すぐそばにあった、広大な高原と険しい峰々が織りなす光景

赤城山は都内からもそこそこ近くていつでも行ける山、と思っていたが、なかなか撮影に行く機会がなかった。「いつでもと思っているといつまでも行かない」と、空撮に行くことに決めた。

離陸は群馬県の昭和村にあるモーターパラグライダーエリアから。離陸してみると、南西方向に霧で霞んだ山々が見える。地上からは見えなかった榛名山(はるなさん)が、霧の上に浮かんでいるようで幻想的だ。

高度を上げていくと徐々に黒檜山(くろびさん)、駒ヶ岳、地蔵岳など、赤城山を構成する山たちが現れる。

赤城山の裾野は思った以上に広かった。東京から日帰りできる手軽な観光地というイメージとは違い、広大な自然を感じさせる景観だ。

昭和村の上空から南西方面を望む。写真左が前橋・高崎方向、右が水上・越後湯沢方向。獅子岩(子持山)の手前では利根川が流れ、関越自動車道、JR上越線が走る。伊香保温泉は、左奥の榛名山の手前にある。
昭和村の上空から南西方面を望む。写真左が前橋・高崎方向、右が水上・越後湯沢方向。獅子岩(子持山)の手前では利根川が流れ、関越自動車道、JR上越線が走る。伊香保温泉は、左奥の榛名山の手前にある。
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さらに高度を上げていくと、赤城山の山頂近くにある大沼が見えてきた。曲がりくねった道ではあるものの、ここまで車で行けるが、道路ができるまでのアクセスはかなり大変だっただろう。カルデラ湖である大沼を1200~1800mの険しい峰々が取り囲んでいる。その周囲標高800mくらいまでは広々とした高原台地だ。

いつでも行けるなんて侮ってはいけなかった。やはり来てみないとわからない。

侮っていた罰なのか、途中でエンジンの調子が悪くなってきた。エンジンを止めて引き返すことになるが、十分な高度があるため、問題なく離陸場所までは戻れるだろう。

エンジンを切ると、風切り音しか聞こえない。風の一部になったような感覚で、赤城山上空から帰った。

高度約2000mから見た、赤城山山頂付近にある大沼。奥に覚満淵(かくまんぶち)と、うっすら小沼も見える。
高度約2000mから見た、赤城山山頂付近にある大沼。奥に覚満淵(かくまんぶち)と、うっすら小沼も見える。

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年11月号より