びっくらこいた!
放し飼いの放牧状態で育った身からすると、あの光景は衝撃的です。
駅と駅の距離が近い。茗荷谷駅の不動産屋で「有楽町まで行きたいんだけどどこで乗り換えですか」と聞いたら「銀座は有楽町だから一本で行けるよ」と言われ、ちょっと何言ってるかわかんない状態になった。※地元の最寄り駅から隣駅までは歩いて1時間。(熊本県出身)
東京の”狭さ”は特筆すべきでしょう。ちょっと足を延ばしただけで「別の街」に踏み込んでしまう、あの不思議な感覚! だから散歩が楽しいんですね。
「鶯谷」って名前からして、穏やかで素敵な街なんだろうなと思ってワクワクしながら行ってみたら、Oh!(北海道出身)
ちなみに、私の地元には「広尾」という名の僻地で寂れた港町がありまして(失礼!)、渋谷区の広尾にも魚臭いイメージが染みついて拭えませんでした。
おじさんが標準語を喋る。九州から出て関西を経て上京した私には、標準語を喋るおじさんがどうにも奇妙な存在だった……(なんだかオカマっぽく聞こえる)。「~なんだよ」「~じゃん」「~だってば」などの標準語の語尾を聞くと特に強く感じる。気持ち悪かった。(熊本県出身)
東京のおじさんたち! 聞いてますか? 気持ち悪いそうですよ。
深夜の新宿三丁目。人混みの中、駅へと急いでいると、自分のバッグが「何か」とぶつかった。上京して数か月、駅で人とぶつかるのは“当たり前”と思っていた私は無視して先を急いだが、後ろから「おい! ぶつかってんだけど」という声。振り返ると、全身黒のジャージに金色の線が入ったチンピラっぽい兄ちゃんが……!(福島県出身)
ロングストーリーのため割愛。結論としては、歯が折れたり鼻が折れたりすることもなく、無事にお家に帰ることができたとのこと。
思うてたんと違う!
上京して最初に住んだ街が西谷(横浜市)。「横浜ってどんな大都会だろう」と思ってたら、地元よりよっぽど長閑な商店街があった!(北海道出身)
大学進学で上京した者たちからは特に、この手の嘆きを耳にします。
東京ならどこでも大都会と思い込んでいる節があるうえ、土地勘がないまま受験するので、うっかり郊外のキャンパスに通うことになり、東京にも緑豊かで空の広い街があることを思い知らされるという事態に……。
大学だと、意外にオシャレに気を使っているのは上京者の方で、東京出身者の方が田舎くさかったりする。いわゆる港区民的な東京人は、そんなにはいない。(山形県出身)
大都会・東京を歩くとなると、田舎者はかなり身構えてしまうんです。
しかし……東京出身のみなさん、また好き放題言われてますよ。黙ってていいんですか?
なかなかうまくいきません
高校の同級生で集まるとき、「新宿駅集合」としてしまい、結果、それぞれ別の出口に集合してしまった。(熊本県出身)
地元なら適当な集合場所でもなんとかなるのに……。よりによって新宿駅でやってしまうというところもミソですね。携帯電話がある時代でよかった。
「方言しゃべって」と言われて渾身の訛りを披露するものの、関東出身だとそこまで特異じゃないので「もっとくれよ」的な表情をされる。歯がゆいので最近は、そんなの地元でもお年寄りしか使ってないでしょレベルの方言を使ってみせる。(茨城県出身)
中途半端なのが最も堪えます。
は、恥ずかしい
「OIOI」が「マルイ」だと気付くのに数ヵ月を要した。(山形県出身)
こういう「知らなきゃ読めない」名前をデカデカと掲げるなんて、田舎者を試しているように思えてなりません。
地元の友だちが東京に来ると気合いが入る。イキって渋谷や目黒を案内するが、ふだん怖くて行かないのでシンプルに道に迷う。(茨城県出身)
サラっと案内できる達人になりたいもんです。
上京して間もない頃、電話で母親に「東京はやっぱり空気が汚いからか、数日で棚の上とか埃溜まるわ~」と言ったら、「あなたの実家は私が毎日掃除してるのよ」と言われて恥ずかしくなった。(山形県出身)
かわいいです。
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの。室生犀星の詩が染みる思い出もいくつかありました。
Youtubeで地元のローカル番組やローカルCMを探す。(熊本県出身)
地元を出て初めて気づく、「あれって地元限定だったのか!」という小ネタのオンパレード。
上京してすぐ、東京を楽しんでるつもりだったけど無自覚にホームシックになってたらしく、渋谷の街中の花壇にチューリップ咲いてるの見て、ひとりで泣いてしまった。(北海道出身)
地元が遠いとそうそう簡単には帰れないので、物理的な距離もまた寂しさを助長するんです。
トーキョーサイコー!
富士山が身近に見えて異様に興奮する。(熊本県出身)
富士山が見えるとついついはしゃいでしまうのが日本人の性というもの。しかし、まさか東京から見えるなんて思ってもみなかったわけです。
毎日深夜アニメをやっている。(山形県出身)
他にも、「ポケモンが日曜にやっている」「テレビのチャンネルの多さに驚いた!」など、テレビで違いを実感したという声が集まりました。
『散歩の達人』という雑誌があること。
あまりに宣伝臭くて採用すべきか否か悩んだのですが、複数人から同じ意見が出たので、思い切って紹介させていただきます。
初めて東京の本屋に入った田舎者は、必ずや目を白黒させて歩き回ることになります。特に、雑誌の種類の多さには圧倒されるわけです。本屋などない地元の村では、雑誌といえばスーパーのレジ付近に置かれている婦人誌やパズル雑誌のことでしたから、雑誌を読むという習慣はほぼゼロ。
そこで、このタイトルが目に入るわけです。
散歩の達人。
なんてイカした名前なんだ……。東京にはこんな粋でナイスなモノがあるのか! 東京ってすンげえ! そう思いました。(ホントです。あ、でも、個人差があります)
可愛らしいお話から痛々しいエピソード、さらには涙ちょちょぎれるような思い出まで、悲喜こもごもですね。
でも、いや、だからこそ、こういうネタを肴に同郷の旧友と飲み交わす酒がうまいんです。
もし、今後上京予定の未来ある若者諸君がこれを読んでくれたなら、我々の話を教訓として胸に刻み、心して新生活に臨んでくださいな。
文・イラスト=中村こより(編集部)
幼稚園・保育園児が、でかい檻みたいなものに乗せられて、まるで出荷されているように散歩させられている。(山形県出身)