個性あふれるサンドイッチの数々
下北沢南口商店街の路地を1本曲がった先に現れる『Sandwich Club』。大きなガラス張りの外観と黄色い立て看板が目印だ。どことなくログハウスのような雰囲気を醸す建物の中へ入ると、こぢんまりとした居心地のよい空間が迎えてくれる。座席は、ガラス窓に沿うように立てつけられたカウンターに5席ほどが並ぶ。奥では、山口さんが一人で接客と調理を担当していた。
この店の名物は、店名のとおりサンドイッチ一択。ほかには、コーヒー、ソフトドリンク、アルコール類などのドリンクメニューや、台湾の豆乳スープである鹹豆漿(シェントウジャン)、アイスクリーム店『kasiki(カシキ)』のアイスクリームサンドイッチがあるのみ。
サンドイッチは限定メニューを含め、常時11種類ほどが揃う。ベーコン、レタス、トマト、目玉焼きを挟んだBLTEやツナ&チェダーチーズといった洋風メニューの中に、鶏そぼろ&チーズや梅てりたまのような和の素材を挟んだサンドイッチも混ざっており、バリエーションの幅広さが魅力となっている。
その組み合わせのインスピレーションはどこから湧いてくるのか、山口さんに聞いてみると、このような答えが返ってきた。「当初はアメリカのダイナーで食べられているようなサンドイッチを出したいなと考えていたんですけど、新メニューの試作を重ねるうちに美味しいと思う組み合わせがどうも和に寄っちゃいがちで……。私自身、和の味付けの方が好きなんでしょうね(笑)」
そんな個性あふれるサンドイッチの中でも、卵を使ったものが特に人気があるという。使用するのは、埼玉にあるぶくぶく農園で採れた平飼い卵。「家族で養鶏している農園で、コロナ前は年2回ほど伺っていました」と山口さん。今回はオムレツ&ハムをいただいたが、厚焼きのオムレツは塩とバターのみというシンプルな味付けで、卵の美味しさがダイレクトに伝わってくるようだった。
お客さんとともに店をつくっていく姿勢
山口さんがこの店を創業したのは、2018年1月のこと。それまでは、ダイニングバーの店長を務めながら、休みの日に間借りでサンドイッチを作って販売していたという。もともと間借り先側のリクエストで作りはじめたサンドイッチだったが、山口さんが好きなコーヒーにもお酒にも合う食べ物でもあることから、専門店をオープンしてみようと思ったのがきっかけだったそう。
毎週火曜日には、サンドイッチナイトクラブと称して夜の営業もスタート。「営業時間が7時から15時までなので、平日はなかなか来づらいというお客様も多くいらっしゃったんです。それで、定休日の前日だけ夜の営業をはじめてみました」と山口さんは話す。
生ビールやワインなどのアルコールはもちろん、サンドイッチも夜の部限定のメニューを提供する。とはいえ、店内キャパシティの都合から本格的な宴会会場としての利用は難しいということなので、待ち合わせ前のアペリティフ代わりや仕事帰りに軽く一杯といった範囲での利用をおすすめしたい。
お客さんの声に耳を傾けて、積極的に店づくりに活かす山口さん。その姿勢は、サンドイッチ作りにも現れている。「常連さんのリクエストで、限定メニューとして出していたサンドイッチが定番メニューに昇格したこともありましたね。お客さんの好き嫌いに合わせて具材を抜いたり、追加トッピングを用意して増やしたりすることもできるようにしています。それも、注文を受けてから手作りするスタイルの利点だと思いますね」。山口さんが作るからこそ生まれる、ここでしか味わえないサンドイッチを食べに訪れてみてはいかがだろうか。
『Sandwich Club』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英