巨大な立体カニ看板といえば
ところで「巨大立体カニ看板」と聞いてほとんどの人が思い浮かべるのが、「かに道楽」の動くカニ看板だろう。「かに道楽」の公式HPによれば、1962年、道頓堀に1号店が開店した際に動くカニ看板が取り付けられた。「白地に赤く、日の丸をイメージした」とのことで、当初から「目立つこと」が主な目的だったのだ。
全国に41店舗ある「かに道楽」のうち、上野店や調布仙川店などには「巨大立体カニ看板」が存在しない。恐らくは建物の都合などで設置が難しかったのだろう。一方で、ビルの8階という難しい立地でありながら、建物の一部を窪ませて、巨大立体カニを設置している新宿本店のようなケースもある。
また、「かに道楽」の巨大看板と言えば足が動くのが特徴であるが、銀座八丁目店のように動かないものもある。
いずれの「かに道楽」の巨大看板も、モデルはズワイガニのようである。しかし色や甲羅の白線の入り方、目玉の光り方など、各店舗で異なる個性が見られる。
更には名前の付いているカニもいる。新宿駅前店のカニは「ムサシ丸」、
千葉駅前店は「ふじお」。
公表されていないだけで、他の店舗のカニにももしかしたら名前が付いているのかも知れない。
ところで十数年前、たまたま京都本店前を通りかかった際、動かないカニの甲羅に「少々過労気味につき只今休憩中」というゼッケンが付けられているのを目撃した。
2020年にも、道頓堀本店のカニの脚が修理の為に取り外された際には「あちゃ~勤続疲労で折れちゃった?」というゼッケンが付けられており、思わずカニに同情してしまったものである。
巨大カニの看板はほかの場所にもいる
ここまでは「かに道楽」のカニを見てきたが、巨大カニはほかの場所にも生息している。
たとえばカニの漁獲量が多い北海道や、「越前ガニ」や「松葉ガニ」などのブランドガニを誇る日本海側の各県、
各地の食材が集まる市場近くなどだ。
また、巨大カニ看板の多くはズワイガニだが、そこがイタリア料理店となると、食材としてよく用いられるワタリガニが巨大化していたりもする。
冒頭に、「なぜ人は巨大カニ看板を作ってしまうのか」という疑問を提示した。ここまでカニたちを見てみると、「かに道楽」の創業者が目論んだように、やはり「赤くて目立つ」からなのだと思う。
私自身はまだタラバガニや毛ガニの巨大看板に遭遇したことはないが、いつか各地のカニ看板を集めてカニ図鑑を作りたい。
イラスト・文・写真=オギリマサホ