ヨーロッパを旅するような異国情緒あふれるビストロ
ルーマニア出身のオーナーがこだわりをもって創りあげた店『BELLA VITA』。その名は、イタリア語で「美しき人生」という意味で、オーナーが大好きな言葉だ。そう教えてくれたのは、シェフの齋藤さん。2022年10月5日のオープン以来、3名のシェフを中心に、この店の多彩な料理を創りあげてきたという。
「オーナーの出身であるルーマニアをはじめ、フランス、イタリア、ギリシャ、スペインと、一つの国の料理にとらわれず、ヨーロッパ各地の料理を取り揃えています。まるでヨーロッパを旅している気分になれる、それがコンセプトです」と斎藤さん。
オーナーの母国がルーマニアということで、オーナーが監修したルーマニアポテトサラダや、サルマーレというルーマニアのロールキャベツが店の看板メニューだ。ほかのヨーロッパ各地の料理は、フレンチやイタリアンなどで修業を積んだシェフたちが手掛ける。
「いろんな国の代表的な料理から、知る人ぞ知る珍しい料理まで、すべて手作りにこだわってます。僕はフレンチ出身なんですけど、ランチのラムハンバーグは、ラムをおいしく食べるにはハンバーグがいいかなと思って作ったんです」。メニューを見ると、それぞれのシェフならではのアイデアが盛り込まれた料理が並び、どれを食べていいか悩むほど。
経験豊富なシェフたちが紡ぐ多種多彩なヨーロッパ料理
ランチの人気メニューはエッグベネディクト1550円だということで、早速、作っていただいた。
手際よく調理するのは、料理長の谷口さん。キノコやベーコンを炒め始めると、厨房に芳ばしい香りが広がる。盛り付けは、もう1人のシェフ久野さん。久野さんはエッグベネディクトのレシピを担当したそう。
久野さんが優しく微笑みながら、「ザクザクと切って食べてください」とエッグベネディクトをサーブしてくれた。お話はあとにして、まずはいただくことに。
マフィンの上にキノコのソテー、ベーコンに巻かれたポーチドエッグ。ナイフで上から切ってみると、なんとマフィンまでザクザクと気持ちよく切れる。
「イングリッシュマフィンも手作りなんです。まわりのコーンミールのサクサク感と、湯種のしっとりもっちり感。全粒粉の香りも感じていただきたい、そんなイングリッシュマフィンです」と久野さん。こだわりのマフィンは、湯種を入れることで切れやすい生地になるそうだ。食べやすさはもちろん、手作りマフィンのおいしさが際立つ!
ソースに半熟の卵からとろける黄身を絡めていただくと、まろやかな旨味の中に爽やかな酸味が広がっていく。「ソースにコクを出したくてマヨネーズをベースに卵黄を加えて、あとは最後にレモンの酸味も足して爽やかに仕上げています」とソースの秘密も教えてもらった。なるほど、これだけボリューム満点なのにさらっと完食してしまったのはソースにひと工夫あるからなのか。リピーター率が高いのも頷ける、ランチいち押しの一品だ。
ディナーのあとはバーで一息、味も居心地も極上な店
ランチをあっという間に食べきり、満喫したあとは、ディナーも気になるところ。メニューをめくると、料理の前にそれぞれ国名が書かれている。ルーマニア、フランス、イタリア、ギリシャ、スペイン……。
その中に、ランチのラムハンバーグに使われていたソースがあった。「これはディナーで使っているギリシャのザジキソースです。ヨーグルトとキュウリ、にんにくをすりおろし、ハーブも加えています」と、このレシピを担当した斎藤さん。ランチでほんのりディナーの雰囲気を味わえると、夜も来てみたいと自然と思えてしまう。
ランチのマフィンもおいしかったが、夜のメニューにも自家製のカンパーニュがあるという。こちらも久野さんの手作りで「レーズンの種や麹の種、酵母も自分で起こしてるんですよ」。本格的なカンパーニュは、おかわりされる方も多いとか。
渋谷ということもあって、食後は2軒目に行かれる方も多い。『BELLA VITA』なら1階は気軽なカウンター席でアラカルト、2階のテーブル席ではコース料理を味わい、食事の感動がさめないうちに、3階のバーでお酒を楽しめるのがいい。
店の一番の魅力は、いろんな国の料理が味わえるところだろう。ただ、初めて訪れる方からは「何料理屋さんですか?」と聞かれることが多いそうだ。
「例えば、スペイン料理店ならパエリアはあるけどパスタはなかったりしますが、うちはパエリアもあるし、イタリアンのパスタもある。ひとつの店でいろんな国の料理を食べられるのがいいと、リピートしてくださる方が多いですね」と久野さんが最後まで笑顔を絶やさず答えてくれた。
オープン間もないながら常連客が足しげく通うこの店に、初めて訪れた私もすっかり魅了されてしまった。多彩な料理と居心地のよい空間、それを作り出すシェフたち。何度も訪れたい店だ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=大熊美智代