地元の人から旅行客まで。みんなのおなかを満たす街の定食屋
立川でおなかが空いたとき、駅周辺で腹を満たすのももちろんいいが、たまに駅から少し足を延ばしてみるのはいかがだろう。
駅から8分ほど歩いた『ホテル日航立川 東京』のほど近く、交差点の角に店を構える『おいしいごはんやさん 笹』は、2020年9月にオープンした定食屋だ。
店内はカフェのようにナチュラルな雰囲気。大きな窓から光が差し込む明るい空間で、伸び伸びと過ごせる。普段、あまり一人で外食をしないという人でも入りやすい雰囲気だ。
店主の笹本恵一さんは、10代の頃から飲食の世界で腕を磨き続け、自身の店を持つことを目指してきた。
もともと居酒屋で腕を振るっていたというが、定食屋を開いた理由は「当時働いていた居酒屋の姉妹店が定食屋さんで、よく手伝いをしていたんです。自分で店を開くときも、できる限り安い価格で、好きなものをおなかいっぱい食べられる店にしたいなと思っていました」。
店のオープンはコロナ禍のタイミングと重なってしまったが、逆境にも負けず2024年で4周年を迎える。現在は近所で働くビジネスマンや地元の学生、家族連れ、ホテルの宿泊者など、老若男女問わずさまざまな人たちのおなかを満たしている。
毎日手作りする副菜は、好きなものを好きなだけ。
「好きなものを好きなだけ食べてほしい」という思いのもとオープンした同店は、一般的な定食屋とは少し変わっている。なんと店内で定食をオーダーすれば、ごはん・みそ汁・副菜が食べ放題という太っ腹なスタイルなのだ。
笹本さんは「僕もよく食べる方なんですが、決められた量だと少ないなと感じることがあるんです。やっぱり食べたいものを、食べたいだけ食べられたらうれしいかなって」とニコリ。
毎日手作りする副菜は、常時10種類以上がラインアップ。ポテトサラダやサラダパスタ、もやしナムル、キムチなど多品目の副菜が並ぶ。料理を待っている間、前菜がわりに食べたり、定食のおかずにプラスして食べたりと、食べ方も組み合わせも自由自在だ。
「お客さんからは、普段不足しがちな野菜をたくさん食べられてうれしいとか、好きなものを選べるのが楽しいといった声をいただけています」
定食でありながら、自分で食べたいものをチョイスできる楽しみもあるのは魅力的だ。
食べ放題といえど、日本人にとって大切なごはんとみそ汁は力を入れている。ごはんは笹本さん自身も気に入っている山形県のブランド米「つや姫」、みそ汁は鰹節問屋『マルサヤ』の鰹節をふんだんに使った、こだわりの一品だ。
さらに親子連れの場合、小学生以下の子どもは定食を注文しなくても無料で食べ放題コーナーが利用できる。お客さんの気持ちに寄り添ってくれるサービスがうれしい。
バランスのよい定食に大満足!
11種類ある定食の中から今回オーダーしたのは、店名を冠したいちおしメニューの“笹定食”だ。
メインの塩もつ煮込みをはじめ、アジフライやねぎとろ、納豆、とろろ、茶碗蒸しなど、ごはんのお供にぴったりなおかずが勢ぞろい。食後に一口デザートのコーヒーゼリーも付いていた(料理やデザートの内容は時期によって変わる)。
自宅で栄養バランスを考えて何品も作るにはどうしても手間暇がかかるが、こうして店で栄養たっぷりのごはんが食べられるのは、どの年代にとってもありがたい。
「いつでも来られる食卓のように使っていただけたら」と笹本さんは話す。
笹本さんが居酒屋時代から作っていたという塩もつ煮込みは、とろとろのやわらかなもつをはじめ、大根やニンジンなど、ほろほろになるまで煮込まれた具材がたっぷり。塩味のやさしい出汁に、旨味が溶け出している。くせも全くなく、かつ一般的な味噌のもつ煮込みよりもあっさりとしているので、誰でも親しみやすい味わいだ。
ほかにもサクッと揚がったアジフライや、口の中でとろけるねぎとろなど、幅広い料理を一度に少しずつ味わえるのが笹定食ならでは。「あれもこれも食べたい!」なんて欲張りな気分を見事に満たしてくれる。
笹本さんが居酒屋出身ということもあり、メニューにはお酒に合うおつまみも充実している。ランチ以外にも、昼飲みや晩酌など多彩なシーンで利用できそうだ。定食は持ち帰りもできる(笹定食のみテイクアウトの提供なし)ので、夕飯時に立ち寄るのもいいだろう。また、日替わり定食の内容はInstagramで毎日更新しているのでそちらもチェックしてほしい。
手作りのごはんが恋しいとき、栄養たっぷりのごはんを食べたいときは、おなかを満たしに行ってみよう。
取材・文・撮影=稲垣恵美