うーん、どうしようかな。
はっ!!
そ、そうだ、紅鹿舎がある!
ここからだと、紅鹿舎が良いではないか!!

太郎の作品を見上げて数秒、とても良い案を思いついた。

紅鹿舎。。。言わずもがな、元祖ピザトーストの喫茶店である。

「いらっしゃいませ」ととても丁寧に迎えられ、席に通された。
黙々と珈琲を淹れる店員さん、フード関係をやってるっぽい様子、
お客の皆さまは何を食べてるのかな?
などを入り口から席に着くまでの間の瞬時に見るのも楽しみで、
メニューが運ばれてきて「何にしようかな?」と上っ面に迷いつつ、
心の芯ではもう、頼むものは決まっている。

「ピザトーストとアイス珈琲をお願いします」
「かしこまりました」

幕は上がった。

料理が出てくる間は、右隣の席のご婦人方の関係性を予想したり、
(ちなみに子どもの習い事のママ友の関係性と推察)
左隣でカレーライスを食べている紳士の様子(満足気)をチラ見したりと、
ワクワクしつつ、料理をしているスタッフの方の動きもしっかり見つつ、
今、私のピザトーストに取り掛かりはじめたのかな?
今、出されようとしているアイス珈琲は私のやつかな?
などと、ワクワクと待機している。

「お待たせいたしました」

やったー!
やはりあのアイス珈琲は、私のやつだった。

コクのあるアイス珈琲の上には、ウインナー珈琲かと思わせる生クリーム。
この生クリームは、やや乳脂肪分が軽めなのか植物性なのか、さっぱりとしている。
そして、ほっそい(細い)ストロー2本が刺さり、この2本をまとめて口に入れて吸い込む。
この行為がなんだかバブル時代の女子大生気分にさせてくれる。
あくまでイメージですが。

そして、
「お待たせいたしました」
と、ヤツが運ばれてきた。
いえ、ヤツ様が運ばれてきた。

ぴ、ピザトーストっ!
見るからにこってり感を醸し出しているのに、
カットされた3切れは、敢えてずらして斜に盛り付けていて、
ち、チーズがこぼれ落ちる前に食べなければ!と、急がせる。

一切れを手に取り、熱さはなんのその頬張る。

何種類かミックスされているかのようなチーズの複雑なコク、塩気。
パンはイギリスパンのようなのにデニッシュパン的でもあり、
トマトソース、刻まれたハムのようなサラミのような、ピーマン、玉ねぎ、マッシュルーム、
そして何よりこれらをひとつにまとめ上げているのは、ベシャメルソース。

このベシャメルソースは、演出兼出演として、実にこのピザトーストを牽引している。
いや、脚本家も兼ねているかもしれません。

そんなこんなで、上顎の皮がめくれつつ、一気に頬張り幕は下りた。

デザートをアンコールと気持ち的には行きたかったところですが、
16時からの用事もあるし、何より満たされ感100%だった為、
大満足な面持ちで店を後にするのでした。