すぐそばにあった、広大な高原と険しい峰々が織りなす光景
赤城山は都内からもそこそこ近くていつでも行ける山、と思っていたが、なかなか撮影に行く機会がなかった。「いつでもと思っているといつまでも行かない」と、空撮に行くことに決めた。
離陸は群馬県の昭和村にあるモーターパラグライダーエリアから。離陸してみると、南西方向に霧で霞んだ山々が見える。地上からは見えなかった榛名山(はるなさん)が、霧の上に浮かんでいるようで幻想的だ。
高度を上げていくと徐々に黒檜山(くろびさん)、駒ヶ岳、地蔵岳など、赤城山を構成する山たちが現れる。
赤城山の裾野は思った以上に広かった。東京から日帰りできる手軽な観光地というイメージとは違い、広大な自然を感じさせる景観だ。
さらに高度を上げていくと、赤城山の山頂近くにある大沼が見えてきた。曲がりくねった道ではあるものの、ここまで車で行けるが、道路ができるまでのアクセスはかなり大変だっただろう。カルデラ湖である大沼を1200~1800mの険しい峰々が取り囲んでいる。その周囲標高800mくらいまでは広々とした高原台地だ。
いつでも行けるなんて侮ってはいけなかった。やはり来てみないとわからない。
侮っていた罰なのか、途中でエンジンの調子が悪くなってきた。エンジンを止めて引き返すことになるが、十分な高度があるため、問題なく離陸場所までは戻れるだろう。
エンジンを切ると、風切り音しか聞こえない。風の一部になったような感覚で、赤城山上空から帰った。
取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年11月号より