北海道出身オーナーの“スープカレー愛”から誕生
下北沢駅の東口から3分ほど歩いたビルの2階にある『ポニピリカ』は、2014年にオープンしたスープカレー屋。現在と比べて東京のスープカレー店が少なかった当時、北海道出身のオーナー・西井さんが「自分好みのスープカレーを提供する店を作りたい」という想いでオープンした。
階段を上がり、さらに扉を開くまで店内の様子がわからない……という、初めて来店した人にはなかなかハードルが高い店の造りだが、一歩入ってしまえばイメージは一変。天井が高く開放的で、木の温もりを感じられる温かみのある空間が広がっている。スタッフも学生が多く、フレッシュで元気あふれる接客は自然と笑顔になる。
現在は北海道に拠点を移しているオーナーの西井さんと協力し、店を全面的に支えているのが店長兼料理長の佐藤さん。既存メニューのブラッシュアップに加え、斬新な切り口の新メニューを生み出している。「僕も北海道出身で、東京で一番好きなスープカレー屋がここだったんです」と話してくれた。
旨さの秘密は圧倒的な“手間暇”
『ポ二ピリカ』のスープカレーは、和風、トマト、エビの3種類のスープから選べる。3種類のベースとなるスープは、“パンチがあるけれど体に優しい”をテーマに、化学調味料は使われていない。
ラーメンスープから着想を得て開発されたスープは、豚の背ガラ、ゲンコツ、鳥の胴ガラ、モミジ、牛骨などを丁寧に血抜き・下処理し、香味野菜をふんだんに入れ1時間ごとに火加減を変えながら12時間以上コトコト煮出して作られる。また、なるべくオーガニックにこだわった15種類のスパイスを、ベースのスープの香りが最大限生かされるようにブレンドされている。
こうした美味しさを追求した“手間暇”が、奥深いスープの味わいを生み出しているのだろう。
1番人気のチキンと野菜のカレーはチキンのパリパリ皮がたまらない!
北海道産のエゾシカ肉を使ったスープカレーなど気になるメニューもあるが、同店で一番人気なのが王道のチキンと野菜のカレー。チキンと野菜のカレーには、基本の具材に加えてチキンレッグ、季節野菜がたっぷりと入っている。スープのいちおしは、110円を追加して食べられるエビスープだ。スープの辛さは7段階まで選べるが、辛いもの好きな佐藤さん曰く、タイ料理などでも使われる青唐辛子「ピッキーヌ」が入った「5辛以上」がおすすめだそう。辛党の人はぜひチャレンジを!
チキンと野菜のカレーには骨付きのチキンレッグがまるまる入っている。パリパリに揚げられた表面の皮を“パリッ”と噛むと、ジューシーでホロホロの鶏肉が出現。外側と中身の食感の対比がたまらない。
700尾以上のエビを煮込んで作られたというエビスープは、お皿がテーブルに運ばれた瞬間にふわっとエビの香りが鼻をかすめる。エビのエキスが余すことなく染み出した濃厚なスープは、エビの旨みとスパイスの風味によって主役級にパンチが効いているものの、具材の旨みを引き立てる名脇役にも変化するから不思議だ。
スープにごろごろと贅沢に入った野菜たちは、季節ごとに変化する旬の野菜や、北海道から仕入れた新鮮な野菜を使用。普段なにげなく食べている身近な野菜でも、濃厚なスープと絡めながら味わえば、それぞれの野菜が持つ味わいの個性を色濃く感じられる。
また、同店には多種類のトッピングがあるが、その中でも特に焼きチーズをおすすめしたい。ご飯の上で炙った焼きチーズは、とろとろとした食感と香ばしさでスープカレーの旨みを高めてくれる。
カレーと一緒にドリンクを頼むときは、辛党の佐藤さんが考案した激辛メニュー、スパイシージンジャーエール600円に挑戦してみてほしい。瓶に入ったソーダに、国産しょうがや島とうがらし、スパイスで作られたジンジャーシロップを少しずつ足しながら、好みの辛さに調整して飲むことができる。
辛いものがあまり得意ではない筆者も挑戦してみた。おそるおそるシロップを注いでみたが、辛さを調整できるため、ほどよい辛みがピリリとくる大人なジンジャーエールに仕上がり美味しくいただけた。寒い時期に飲むと、身体をポカポカと温めてくれてうれしい。激辛が好きな人は、真っ赤になるまで注いで“超辛口”で味わってみよう!
「美味しいカレーを追求し、日々ブラッシュアップしている」という店長兼料理長の佐藤さん。そんな佐藤さんが新メニューを開発した際には必ず試食するというオーナーの西井さんだが、「想像の斜め上をいく」と称賛。西井さんが“一番のお客さん”というスタンスで客観的な意見を述べ、改良を重ねることで『ポ二ピリカ』のメニューは作られていく。
現在は、スタッフと協力しながら「理想の店づくりができている」と語る西井さん。今後はスタッフだけでなく「お客さんとも一緒に店をつくっていきたい」と話し、アンケート用紙を設置して積極的に意見を集めている。オーナーと店長、スタッフ、お客さんが一緒になって磨き上げていくカレーは、どこまでも進化を止めない。
取材・文・撮影=稲垣恵美