レトロデザインの缶詰を求めて

もっとも最近の「美味しさ追求型缶詰」は、デザインもオシャレに作られていることが多い。それはそれで良いものだが、私が惹かれるのは昭和の時代から変わらず続いているような、レトロなデザインのものである。それは幼い頃の遠足の弁当に入れられた牛肉の大和煮の缶詰の記憶か、風邪を引いた時に食べさせてもらった白桃缶詰の想い出か。ともあれこうしたレトロデザイン缶詰を求めて、私はあちらこちらの缶詰売り場を彷徨っている。

数年前に購入したさんま缶。現代的なデザインが多いさんま缶の中で、レトロさが目を引く。
数年前に購入したさんま缶。現代的なデザインが多いさんま缶の中で、レトロさが目を引く。

スーパーの缶詰売り場でも、案外レトロデザインの缶は発見できるものである。ほとんどは昔からある安定のブランドで、中身の味もよく知っている。一方、「ジャケ買い」の面白さを味わいたい場合は、輸入食材店に行くのも良いだろう。見たこともないようなデザインの缶詰を発見できるし、どのような味なのか想像もつかないというワクワク感を得られる。

中華食材店で購入した、魚のイラストが強烈な一缶。ウグイと豆鼓のうま煮とのことだが、味の想像がつかない。
中華食材店で購入した、魚のイラストが強烈な一缶。ウグイと豆鼓のうま煮とのことだが、味の想像がつかない。

各都道府県のアンテナショップや物産展も、珍しい缶詰に出会える場としては最適だ。特に個人商店で作っているような山菜や海産物の缶詰にグッとくるデザインが多い。

北海道のアンテナショップで購入したラーメンスープ缶。小さなサイズがかわいい。
北海道のアンテナショップで購入したラーメンスープ缶。小さなサイズがかわいい。

旅先で缶詰を購入して帰るのは重いが、アンテナショップであれば気軽に買うことができる。各アンテナショップには、ぜひご当地缶詰のラインナップを増やしてもらいたい。

山形のアンテナショップで購入した、なめこと山菜漬の「真室川漬」缶詰。なめこのリアルイラストが味わい深い。
山形のアンテナショップで購入した、なめこと山菜漬の「真室川漬」缶詰。なめこのリアルイラストが味わい深い。
同じく山形の蕗甘露煮。黒の蕗イラストが力強い。
同じく山形の蕗甘露煮。黒の蕗イラストが力強い。

ところで気に入ったデザインの缶詰を買い、中身を食べてしまった後はどうするか。私は捨てるのが惜しくなり、ペン立てなどに再利用している。そのためラベルは紙で貼られているタイプよりは缶に直接プリントされている方が望ましく、缶詰の容量も多い方がありがたい。

石川のアンテナショップで購入したたらの子缶詰。リアルイラストとレトロデザインは相性が良い。
石川のアンテナショップで購入したたらの子缶詰。リアルイラストとレトロデザインは相性が良い。

市場はレトロデザイン缶詰の宝庫だ

そのような缶詰欲を満たすための場、それが市場である。市場には個人が手を出せないサイズの1号缶(容量3100ml)のデミグラスソースや黄桃缶詰などもあり、さすがに私もその購入は思いとどまらざるを得ない。しかし、普段あまり見かけることのないレトロなデザイン缶詰の宝庫なのだ。

市場で購入した「甘い系」缶詰。ゆであずきは内容量1㎏あり、消費するのに時間を要した。
市場で購入した「甘い系」缶詰。ゆであずきは内容量1㎏あり、消費するのに時間を要した。
うずら卵缶はレトロデザインが多い。こんなにうずら卵を買って、いずれうずらから恨みを買うかも知れない。
うずら卵缶はレトロデザインが多い。こんなにうずら卵を買って、いずれうずらから恨みを買うかも知れない。

また、スーパーで売られている定番缶詰の種類違いなどもあって、私は市場に行くたびにサンヨーの果物缶詰をちまちま買い集めてしまう。

サンヨーの果物缶詰は種類が多く、少しずつ買いだめていたらこんな量に。一気に開けてフルーツポンチ大会でも開こうかと思ったが、総重量4㎏超えになるので断念した。
サンヨーの果物缶詰は種類が多く、少しずつ買いだめていたらこんな量に。一気に開けてフルーツポンチ大会でも開こうかと思ったが、総重量4㎏超えになるので断念した。

気になるデザインの缶詰はその場で買え

そんな私が買わなかったことを後悔した缶詰、それが「あんこうの肝」缶詰である。あんこうの肝の缶詰自体は色々なメーカーから出ているが、私が十数年前とあるスーパーで見かけたそれは、「深海魚膽(あんこうのきも)」と赤い文字で書かれた下にアンコウの絵が印刷されていて、なんともインパクトのあるレトロデザイン缶であった。その時には買うのを躊躇(ちゅうちょ)してしまい、「いずれ買いに行こう」と思っていた矢先に東日本大震災が発生。その影響でスーパーはしばらく閉店し、営業再開した後に訪れてみたものの、棚から「深海魚膽」は消えていた。その後、二度とあの缶詰に出会うことはなかった。

ここから得られた教訓、それは「気になるデザインの缶詰はその場で買え」ということである。今後も素敵なデザインの缶に出合えることを期待しつつ、今日もまた街を歩いている。

絵・文・写真=オギリマサホ