【ミュージアム】市谷の杜 本と活字館
まさに本と活字のテーマパーク!
大日本印刷市谷工場の旧営業所棟を活用した文化施設が2021年2月に開館。大正15年(1926)に建てられ“時計台”と親しまれた建物を復元し、レトロモダンな雰囲気と細部までこだわった装飾が魅力だ。印刷所が併設されているのも特徴で、リアルな仕事風景や貴重な資料、ハイテクを駆使した展示物を通して活版印刷と本づくりの工程を学べる。企画展やワークショップ、カフェとさまざまな楽しみあり。
こんな体験できます
2階の制作室にて卓上活版印刷機でのしおり印刷体験、リソグラフ印刷機とオリジナルスタンプを使ったポストカード制作のワークショップあり。開催は1日各2~3回で、来店当日申し込み(1人1日1回まで)、無料。
『市谷の杜 本と活字館』詳細
【ミュージアム】印刷博物館
ドラマチックな印刷史は見ごたえあり
国内外の印刷物や活字、道具や機械など、約7万点もの資料を収蔵する専門ミュージアム。2020年開館20周年を機に展示内容の多くを「印刷の日本史」にフォーカスした。仏教の中で印刷の多様性が育まれた古代・中世から現代の印刷までじっくり見せる展示はドラマチックで奥が深く、実に見ごたえがある。印刷工房では活版印刷に使われた歴史的名機を間近に見学でき、活字に直接触れて活版印刷体験も!
こんな体験できます
印刷工房の活版印刷体験は、活字を選んで(文選)、並べて版を組み(植字)、イギリス製のアダナ印刷機を使って印刷する。空白を作るにも部材が必要でバランスの調整が難しいが達成感あり。季節により体験内容は異なる。要予約。
『印刷博物館』詳細
【活字鋳造】佐々木活字店
活字づくりの都内最後の砦!
大正6年(1917)、活字鋳造職人の初代が始めた活字製造販売店。活字は鉛、アンチモン、錫の合金を350℃の火で溶かし鋳造されるものだが、作り手は減り、今では都内でほぼ唯一の貴重な存在で新宿区地域文化財に登録される。活字の所有数は700万本以上とも! 現在は製造のみならず印刷まで行う。「活字を大量に使って印刷ができるのが、活字を作れるうちの強み」と4代目の佐々木勝之さん。
こんな商品あります
活字組版のブックカバー(文庫サイズ・2色入り)550円は、宮沢賢治『春と修羅』の文を8つのサイズの明朝体活字を使って印刷した。
『佐々木活字店』詳細
【活版印刷】嘉瑞工房
300書体の欧文活字を巧みに操る
1956年創業。特化しているのは、日本では珍しい欧文活版印刷。世界各地から集めた膨大な欧文活字を使い、名刺から封筒、格式ある招待状や賞状類まで、海外でも通用する本格的な端物印刷物を主に制作する。活字は書体だけで約300種類もあるとか。「国柄や用途、贈り相手などにより適した書体は違うので種類が豊富にあるんです」と2代目代表・髙岡昌生さん。国際化の今だからこそ頼りたい知識と技術だ。
こんな活動あります
『本づくりハウス』は、髙岡さんが理事を務める本づくり協会の拠点。製本教室や会員向け図書室も準備中。併設する『美篶堂』ショップにてオリジナルグッズも販売。要予約。☎03-5946-8819
『嘉瑞工房』詳細
【特殊加工】真美堂 手塚箔押所
付加価値を生む光沢と立体感
1957年の創業から特殊印刷加工の箔押ひとすじ。創業時はカメラ用革製品を取り扱ったが、現在は主に書籍のカバー。「細かい文字、箔が乗りづらい紙に泣かされることもある。でも付加価値をつける大事な役目。丁寧に取り組むまでです」と3代目の手塚博雄さん。1999年からは機械と技術を生かし、点字印刷にも着手。オリジナルカレンダーは日本文具大賞のデザイン部門・優秀賞受賞作だ。
こんな商品あります
『手塚箔押所』詳細
【製本】博勝堂
新旧技術の両輪で製本は無限大!
こんな製品作ってます
製品の柱の1つ、和本。蛇腹折りの朱印帳は有名寺のものも多く手がける。布の表紙の折り込みも美しい仕上がり。
『博勝堂』詳細
取材・文=下里康子 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2021年12月号より