国立の旭通りの「花笠家」でラーメン。
友人の結婚報告展にと出かける国立。腹ごしらえに向う家。国立駅南口を左斜めに進む旭通り沿いの「元祖ニュータンタンメン本舗」の跡に2019年に開店した「花笠家」。三鷹東八の武蔵家から独立の新中野武蔵家系の家。
到着すると券売機から少し離れた場所にカップル。「並んでますか」と尋ねると、どうぞと譲られ対峙する券売機。お札を入れ、ラーメン並みをポチとして、お釣りを待っていると後ろから聞こえるカップルの会話。
『「吉村家」から始まる横浜のラーメンで…、御三家があるみたい…、麺の硬さと油の多さとか味の濃いめとかを選べるこってり系のラーメンで、ライスが無料で、自家製の食べるラー油がお勧めだって』と念入りな予習。
ここにしようと顔を見合わせ頷き券売機に向かい食券を買い後ろに並ぶ楽し気な二人。なんだかむずむずする昼下がり。
鰻の寝床のような奥に伸びる厨房と添う木で造作される柔らかなカウンターに白く塗られる壁の明るい店内。すこし待ち「こちらにどうぞー」と捻じり鉢巻きの兄さんと姉さんに元気よく迎えられる。
水を汲み席に着き、「お好みは」と聞かれ、「麺柔らかめで」とお願いする。あのカップルはいろいろと予習したてのあれこれをお願いしている。お隣はベビーカーに赤ちゃんを寝かしラーメンとライスと食べるラー油を楽しむお父さん。
眺める厨房で麺を揉み揉みと手揉みして茹で鍋に放り込み、スープの素の寸胴をぐりぐりと混ぜ、生ガラを用意して、姉さんに指示を出し、いろいろと目を配り、声を出し、手を動かす兄さん。
なんだか老若男女に愛されていると溢れる活気が良い感じ。
茹であがる麺を平ザルですくいパシパシパシと小気味良い音を響かせて湯を切りラーメンが出来上がりそれぞれに運ばれる。
もう少し待ち、「柔らかめ上がりまーす!」と声が掛かり、パシパシパシと小気味良く音が響き具をのせ海苔を刺し運ばれるラーメン。
ゆっくりと高台から下すと薄っすら泡立ち油膜が張る茶濁のスープにぎゅっと絞られかたまるほうれん草と横たわるチャーシューにトレードマークの3枚の海苔。そしてその下に覗く黄色の麺。おいしそう。
卓上の胡麻をかけ、ブラックペッパーを振り、レンゲと箸を持ち、いただきます。
レンゲでズ。ふわり獣が漂うトロリ粘度の高いスープ。ほんのり感じる鶏油のこってりと溢れる炊き出す豚骨がギュッと詰まる濃度に交わる円やかな醤油のバランスが良い濃ゆいの手前のコク旨のスープ。おいしい。
ぐいと引き出し啜る麺は中太で平打ちの短めなしっかりと柔めに茹でられたテロンとした酒井製麺の麺。スープを纏いニュルンと喉を滑り、ムニモチと噛み締めるしあわせ。プルルン、ブルンとそこら中にスープを飛ばしまくりただ楽しむ。
頃合いで、ムギュと旨みが滲む厚めの肉をざくと頬張り、もっさりとしたほうれん草をしっかりとスープに浸し咀嚼して、たっぷりとスープを吸う海苔で麺を包み啜る家系のルーチン。
遠くのあのカップルからも旨!おいしいと感嘆する声が聞こえてくる。その彼女に「エプロン使いますか」と声をかける兄さん。
「お願いします」にエプロンを手渡しながら、店の外に並ぶお一人様で来店する小学生に「お兄ちゃん好みはある」とやさしく声を掛け席を案内する。
「麺かためで味と油は普通で」と返し答える手慣れた僕に少し驚くも、兄さんの気取らない気遣いと元気が溢れるに触れた昼。しっかりとスープを飲み干して満足に浸る。
丼を高台に上げて、テーブルを拭き、ごちそうさまでしたと伝えると、ありがとうございましたと元気に見送られる気持ちの良い午後。