離着陸も大変でとにかく寒い……けれど冬の絶景が待っている
雪国で空撮をしようと思うと、離着陸の場所探しで苦労する。
冬に群馬県中之条町で飛んだときも、場所探しの間に雪道で車がスタックしてしまい、地元の方に助けてもらうというトラブルがあった。
離着陸場所に選んだところには40㎝ほど雪が積もっており、一人で十数m四方の雪を踏み固めて離陸場所を作った。
大変な思いをして離陸に至ったあとに見る、上空からの景色はいつにも増して美しく感じられた。
木々に覆われた山肌はグレーに、平坦な場所は雪に埋もれて白い。野反(のぞり)湖は凍って雪に覆われて真っ白になっていた。曇り空の下で全体的に彩度のない景色となり、白と黒で描かれた水墨画のような静かな風景だ。
視界は曇っているとはいえ高層雲のため遠くまで見渡すことができ、榛名山や浅間山も冬らしい透明度が高く思える大気の中で、くっきりとした山容を見せている。高度2000mまで上がると、140㎞ほど離れた富士山まで見えた。反対側には草津白根山の姿がある。ただ風が強く近づくことができなかった。
冬に飛ぶととにかく寒い。厚い防寒着を着込んでグローブも大きなものをつけなくてはならないため、動きづらくなる。装備を完璧にしていても飛んでいると手足がかじかんできてしまうが、冬でしか見られない美しい景色と出会うと寒さを忘れて撮影に没頭してしまう。
この日も最終的に高度2400mほどまで上がって撮影。降りる頃には手の感覚がほとんどなくなっていた。そのあとに入る温泉は格別だ。
取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年2月号より