東京、難しすぎる!

田舎者

試験のため、秋田から初めて深夜バスで新宿駅へ来たときのこと。西口にバスが到着したのですが、学校は東口にありました。地図を見ながら歩いて東口へ向かいましたが、東西の中心にある新宿駅をどうしても通り抜けることが出来ず、結局タクシーを使ってしまいました。運転手さんに「ほんとうに東口でいいの?」と何度も確認されました。
(秋田県出身・味論さん)

出ました、駅デカすぎ問題! 田舎者が必ず突き当たる壁です。当時の味論さんにとっては文字通り「壁」となって立ちはだかったわけですね。そういえば、前回は「“新宿駅集合”にしたらそれぞれの出口に散ってしまった」というエピソードもありました。おそろしや、新宿駅。

田舎者

某大学の入学試験、会場は多摩地域のキャンパス。「東京だから歩いて行けるだろう」と最寄駅から歩いて向かったけれど、歩けども歩けども辿り着かず……。ヒッチハイクして通りがかりのトラックに乗せてもらい、なんとか試験に間に合った。あとで調べたら徒歩1時間以上かかる距離だった。
(長野県出身・ねぎとろさん)

味論さんと同じく「試験会場に辿り着けない」体験談ですが、こちらの御方はかなりのリサーチ不足! でも、“東京は全部都会”という幻想は、田舎者あるあるなんじゃないでしょうか。過信しちゃいけません!

田舎者

歩くのが遅すぎて、未だに都会育ちの人と一緒に歩くと怒られます。
(長野県出身・おやきさん)

車社会での生活は驚くほど歩く機会が少ないもの。ちなみに、さんたつサポーターのみなさんに「自分は周囲に比べて歩くのが速いと思う?遅いと思う?」というアンケートをとったところ、7割以上の方が「速いと思う」と回答していました。

田舎者

秋田から上京して初めて住んだ街が西武新宿線の「田無」だったのですが、学校のある「西武新宿」まで一番早く着く“急行”を使わずに“普通”列車で通っていました。地元では“急行は有料”だったので、一か月間もそのことに気が付かず、交通費節約だと思って乗り続けていました。
(秋田県出身・味論さん)

わかります。筆者も京王線の特急を「これってお金かかるやつ……?」とビビって乗らなかったことがありました。

東京、違いすぎる!

田舎者

節分の時に地元岩手ではピーナッツを投げるのですが、それが全国区でないことを上京してから知った。普通は大豆なんですね……。
(岩手県出身・キクイケナットさん)

上京してから知るローカルルール、結構多いんですよね。しかも、地元ではそれが常識だったのに、東京では周囲に仲間がいないから笑われちゃうし。

ちなみに節分の時に投げる豆、北海道(の一部かも)は落花生でした。汚れても殻を剥けば食べられるので合理的! 落花生の殻って節分のためにあるんや! と子供ながらに思っていたのになあ。

田舎者

東京の冬が想像以上に寒い。四六時中室内暖房をつけていた道民のころの感覚が抜けず、「こたつ」という暖房器具が浮かんでくるまでに結構時間がかかる。
(北海道出身・さけさん)

これは筆者も声を大にして言いたい。「東京は寒い!」。北海道は断熱性・気密性が高い住宅が多いのに対し、東京で一人暮らしする部屋の肌寒さといったら……涙ちょちょぎれるレベルです。

田舎者

地元には金木犀がなかったので、道を歩いていてその香りがしたとき、「トイレの芳香剤の匂いがする! いったいどこの家のトイレから漂ってくるんだろう」とギョッとした。それが花の香りだと気づくまでにしばらくかかった。
(北海道出身・みゆきさん)

本物の金木犀の香りを知らないから、トイレの芳香剤の匂いとしてインプットされてしまっていたんですね。本州にはあって北海道にはないものといえば、杉、竹林、瓦屋根、G(黒くてすばしっこいアイツ)あたりがよく話題にのぼりますが、ほかにもまだまだありそうです。

田舎者

車の免許を持っていない人がいた。なんて東京的でカッコいいんだろうと思い、自分も免許なしで生きていこうと心に決めるも、社会人になる寸前にやっぱり心配になって教習所に通った。
(北海道出身・ぬるむさん)

田舎は運転免許の有無が生死を分かつ世界ですからね。油断はいけません。
でも、「免許、別にいらないし」とうそぶく東京人の存在は、たしかにカルチャーショックでした……。

田舎者

東京出身なので上京経験はありませんが、転勤で約5年四国に住んだのち東京に帰ったときは、建物の高さと電車の複雑さに圧倒されました。それまで30年近く東京住まいだったのに、「自分染まりやすっ!」と思いました。
(東京都出身・いよかん畑さん)

