店内は懐かしさと新しさが融合した優しい空間
2017年9月、屋上テラスが上野恩賜公園と直結している上野の森さくらテラスにオープンした『上野洋食 遠山』。
店内は大きな窓から陽光が差し込む開放的でカジュアルな空間。テーブル席が並べられていて、一番奥にはほかのテーブル席から少し離れたプライベート感あふれる6人用のテーブル席がある。さらに、上野駅側の道路に面してテラス席が用意されているので、心地よい風を感じながら食事ができるのもうれしい。
新しい洋食を生み出したエグゼクティブ・シェフ
店名はエグゼクティブ・シェフの遠山忠芳さんに由来する。遠山さんは、熊本のホテルをはじめ、京都の洋食店でもシェフを務めた人物だ。
「フレンチをベースに、私なりにアレンジした独創的な洋食を提供しています。地元の方はもちろん、外国人も含めた観光で訪れた人たちに気軽に味わって欲しいと思います。“和食”はユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、洋食も広くアピールして行けたらと思います」と話してくれた。
食材は遠山さんの故郷である熊本の素材を中心に使用。「素材と向き合い、手間暇かけてこそ伝わる味」を、フレンチと洋食の技を駆使したモダンスタイルの洋食を生み出している。
肉感あってジューシーなハンバーグとプリプリの大エビフライ
数ある洋食メニューで人気なのが、ハンバーグだという。今回はその中でも一番人気の大エビフライ&特選デミグラスソースハンバーグ・ランチセット3500円を注文。
ハンバーグには熊本県の天草ポークと国産牛肉を使用している。ひと口食べてみると、ぎっしりと肉が詰まっているような凝縮感があり口いっぱいにジューシーさが広がる。デミグラスソースは一見濃厚でくどそうに見えるが、酸味のバランスがよく、上品な味に仕上げている。
料理長の中津勇気さんにうかがうと「ハンバーグはこねる際に肉の水分量に気をつけながら作っています。そして、フライパンで外側を香ばしく焼いた後、中までじっくりと火を通すためにオーブンで焼き上げます。そうすることによって旨味たっぷりの肉汁を閉じ込められ、おいしさが口にあふれると思います」。また、「デミグラスソースは牛すじや鶏骨を1週間程度かけてじっくりと作っています。見た目は濃厚そうに見えますが、赤ワインやシェリービネガーなどを使用しているので、さっぱりと仕上がっています。じっくり炒めた玉ネギの旨味と苦味が全体を引き締めるアクセントになっています」と話してくれた。
こんがりと揚げられた大エビフライは、サクッとした衣と、プリプリとしたエビの弾力がたまらない。添えられたタルタルソースと一緒に食べればいっそう旨味が感じられる。タルタルソースは「注文ごとに卵とソースを混ぜる」ことでフレッシュな卵の風味が強く感じられ、くどさがないさわやかな味わいになるのだという。
スープ目当てに来店する人もいるという
ランチとセットになるコンソメロワイヤルスープは「このスープを飲むために来店する」というファンも多くいる逸品。
黄金色に輝くコンソメスープの下には洋風の茶碗蒸しが入っている。しっかりとしたコクがあり、やや酸味のあるコンソメスープは優しい味わい。卵とコンソメを合わせて蒸した洋風茶碗蒸しはアッという間になくなってしまうほどの滑らかさ。スープと洋風茶碗蒸しが一体になり、双方のよさを引き出し合っている。
貴重なオーガニックワインを洋食とともに
おいしい食事だけでなく、ワインもいただきたい。入り口付近のブラックボードには日替わりでおすすめのワインが書かれている。その中の「ゼロプロ」をすすめてもらった。イタリアでかつてベストワイナリーイタリーに選ばれたこともあるワイナリーで造られたワイン。オーガニックの一種であるビオディナミ農法で作られたブドウを使用し、ビーガンの認証も受けているという。
赤の「ゼロプロ オスクーレ アッバシーテ ロッソ」、白の「ゼロプロ プリズメペコリーノ」、スパークリングの「ゼロプロ スティッレ スプマンテ ペコリーノ」の3種類(各グラス1000円)を用意している。
ほかにも、10種以上のワイン、カクテル、日本酒などもあるので、料理や気分で選びたい。
これからも進化し続ける洋食メニュー
遠山さんはビブグルマンを獲得した西麻布にある『洋食ビストロ TOYAMA』で、厳選した素材を使用した大人の洋食をコース仕立てで提供している。
中津さんは「遠山さんが作り上げたこだわりの料理を守りつつ、新しい・進化をさせた洋食を提供したいと思います」と力強く語ってくれた。
洋食の名店ひしめく上野に誕生した『上野洋食 遠山』。フレンチの技法を取り入れた洋食は新しい感動を与えてくる。ちょっとリッチな洋食を楽したいときに訪れることをおすすめしたい。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン