理とかね……」とのこと。なんだかナイショの裏話がありそうだったが教えてもらえなかった。
なるべく安くおいしいものを腹いっぱい食べさせたい
この金額でこのボリュームを維持するのは大変だろう。「仕入れなどを工夫してなんとかがんばってます。学生がコンビニのおにぎりだけとかって、よくないからさ」と榎本さんは話す。削るところはあっても、作りたてのおいしさは譲れない。学生に対するあたたかい気持ちが料理や雰囲気のすべてからあふれる。なんだかうらやましい。うらやましいからまた来ようと思う。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ 構成=アド・グリーン