こちらは番外編ですが、逆もまた然り。東京に数年住んだだけなのに、久しぶりに田舎に帰ると空の広さと景色の単調さに圧倒(?)されて、笑けてきます。

東京、やっぱりカッコいい。

田舎者

とにかく電車やバスの本数が多くてありがたいです。地元だとバス(電車は家の近くを通っていない)が、1時間に1〜2本とかが普通だったので……。
(岩手県出身・キクイケナットさん)

田舎者

ふらっと家を出て電車にすぐ乗れること、どこの駅でもSuicaが使えたことに感動した(長野では未だに改札で使用できないので……)。
(長野県出身・おやきさん)

どちらも痛いほどよくわかります。筆者は地元のバスの時刻表(1時間に1本)をまるっと暗記していたので、上京して時刻表を覚えなくていいことに感動しました。

田舎者

教科書で見るような絵とか史料の展示会をいっつもやってる。しかもあっちこっちで!!!  これは文化レベルが違いますわ~とウケた。
(北海道出身・ぬるむさん)

「これ、教科書に載ってるやつじゃんッ!」という衝撃、その贅沢を当然のように享受する東京人たち。うれしいやら、悔しいやら、歯がゆいやら……。東京ってすごい。

田舎者

天皇と総理大臣が同じ街に住んでることをときどき思い出す。キムタクとかも。
(北海道出身・ぬるむさん)

やっぱり、東京ってすごい。

東京、実は、ホッとする。

さて、トリを飾るエピソードは長編です。

田舎者

これは私が上京した際に出会った、熱した鉄板以上に熱い女将さんの話である。
かれこれ10年ほど前のことになるが、転勤で上京することに。学生時代含め、実家から通っていた私にとって、ドキドキワクワクの人生初一人&東京暮らしがスタートした。場所は大崎。駅前と言えばゲートシティ&ニューシティ、線路を挟んでシンクパークという、ほぼオフィスビルと複合施設に囲まれた街である。そんななか、唯一と言っていいほどの憩いの場が駅前にあった「つけ麺大王(現在は閉店)」であり、会社帰りの空腹を何度も満たしてもらった。
そんなある日の土曜日。休日出勤で早めに仕事が終わったこともあり、住まいの周辺を散策してみることに。すると、近くにあの有名な「戸越銀座」があるではないか。古き良き店や下町好きである私の心が弾む。そして、なぜだか無性に江戸前寿司が食べたくなった。店探しをする際は、基本、ネット検索はせず、自身の嗅覚と直感頼り。その日も「ここだ!」という店に入店。が、しかし!……心弾むというより浮き足だっていた私は、何を血迷ったか鉄板焼屋に入店(笑)。すぐさま退店しようと思ったが後の祭り。店内には誰もおらず、待ってました!と言わんばかりに女将さんの接客につかまった。仕方がないので数品オーダーし、ちゃちゃっと食べたらはしご寿司に行こうと思ったが、そんなちっぽけな私の野望はあっという間に握りつぶされる。料理(食材)を持ってくるや否や女将さんが鉄板で焼き始め、それと同時にマシンガントークが始まる。
「私の旦那は船乗りでねぇ~、一度海に出ると半年くらい帰ってこやしない。おにぃちゃんも彼女がいるなら泣かせちゃだめだよぉ~。この世は男と女しかいないんだから、恋愛ってのはさぁ……それからねぇ……」
よくわからないが、いつの間にか不思議な女将さんの魅力に引かれ、気づけば軽く2時間くらいが経過していた。
「やっちまった!」から始まった私の東京初ストーリー。キラキラでオシャレなイメージが強かったが、最初にしてホッとする東京に出会えたことに感謝。最近は全然そのお店に行けていないが、きっと今日も誰かの心を熱していることであろう。

追記……鉄板焼屋にもかかわらず女将さんと意気投合した私は、失礼ながらも「この辺でおススメのお寿司屋さんは?」と聞いたところ「なんだ、もっと早く言ってくれれば良かったのに! 私もお寿司が好きでねぇ~。このあたりだったら○○寿司で決まりだね!」
教えてもらったお寿司屋は今でも私の行きつけだ。
(埼玉出身・シマナガシぶるーさん)

熱い!  熱いぜ!  「散歩の達人が、散歩の新人だったころ……」なんてタイトルをつけたくなりますね。上京したての時期、なんでもできる気になって「えいや!」と飛び込んだ経験がある田舎者も多いのではないかと思いますが、こんな素敵な出会いがあるのはきっとシマナガシぶるーさんの人徳でしょう。

illust_5.svg

「ブルース」と銘打ったものの、なんだかんだ可笑しくて心なごむ思い出が集まりました。寒々しい季節に物々しいご時世ですが、少しは温まったかしら。

物足りないぜという方は、年越しそばと一緒に熱燗でもお湯割りでもよきようにやっちゃってください。

それではみなさん、よいお年を。

 

構成・イラスト=中村こより(編集部)