野点とは? 必須なものは何?

畳敷きの茶室で、作法を覚えて嗜(たしな)む茶道の世界。「野点(のだて)」 は、その番外編のような存在で、文字通り野外で茶を点てて喫することだ。連想するのは、縁台に赤い毛氈(もうせん)を敷き、赤い和傘の下での一服。まさに、あれ! 野点はそもそも作法がゆるやかで、茶道の経験がなくても気軽に親しめる催し。本来、お茶を点ててもてなす亭主と、ごちそうになる客人が向き合うが、一人でやっても楽しそう……。名付けて“ソロ野点”に、いざ、挑戦だ。

はてさて。野点には何が必要か。失敗なく楽しめるポイントはいかに。疑問だらけのビギナーが頼りにすべきは、街のお茶屋さんだ。今回は、イートインに抹茶メニューがある『西野園』の店主、西野和広さんに相談。すると「野点?そりゃいいですねえ」と、好リアクション。本計画の成功が見えた。

最初に、揃えるべき道具についてうかがうと、「絶対に必要なのは『茶筅(ちゃせん)』。竹製の泡立て器みたいな、お茶を混ぜる道具です。次に『抹茶』。煎茶とは違う製法で作る“碾茶(てんちゃ)”を挽いた粉。そして『茶碗』ですが、家にある大きめの飯碗でも代用できますよ」。

抹茶は、茶漉(こ)しで振るっておくとダマにならないけど、封を開けてすぐ使うならそのままでもいいし、抹茶をすくう「茶杓(ちゃしゃく)」は、ティースプーンでと、ハードルが低くなるアドバイスに、ほっ。

「最初は分量通りに。慣れたら好みで加減を。まあ、難しく考えず、おもしろがってやってみて」
家で練習しておくと、安心だ。

茶道具とお茶の点て方

必須道具は3つ。カタチから入れば憂いなし

【1】 左から茶筅2310円、抹茶茶碗1000円~、抹茶648円~。一式揃えて4000円前後。

【2】 茶碗と茶筅は一度湯通しする。抹茶をティースプーン山盛り1杯(約2g)入れる。

【3】 茶筅の上からゆっくりと湯を注ぐ。跳ねないし、ちょうどいい温度(80℃)になる。

【4】 手首を使ってM字を描くように30~40秒混ぜる。茶筅を真ん中から静かに引き上げる。

教えてくれたのは……『西野園』の西野さん

茶葉も茶器も揃う街のお茶処

街のお茶屋さんは、疑問だらけのビギナーにも優しい。

産地をめぐり、生産者との交流を大切にする西野和広さん。畑の風景とともに、茶農家や茶師の熱意をお客に伝えている。市内小学校でお茶の淹れ方を教えたり、定期的に「日本茶研究会」も開催。登山が趣味で「山頂で一服。格別です」。

住所:東京都三鷹市井の頭2-7-23/営業時間:10:00~19:00/定休日:日/アクセス:京王井の頭線三鷹台駅から徒歩1分

思い立ったら吉日。野点にチャレンジ!

茶筅、茶碗、抹茶はカゴにまとめて。干菓子、熱湯を入れた保温ボトル、シートも準備。

いつでも出動できるよう、道具をカゴにセット。常温で日持ちする干菓子、敷物の準備も忘れずに。早朝、雨さえ降っていなければ、野点日和。湯を沸かして保温できるボトルに入れ、出発だ。

野点ポイントの理想は、人が少なくて、のびやかな景色を望む平坦な場所。凸凹や斜面だと座りにくいし、道具が傾いてしまうのだ。

シャカシャカと朝の空気も混ぜ込んで。

探して歩いて「ここ」と決めたら、敷物を広げ、靴を脱いで正座する。
道具を並べたら、ひと呼吸。すると不思議、たちまち自分だけの世界が生まれ、集中力が高まってくるではないか。

心の中で、「これから野点をはじめます」と宣言してみる。干菓子を頬張り、教わった通りに手を動かす。茶筅を持ったら、勢いよく一気に点てよう。茶の香りを感じたら、上出来だ。自分に「いただきます」をして、ごく、ごく、味わう。

最後に飲み干す時、ぐぐ〜っと天を仰ぐことになるのだが、この瞬間が快感で、やみつきになりそう。

冷やし抹茶もおすすめ。湯量2/3で点て、最後に氷(別ボトルで持参)を入れ混ぜる。

取材・文=松井一恵(teamまめ) 撮影=鈴木奈保子
『散歩の達人』2020年8月号より