ザ・日本が体験できる街のひとつといえば、埼玉の小江戸『川越』だ。こんな蔵造りの街並みでクリスマスを過ごす……日本人なら、それだけでちょっと心をときめかせるのではないだろうか。そんな歴史のある街には、もちろん伝統のある店も多い。そのひとつが『小川菊』だ。
1807年創業の江戸時代から続く超老舗店。ここは何の老舗かというと、ズバリ〝鰻〟である。クリスマスに贅沢に鰻……いや、意外とおかしな話ではない。イタリアの一部では、クリスマス料理として鰻は欠かせない料理らしいのだ。鰻は、日本人にだって欠かすことのできないものだからこそ、フライドチキン代わりに鰻を食べてクリスマスを過ごしてみようではないか!
店内の二階は、畳張りにテーブルというジャパニーズ・ラグジュアリー。まずは、シャンパン代わりのビールを頂こう。暑い日の冷えたビールもいいが、寒い日の冷えたビールも不思議とおいしい。お通し代わりの鰻の骨揚げをポリポリと食べていると、ついに主役が登場。
おぉ……
カパッ
おぉ……、おぉ……
うわぁぁぁぁ!! 重箱の蓋を開けると、テリテリのツヤツヤの輝き、温かく甘しょっぱい湯気が立ち上がった!!
ローストターキーでも、ここまでの照りとツヤは出ないだろう。箸は抵抗なく鰻に入り、蒲焼と白米のバランスが、まるでクリスマスケーキの断面のように美しい。ふっくら焼きあがった蒲焼は、口に入れた瞬間に溶け、パラリと解けた白米と共に深い滋味となす。鰻、やっぱりウマいなぁ。
シャンシャンシャンシャン……
『──おや、雪だ』
運が良ければ、店の窓から鈴の音と共に雪が見えて〝雪見鰻〟なんて、サンタさんからの素敵なプレゼントがもらえるかもしれない。
クリスマスに鰻、一度試してみてはいかがだろう。もしかすると、これからの日本のクリスマスは鰻が一般的になる……かも?
取材・文・撮影=味論(酒場ナビ)